チョウセンバイモ(ユリ科の属のひとつ)の根圏における根圏細菌叢の健康状態に伴う変化

College of Forestry, Northeast Forestry University, Harbin, Chinaらのグループは、チョウセンバイモ(ユリ科の属のひとつ)の健康状態によって、根圏細菌叢に特徴的な変化が現れることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8796711/

チョウセンバイモの様々な健康状態での根圏細菌叢の組成の違いから、存在量として上位7つの真菌属、および上位15の細菌属を、健康(H)、病的(P)、および最悪状態(B)のサンプルから選別してきました。

真菌属レベルでの相対的な存在量の違いからは、モルティエラ、フサリウム、ロイコスポリジウム、ムラキア、ゲオマイセス、フミコラ、およびイヨネクトリアがより多く存在しており、その中でモルティエラが最も高い存在量を示しました(22.86%)。健康なサンプルと比較して、モルティエラの存在量は病気のサンプル(PおよびB)で有意に増加しました。 フサリウムとフミコラの存在量は、病気の重症度が増すにつれて大幅に増加し(H→P→B)、最悪状態のサンプルで存在量が最も高くなりました(それぞれ15.49%と5.60%)。逆に、ムラキアとゲオマイセスの存在量は病気のサンプルで大幅に減少し、健康なサンプルで最も存在量が多くなりました。

根圏細菌の場合には、健康なサンプル(H)で、RB41(4.74%)とアルスロバクター(3.30%)が非常に多く、病気の重症度が増すにつれて(H→P→B)、存在量は大幅に減少しました。病気のサンプル(PおよびB)においては、スフィンゴモナス、ブリオバクター、ジェマティモナス、バチルス、エリン6067、ペドバクター、アシドサーマス、およびアシディバクターの相対的な存在量は、健康なサンプルよりも有意に高くなっていました。更に、病的なサンプルでは、ブリオバクター、アシディバクター、シュードモナス、マッシリア、およびハリアンギウムの量が増加していました。

レクチンマイクロアレイを用いて甲状腺癌におけるBRAF遺伝子異常をNeuregulin 1 (NRG1)の糖鎖プロファイルの変化から検出する

Department of Head and Neck Surgery, Fudan University Shanghai Cancer Center, Shanghai, Chinaらのグループは、レクチンマイクロアレイを用いて甲状腺癌におけるBRAF遺伝子異常をNeuregulin 1 (NRG1)の糖鎖プロファイルの変化から検出しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8798758/

この研究では、レクチンマイクロアレイを用いて血清NRG1の複数の糖鎖プロファイルを分析することにより、甲状腺乳頭がん(PTC)患者のBRA FV600E変異体の状態を検出できるかどうかを評価しています。

NRG1の過剰発現はさまざまな癌に関連していることが報告されています。NRG1タンパク質はERBB3またはERBB4タンパク質に結合し、ERBB受容体型チロシンキナーゼを活性化した後、PI3K/AKT経路を含むシグナルカスケードを活性化します。このNRG1ですが、報告されているように、血中に分泌される可能性があります。

そこで、レクチンマイクロアレイを使用して、BRAF(+)PTCおよびBRAF野生型(-)PTC患者の血清からのNRG1の様々な糖鎖プロファイルの変化を分析しました。レクチンマイクロアレイは、糖鎖プロファイルを取得するための迅速で高感度なハイスループット技術であり、コア基質から糖鎖を遊離させることなく糖タンパク質を直接分析することができます。

LEL、BPL、およびNMLは、BRAF(-)コントロールと比較してBRAF(+)PTC患者のNRG1に結合する傾向があることがわかりました。

根圏のバイオフィルム:植物の根から分泌されるムシゲルと根圏細菌が分泌する細胞外多糖類の類似性と差異

Division of Biogeochemistry of Agroecosystems, Georg-August University of Göttingen, Göttingen, Germanyらのグループは、植物の根圏に存在するバイオフィルムの特徴について語っています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8792611/

根は、根圏の機能を調節する物質として、ムシゲル、アミノ酸、二次代謝産物など、さまざまな化合物を根圏に分泌しています。ムシゲルは、ほとんどすべての植物によって生成されるゼラチン状の高分子化合物です。ムシゲルの骨格は多糖類でできていることが知られていますが、タンパク質、ミネラル、脂質らもバイオフィルムの一部です。根圏細菌はまた、細胞外高分子物質(EPS)を分泌しています。 EPSは主に多糖類で構成されていますが、タンパク質、核酸、脂質、ミネラルも含まれており、根圏細菌の住処として、バイオフィルムが根の表面に形成されます。このように、多糖類は両方のバイオフィルムの主要な構成成分でありますが、それらの間で有意差は無いようです(ムシゲルとEPSでそれぞれ77.4%と74.6%)。

