STL, PNA, JacalinのO-GalNAcに対する結合特異性

Georgia State Universityらのグループは、化学的酵素的に作られたO-GalNAc糖鎖に対するSTL, PNA, Jacalinの糖鎖結合特異性を詳細に報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-021-23428-x

STL は、末端にLacNac構造を持つcore 2, core 6構造に結合し、core 1やcore 3には結合しません。
PNA は、β1-3Gal branchを持つcore 1やcore 2に選択的に結合します。.
Jacalin は、core 3とほとんどのcore 1構造に強く結合し、α2-6 Siaを嫌います。core 2, core 4, core 6 構造には結合しません。

膀胱がんにおける治療ターゲットとしてのバイオマーカーについて:sialyl-T, sialyl-Tn抗原を発現するHOMER3がそれだ

Portuguese Institute of Oncologyらのグループは、膀胱がんの治療ターゲットとして、sialyl-Tやsialyl-Tn 抗原を発現するHOMER3が有望であると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8188679/

膀胱がんの細胞株である5637とT24からは、10種類ほどの糖鎖構造が特異的に見つかっており、O-型糖鎖が主体です。両方の細胞株で、特に高発現しているのは、mono- 及び di-sialylated T 抗原 (sialyl-T)、core1、更にsialylated 或いはまた fucosylated core2 であります。

このグライコミクス解析をベースとして、細胞からライセートを抽出し、超遠心して膜タンパク質をエンリッチしました。その後、シアリダーゼで処理した後、T抗原にアフィニティーを持つPNAレクチンでプルダウンしました。得られた糖タンパク質をトリプシン消化し、nanoLC-CID-MS/MSにかけ、プロテオミクスの標準的な手法に従って糖タンパク質が同定されました。その結果、900種を超える糖タンパク質が同定されました。

これらの中で、GLUT1(SLC2A1) と HOMER3 が1stランクに位置付けられ、膀胱がんの潜在的な治療ターゲットとして浮上しました。GLUT1 進行した膀胱がんでしばしば過剰に発現するきわめて重要なグルコース・トランスポータです。一方、HOMER3は、ニューロンのシグナル伝達、T細胞の活性化、およびベータアミロイドペプチドの輸送に関与しているとされています。

膀胱がんにおいては、下図に示すように、HOMER3が、sialyl-Tn や sialyl-T 抗原とともに細胞膜上の同じ位置に発現していることが免疫染色で確認されました。

アプタマーを用いて糖鎖とペプチド構造を両方同時に認識させる:前立腺癌のマーカーであるPSAをモデルとして

Universidad de Oviedo, Spainのグループは、human prostate specific antigen (hPSA)の糖鎖とそのペプチド構造を両方同時に認識できるアプタマーをSELEXにて開発しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34094206/

hPSAの糖鎖とペプチド構造を両方認識させるアプタマーを開発するために、α1-6 core-fucoseに特異性を有するPhoSLレクチンを糖鎖修飾サイトに特異的なアプタマーを引っかける確率を上げる為に使用しています。

SELEXのプロセスは、磁気ビーズ(MPs)にhPSA或いは糖鎖を持たないrecombinant PSAを固定化することから始まります。BSAをブロッキング材として使用し、BSAに結合するアプタマーをBSA-MPsを用いて除去します。rPSA-MPsを用いて糖鎖修飾位置とは異なったタンパク質領域に結合するアプタマーを除去します。そしてhPSA-MPsを用いてPSAの糖鎖に結合するアプタマーのライブラリーをエンリッチします。

この後、ふたつのルートに分けますが、戦略Aでは、PhoSLでブロッキングすることにより、ブロッキングされたタンパク質に結合している分子をより厳格に除去する選択を行い、戦略BではPhoSL結合サイトに結合している分子を競合的にエルーションさせます。戦略Aでは、hPSAに結合するアプタマーは減少しますが、PhoSLを用いた競合的なエルーションは、hPSAに結合するアプタマーを増やすとともにその結合力を上げていきます。

下図は、得られたアプタマー(PSAG-1)の結合特異性を示すものですが、ふたつのCure fucoseを持つタンパク質、lipocalin-2 (NGAL) と α-fetoprotein (AFP)が参照されています。前立腺癌に特異的な糖鎖構造をより精密に認識できるこのようなアプタマーが開発できれば、この方法に期待が持てます。

SARS-CoV-2に感染して一年後の抗体の自然進化の様子

Rockefeller Universityらのグループは、SARS-CoV-2に感染してから1年後の自然抗体の様子について報告しています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.05.07.443175v2.full

