カンジダ症に対するPD-L1の阻害に着目した治療法の提案

Clinical Medicine Scientific and Technical Innovation Center, Shanghai Tenth People’s Hospital, Tongji University School of Medicine, Chinaらのグループは、宿主の免疫応答に対するPD-L1発現の負の側面、即ち、骨髄から感染部位への好中球の移動を阻害し、真菌感染の免疫逃避を促進する、という役割について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9652346/

カンジダ症の原因となるカンジダ・アルビカンスは、ヒトと共生する日和見的な真菌病原体です。全身感染が起こると、カンジダ・アルビカンスは血流に入り、全身に広がり、侵襲性カンジダ症として知られる疾患を引き起こします。宿主のカンジダ・アルビカンスの殺菌は、炎症性サイトカインの放出、活性酸素種および抗菌ペプチドの生成、好中球細胞外トラップの形成といった免疫反応に依存しており、好中球が主要な働きをしています。

PD-L1は、好中球、B 細胞、樹状細胞、マクロファージなどの免疫細胞の細胞膜に発現することがわかっています。 カンジダ・アルビカンスの感染中、この真菌の細胞壁上に存在するβ-グルカンは、宿主免疫応答の調節に重要な役割を果たしています。 C-型レクチン受容体 Dectin-1(Clec7a 遺伝子によってコードされる)は、このβ-グルカンの認識にとって最も重要な好中球のパターン認識受容体であります。

本研究では、真菌のβ-グルカンによるDectin-1の活性化がマウスおよびヒトの好中球でPD-L1の発現を誘導し、高発現したPD-L1がケモカイン CXCL1およびCXCL2 の分泌を制限し、骨髄から感染部位への好中球の移動を阻害することが実証されました。この発見は、骨髄からの好中球の移動を調整という観点で、PD-L1が真菌感染症に対する好中球ベースの免疫療法の強力な治療ターゲットとして機能する可能性があることを示唆しています。即ち、PD-L1の遮断またはPD-L1発現の薬理学的阻害のいずれかによって、骨髄からの好中球の移動が大幅に増加し、宿主の抗真菌免疫が強化されるということです。