具体的には、多糖類の骨格は、ムシゲルとEPSの間で、ガラクトース(ムシゲル= 23.8%; EPS = 22.8%)、フコース(13.9%; 9.9%)、グルコース(16.7%; 28.7%)、ラムノース(12.4%; 15%)、キシロース(13.4%; 8.1%)、およびグルクロン酸(8%; 12.8%)となり、その比率に有意差はありませんでした。しかし、マンノース(3.9%; 18.6%)は、ムシゲルよりもEPSで有意に高く(ほぼ5倍)、アラビノース(16.3%; 4.8%)とガラクツロン酸(27.3%; 7.8%)は、EPSよりもムシゲルにおいて高くなっていました(それぞれ、3.4倍、および3.5倍)

アルギン酸塩はEPSに含まれる陰イオン性多糖類で、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸などのウロン酸のみで構成されています。アルギン酸塩は、バイオフィルム形成プロセスの開始時に微小コロニーの形成に関与し、EPSの水和を増加させ、Ca2 +、Zn2 +、Cd2 +、およびNi2 +などの陽イオンの捕捉を助けます。ムシゲル中のガラクツロン酸の比率が高いことは、EPSよりもムシゲルの吸水能力が高い主な理由の1つであると考えられます。

ムシゲルは、微生物の食糧として、分解および消費されることもあります。ガラクトース、フコース、アラビノースなどのムシゲルに豊富に含まれる糖が酵素の分解作用で根圏に放出されると、ムシゲルに存在する微生物がそれを栄養として取り込むことが出来ます。ムシゲルに存在する内因性グリコシダーゼ酵素の存在がこの事を裏付けています。微生物はムシゲルをエネルギー源として利用しているようで、土壌に添加されたムシゲル炭素の50%を消費するのに平均7〜15日かかります。ムシゲルのタンパク質含有量が高いと、炭素:窒素比は約16:1になります。これは、微生物の炭素:窒素比の約2倍です。したがって、炭素の50%が異化作用を介して利用され、酸化されてエネルギーになると考えると、微生物にとっての単独のエネルギーの元となる炭素および窒素源として、ムシゲルというのは理想的な組成を持っていることになります。結果として、微生物には、ムシゲルを提供する植物と共有される一般的な栄養素であるミネラル(P、K、Ca、Mgなど)のみが供給されれば良いということになるのです。

キチナーゼ3-like-1(CHI3L1)の阻害剤が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の治療薬になり得る:抗-CHI3L1およびカスガマイシン

Molecular Microbiology and Immunology, Brown University, RI. 02912, USAらのグループは、抗-キチナーゼ3-like-1(CHI3L1)、および低分子化合物であるCHI3L1の阻害剤であるカスガマイシンが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療薬になり得ると報告しています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.01.21.477274v1

CHI3L1のようなSARS-CoV-2感染に関与する宿主因子を標的とする治療法は、ACE2を使用するすべてのウイルス変異体の感染制御に寄与する可能性がある考えられます。この仮説をテストするために、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびオミクロン変異株のSpikeタンパク質を発現する偽ウイルスを調製し、CHI3L1ベースの介入がヒト肺上皮細胞に感染する能力を制御できるか否かが評価されました。本研究では、CHI3L1が宿主細胞におけるACE2およびSpikeタンパク質のプライミング酵素の発現と蓄積を増強し、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびオミクロン変異株の偽ウイルス変異体による肺上細胞への感染を増強することが示されています。そしてまた、抗-CHI3L1が肺上皮細胞におけるACE2とSpikeタンパク質のプライミング酵素の発現と蓄積を阻害し、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびオミクロン変異株の偽ウイルスによる肺上皮細胞への感染を阻害できることが示されています。

 
CHI3L1がCalu-3細胞のACE2発現とデルタ株偽ウイルス感染を増強し、FRG(抗-CHI3L1)が、ACE2とデルタ偽ウイルス感染の発現を抑制したことが実証されました

カスガマイシンの場合にも同様の抗ウイルス活性が観察され、アルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ変異株のSタンパク質を持つ偽ウイルスの取り込みを効果的に阻害することが示されました。