ワクチンを接種していない回復期患者の場合、抗RBD-IgGは感染後6カ月から1年の間維持されていました。ワクチンを接種した場合は、抗RBD-IgGのレベルがほとんど30倍近くも上昇していました(下図において、Vacは、ワクチン接種を受けたことを示す)。

63人の血漿中和活性をSARS-CoV-2 Spikeタンパク質を発現するHIV 偽ウイルスを用いて測定しています。感染後12カ月で、ワクチン接種を受けていない37名の中和活性(NT50)は75であり、感染後6.2カ月のそれとほとんど違いませんでしが、ワクチン接種を受けた人では、NT50の値は3,684に達し、これはワクチン接種を受けていない人のほとんど50倍にもなっていました。

時間経過とともに中和活性に広がりがあるかどうかを確認するために、60人の中和活性をRBDの変異(R346S、K417N、N440K、A475V、E484K、N501Y)を含むパネルを用いて評価しています。下図のように、K417N、N440K、A475V、E484K、N501Yに対して中和活性が上昇しているのは明らかであり、このことは時が経つにつれて、抗体の中和活性の幅が広がって進化していることを示しています。

Human Surfactant Protein Dが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を阻害するらしい

National Cheng Kung University, Taiwanらのグループは、human surfactant protein D が、SARS-CoV-2感染に対して感染阻害という観点で潜在的な治療効果を有すると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8161545/

Human surfactant protein D (SP-D) は、コレクチンの一種であり、コラーゲンを含んだC-型レクチンであり、肺の恒常性や免疫にかかわる肺サーファクタントに含まれています。 このSP-Dのリコンビナントフラグメントである(rfhSP-D)がSARS-CoV-2に対する感染阻害効果を持つかどうかを調べるために、SARS-CoV-2 Spikeタンパク質を発現する偽レンチウイルスを使用して感染実験が行われました。rfhSP-D は、SARS-CoV-2 S1 に対してドーズ依存的に結合し、この結合はmaltoseやEDTAで阻害されました。また、この実験では、SARS-CoV-2 RBDがない場合には、rfhSP-Dは全く結合しませんでした。

rfhSP-D と Spikeタンパク質の結合がEDTA や maltose によって阻害されるということは、rfhSP-D がSARS-CoV2 Spikeの糖鎖に結合しているということを示唆するものです。偽レンチウイルスの感染効率を調べるためにルシフェラーゼ・レポーター・アッセイが使用されました。ACE2を過剰発現するように遺伝子導入されたHEK293Tに対してSARS-CoV-2を未処理で感染させたときのに比較して(これを1 RLUとする)、rfhSP-D (5 or 10 µg/ml) の処理で、0.5 RLUに蛍光が減少しました。この顕著な蛍光の減少は、rfhSP-Dの処理がSARS-CoV-2の感染を阻害していることを示しています。

これらの実験結果は、rfhSP-D の SARS-CoV-2 感染に対する潜在的な治療効果を示すものです。

ACE2とSARS-CoV-2 RBDの結合に対する糖鎖修飾(Oligomannoseおよびbi-antennary complex N-glycan)の影響

Los Alamos National Laboratoryらのグループは、SARS-CoV-2のRBDとACE2との結合性に対する糖鎖の影響を分子動力学を用いて検討した結果を報告しています。
https://www.mdpi.com/1999-4915/13/5/927

ACE2に6個のOligomannose (MAN9)が Asn53, Asn90, Asn103, Asn322, Asn432, Asn546の位置に修飾され、SARS-CoV-2のRBDにbi-antennary complex N-glyucan(FA2)がAsn343の位置に修飾されているとした場合と、これらすべての糖鎖修飾位置がbi-antennary complex N-glycanであるとした場合をモデルとして結合力を計算しています。下図では、MAN9は赤色で、FA2は青色で示されています。

結果、ACE2の糖鎖修飾がMAN9である場合には、結合力が14.7%減少し、それがFA2である場合には、9.1%上昇することが示されました。

ACE2の修飾をhigh mannose型にした場合は、感染力が若干下がるという実験結果があり、矛盾はしていないようです。

また、N501Y変異で、何故感染力が上がるかについても計算されており、芳香環のπーπ相互作用の影響が指摘されています。この点については、既に過去のブログ記事で同様な研究例を紹介しています。

SiglecのN-型糖鎖結合特異性について:糖鎖アレイを用いた実験から

Georgia State Universityらのグループは、Siglecの糖鎖結合特異性について、糖鎖アレイを用いて検討した結果を報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8116747/