H84T BanLecがヘルペスウイルスに広範囲な抗ウイルス活性を示す

Department of Microbiology and Immunology, SUNY Upstate Medical University, Syracuse, NY USAらのグループは、改変レクチンであるH84T BanLecがヘルペスウイルスに対して広範囲な抗ウイルス活性を示すと述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8803833/

抗ウイルス剤としての新たな戦略の1つは、レクチンを使用してウイルスエンベロープ上の糖タンパク質に結合させることです。天然に存在するレクチンは、ウイルス、細菌、およびその他の微生物を阻害する広範囲に活用できる抗菌剤として探索の対象となってきました。有望なレクチンの1つであるBanLecは、バナナレクチンに由来し、マンノースN型糖鎖との高い親和性を示し、HIVに対する効果的な抗ウイルス作用を持つことが分かっています。残念ながら、野生型BanLecはT細胞有糸分裂誘発性を持つと共に、好塩基球と肥満細胞を活性化してしまいます。これらの問題に対処するために、H84T BanLecを開発し、84位のヒスチジンをスレオニンに置き換えました。これにより、レクチンの抗ウイルス特性を維持しながら、有糸分裂誘発性が著しく低下しました。

ハイマンノース型N-結合型糖鎖は、ヒトヘルペスウイルスを含む多くのウイルスのエンベロープタンパク質に存在します。ヒトヘルペスウイルス(HHV)は、口唇ヘルペスから皮膚の発疹や伝染性単核球症に至るまで、さまざまな病気を引き起こすエンベロープ型のDNAウイルスです。 HHVは生涯にわたり感染を引き起こし、最初の感染後、再活性化するまで潜伏し続けます。 HHVは世界中で普及しており、人口の最大95%が複数のタイプに感染しているとされています。最も一般的なHHVの3つは、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、およびヒトサイトメガロウイルス(HCMV)であります。

H84T BanLecの作用機序はウイルスに依存しており、著者は以下の違いを発見しました。
VZVの場合、H84TBanLecは宿主細胞への接着または侵入をブロックしません。代わりに、H84T BanLecは、侵入後のウイルス複製プロセスのステップを妨害してVZVの拡散を防ぎます。これは、H84T BanLecが糖タンパク質の成熟、輸送、ウイルス粒子のアセンブリ、または細胞融合を阻害することにより、VZV感染細胞と相互作用している可能性が高いことを示唆しています。
HCMVの場合、H84T BanLecはウイルス粒子の合成を妨害しませんが、ウイルスの接着と侵入の防止が感染メカニズムと考えられます。
HSV-1の場合、H84TBanLecは、詳しくは不明ですが、侵入後に機能するようです。

SI (selectivity index) calculated as CC50/EC50

小麦の根圏:種子由来の根圏細菌と土壌由来の根圏細菌

Institute of Applied Microbiology, Justus-Liebig-University, Giessen, Germanyらのグループは、小麦の根圏形成における種子由来の根圏細菌と土壌由来の根圏細菌の影響について小麦の遺伝子型や土壌の違いを総合的に研究しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8789879/

種子由来の根圏細菌種は、特定の土壌、特定の小麦の遺伝子型の下で濃縮されていました。全体としてみれば、種子由来の根圏細菌および真菌の微生物種は、根圏と比較して根の内層圏で高くなっています。また、小麦の遺伝子型(A. tauschii、T. aestivum、T. dicoccoides、およびT. durum)の違いが、根圏細菌および真菌の細菌叢の組成に大きく影響しています。面白いことに、小麦のT.durum株とその祖先であるT. dicoccoides株の根圏微生物叢の組成は、3つの異なる土壌で類似していましたが、濃縮された細菌・真菌属は土壌によって異なっていました。根圏微生物叢の環境変数の分析からは、根圏細菌と真菌が土壌中のアンモニウムと硝酸塩の含有量によって著しく影響を受けることが分かりました。

非常に大雑把に言えば、根圏微生物叢の形成は、種子が土壌に植えられた直後に始まり、種子微生物叢、植物遺伝子型、および土壌微生物叢が、植物の根から分泌される特定の二次代謝物やシグナル伝達物質の結果として、協調的に最終形態を形成していくと言えるのです。

レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2 オミクロンにも有効である

KU Leuven, Department of Microbiology, Immunology and Transplantation, Rega Institute, Laboratory of Virology and Chemotherapy, Leuven, Belgiumらのグループは、レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2 オミクロンにも有効であると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8785409/