Siglec-3、-9、-10 は、α1-3 branching構造の場合にはSiaα2-6Galβ1-4GlcNAcに対するアフィニティーが強く、逆にα1-6 branching構造の場合には、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcに対するアフィニティーが高いことが分かりました。更に興味深いことに、Siglec-10は、Neu5Gcに対するアフィニティーが高いことが分かりました。

前立腺癌の尿中マーカーについて:PSAのフコース修飾が前立腺癌の進行で減少する

弘前大医学部のグループは、前立腺癌に対する尿中マーカーとその診断法に関するレビューをしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8100853/

今日現在、FDAが認可した前立腺癌(PC)に関する診断マーカーはただ一つしかありません、それは血中PSAです。 前立腺癌が進行すると、α-2,3-Sia (S2,3PSA) と α-2,6-Sia (S2,6PSA) の比率が変動し、α-2,3-Siaが増加することが知られています。
α2,3-linked Sialyl N-Glycan-Carrying Prostate-Specific Antigen
しかしながら、同じ結果は、尿中のPSAには当てはまらず、シアル酸修飾は尿中では殆ど変化しません。

尿中PSAの場合には、PSAのフコース修飾が前立腺癌のマーカーになる可能性があります。前立腺癌では、Lewis型やコア・フコース修飾を受けたPSAが顕著に減少することが分かっています。これらは、例えば、AALやPhoSLと言ったレクチンを使って検出することが可能です。また、コア・フコース修飾されたPSAが生検サンプルのGleasonスコアーと良く相関することも分かっています。Gleasonスコアが7以上の場合で、 PSA-AALでACU=0.69 (P=0.0064)、PSA-PhoSLで0.72 (P=0.0014)という値が得られています。
Decreased fucosylated PSA as a urinary marker

miRNAのプロファイルがCOVID-19の優れたマーカーとなり得る

University Hospital Arnau de Vilanova and Santa Maria, Spainらのグループは、miRNAのプロファイルがCOVID-19の優れたマーカーとなり得ることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8149473/

血中のmiRNAの発現レベルをCOVID-19の入院患者とICU患者の間で比較を行いました。その結果、41種のmiRNAの内、10個に有意差が見られました。

多変数モデル予測を用いて、入院患者とICU患者の判別を行った処、AUCは0.89に達しました(95% CI: 0.81-0.97)。この値は、COVID-19の重症度を判別するマーカーである既存のマーカーに比べて勝るとも劣らない数値です、因みにleukocyte counts (AUC=0.72)、D-dimer (AUC=0.87)、CRP AUC=0.72)であります。

更に、血中のmiRNAが重篤なCOVID-19患者を予測できるマーカーになり得るかについて検討が行われました。6個のmiRNAがICU治療を受けても生存できなかった患者において、優位に低下していることが分かりました(miR-16-5p (FC=0.69)、miR-92a-3p (FC=0.78)、miR-98-5p (FC=0.56)、miR-132-3p (FC=0.69)、miR-192-5p (FC=0.66)、miR-323a-3p (FC=0.66))。多変数モデル予測を用いて検討した結果、2個のmiRNA(miR-192-5p、miR-323a-3p)がその予測に有効であり、得られたAUCは0.80に達しました(95%CI: 0.64-0.96)。

ACE2-FcとscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変した間葉系幹細胞(MSC)を新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に使用するというアイデア

間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療は現在幅広く行われています。2020年までに実に1138件以上のMSCを用いた治療法の治験が実施されています。MSCを用いた治療の基本的なメカニズムは、免疫調整機能、サイトカインのパラクリン分泌、同様な効果を持つエクソソームの分泌、小胞体ストレスの緩和、脱繊維化などにあると考えられています。これらの特性を生かせば、MSCは、COVID-19のARDSに対しても効果を示すだろうと考えられます。

Shanghai Jiao Tong University, Chinaらのグループは、COVID-19の治療薬としてMSCを使うという方法を基本に、そのMSCに遺伝子工学的に改変を加え、ACE2-Fc融合タンパク質とscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変したものを治療に用いることを提案しています。前者は、SARS-CoV-2の感染阻害に有効であり、後者はIL-6のシグナルパスを抑制することでサイトカインストームを抑えることに効果があると考えられます。
本提案はアイデアに留まっている内容なので、実際の知見での有効性の確認が必要です。しかし、アイデアとしては面白いので紹介させて頂きました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34007862/

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