SARS-CoV-2に対するいくつかの直接作用型抗ウイルス薬が存在しますが、それらは、スパイクタンパク質に対するモノクローナル抗体とウイルス複製機構に干渉する低分子量化合物の2つのクラスに分けることができます。承認または緊急使用許可を受けたSARS-CoV-2用直接作用型低分子化合物抗ウイルス薬は、可変スパイクタンパク質をターゲットとせず、保存されたウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)または保存されたウイルスメインプロテアーゼ(Mproまたは3CLプロテアーゼ)をターゲットとしています。

レムデシビルは、もともとエボラウイルス感染症を治療するために開発されたヌクレオシドGS-441524のモノホスホルアミデートプロドラッグであり、SARS-CoV-2のRdRpを阻害します。

モルヌピラビル(MK-4482またはEIDD-2801)は、ヌクレオシド類似体EIDD-1931(β-D-N4-ヒドロキシシチジン)のプロドラッグであり、元々はインフルエンザなどのRNAウイルス用に開発されたものであり、ウイルスRdRpの阻害剤です。

ニルマトレルビル(PF-07321332)は、SARS-CoV-2 Mproの不可逆的阻害剤であり、リトナビルと同時製剤化されており、経口投与治療(Paxlovidとして知られています)が可能です。

この研究は、GS-441524、レムデシビル、EIDD-1931、モルヌピラビル、およびニルマトレルビルが、オミクロンを含む現在のすべてのSARS-CoV-2変異株に対してそれらの活性を保持していることを示しました。これらの抗ウイルス剤が異なるSARS-CoV-2VOCに対する活性を保持しているという事実は、これらの抗ウイルス剤のターゲットタンパク質が高度に保存されているという観察結果と一致しています。

苔類のゼニゴケの細胞壁には、マンノース結合性レクチンが存在する

Laboratoire de Recherche en Sciences Végétales, Université de Toulouse, CNRS, UPS, Auzeville-Tolosane, Franceらのグループは、苔類のゼニゴケの細胞壁におけるタンパク質の発現状態を報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8792609/

植物の細胞壁は、ペクチン、ヘミセルロース、セルロースなどの多糖ポリマーと、木化した二次壁のリグニンでできた複合構造です。この研究では、苔類のゼニゴケから410種類の細胞壁に存在するタンパク質が同定されました。

典型的な結果は次の通りです。

細胞壁多糖ネットワークのリモデリングに関与する細胞壁タンパク質にいくつかのファミリーが同定されています。
15個のGH17(b-1,3-グルコシダーゼ)は、すべての陸上植物の細胞壁で見つかったカロースの加水分解に関与している可能性があります。
3つのGH5(エンド-b-1,4-グルカナーゼ)と5つのGH16(エンドキシログルカントランスフェラーゼ)が同定されました。細胞壁の基質はキシログルカンやマンナンのようなヘミセルロースであると考えられており、細胞増殖中の多糖類の再配列に関与していることが知られています。
2つのGH28(ポリガラクツロナーゼ)、6つのペクチンメチルエステラーゼ(PME)、および2つのペクチンアシルエステラーゼ(PAE)の同定は、細胞壁多糖類の酸性加水分解物中のガラクツロン酸の存在と一致しています。
最後に、5つのGH18(キチナーゼ)と7つのGH19(キチナーゼ/リゾチーム)が特定されました。それらは、抗真菌および抗菌活性を有し、生物的および非生物的ストレスに対する防御反応に関与しています。

いくつかのタンパク質ファミリーは、ゼニゴケの細胞壁に存在する芳香族化合物が関与する酸化還元反応に関与していることが知られています。 CIII Prxsの拮抗的な酵素活性により、細胞壁のリモデリングに2つの相反的な方法で関与しています。(i)非酵素的に細胞壁多糖類を切断できる活性酸素種を生成することにより、細胞壁の弛緩に関与します、(ii)H2O2の存在下で芳香族アミノ酸、モノリグノール、桂皮酸などの芳香族化合物を酸化することにより、細胞壁の硬化に関与したり、エクステンシンのような構造タンパク質の架橋により、共有結合のネットワークを形成します。

キューティクルは、陸上植物のコロニー形成で必ず見かけられます。23個のGDSLリパーゼ/アシルヒドロラーゼが特定されています。GDSLリパーゼ/アシルヒドロラーゼはキューティクル形成に関与していることが示されています。

D-マンノース結合レクチンであると予測される8つのタンパク質が特定されました。細胞壁中のこのようなタンパク質の豊富さは、ペクチンおよびヘミセルロースが豊富な細胞壁抽出物に大量のマンノース残基が存在することから示唆されるように、大量のマンナンの存在に関連している可能性があります。

市販中和抗体のSARS-CoV-2 オミクロンに対する中和力価の様子

Wellcome Centre for Human Genetics, Nuffield Department of Medicine, University of Oxford, Oxford, UKらのグループは、SARS-CoV-2 Omicronに対する市販抗体の中和力価などを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8723827/

以下は、オミクロンに存在する数多くの変異が、市販の中和抗体(mAb)の中和能力の実質的なノックダウンにつながることを示す幾つかの提示されたデータを示しています。
“Commercial neutralizing antibody responses against SARS-CoV-2”

ワクチン接種をしても、血中抗体によるオミクロンの中和力価の低下は避けられないかも知れませんが、ワクチンが完全に効力を失う可能性は低く、ワクチン接種をしていてもブレークスルー感染は発生してしまいますが、恐らく、重症化することに対してはT細胞によって保護が維持されることが期待されます。SARS-CoV-2に対するワクチン誘発性T細胞応答は、抗体応答よりも影響が少ない可能性が報告されています(本ブログでも紹介例があります)。

小麦の根圏:大気中のCO2濃度が上昇すると土壌中の有機リン(P)化合物の無機化が進み、リンの利用効率が上昇する

Department of Animal, Plant and Soil Sciences, Centre for AgriBioscience, La Trobe University, Melbourne Campus, Bundoora, Victoria, Australiaらのグループは、小麦の根圏における大気中の二酸化炭素濃度の上昇に起因する根圏の変化と有機リンの無機化について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8785599/

リン(P)は、生命の主要な構成要素であり、土壌生物相にとっても基本的に重要です。有機リンは土壌中の総リン量の最大80%を占めるため、土壌微生物による有機リンの無機化は、特にフィチン酸などの主要な有機リンの無機化において非常に重要です。植物の根からは細胞外にホスファターゼが放出されますが、この酵素活性の多くは根の表面に限定されており、土壌有機リンの活発な無機化は、主に土壌微生物が植物由来の炭化水素分泌物と相互作用する場所、即ち根圏で起こります。

気候変動は、有機的リンの無機化に影響を与える可能性があります。最も重要な気候変動要因のひとつである大気二酸化炭素濃度の上昇は、土壌有機リンの無機化を大幅に加速します。有機リン無機化の加速は、植物の根から根圏に分泌される炭化水素の影響を受けた植物-土壌-微生物間の相互作用の変化に起因するものです。

著者らは、小麦の根圏における主要な有機リン化合物であるフィチン酸の無機化作用に関連する細菌および真菌群集を含む土壌微生物叢の遺伝子プロファイリングとそれらの機能を調査することにより、大気二酸化炭素濃度の上昇下での有機リンの無機化に対する根圏微生物の寄与を定量化しました。

微生物の多様性は、Vertisolと呼ばれる土壌よりも、Chromosolと呼ばれる土壌の方が大気二酸化炭素濃度の上昇の影響をより明確に受けていました。 二酸化炭素濃度の上昇は、Chrmosolにおいて、小麦の根の表面から3 mm以内の根圏領域全体で細菌種の豊富さを33%と大幅に増加させました。しかし、Vertisolでは、根圏細菌はeCO2の影響をあまり受けませんでした。 ふたつの主要な細菌門、バクテロイデス門とゲンマティモナス門の存在量は、大気二酸化炭素濃度の上昇により根圏で比較的濃縮されており、フィチン酸の無機化作用と正の関連がありました。最も一般的なバクテロイデス門の仲間は、キチノファガ科とマイクロシラ科であり、スフィンゴバクテリア科とヒメノバクテリア科がそれに続いていました。

真菌群においても、Chromosolにおいて、小麦の根の表面から3 mm以内の根圏領域で、より多くの種が大気二酸化炭素濃度の上昇によって見られるようになりました。しかし、Vertisolでは、大気二酸化炭素濃度の上昇は有意な影響を与えませんでした。 大気二酸化炭素濃度の上昇によって、担子菌属アガリスクの存在量、およびグロムス門のクラロイデオグロムス属とファネリフォルミス属の存在量が大幅に増加していました。