ACE2-FcとscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変した間葉系幹細胞(MSC)を新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に使用するというアイデア

間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療は現在幅広く行われています。2020年までに実に1138件以上のMSCを用いた治療法の治験が実施されています。MSCを用いた治療の基本的なメカニズムは、免疫調整機能、サイトカインのパラクリン分泌、同様な効果を持つエクソソームの分泌、小胞体ストレスの緩和、脱繊維化などにあると考えられています。これらの特性を生かせば、MSCは、COVID-19のARDSに対しても効果を示すだろうと考えられます。

Shanghai Jiao Tong University, Chinaらのグループは、COVID-19の治療薬としてMSCを使うという方法を基本に、そのMSCに遺伝子工学的に改変を加え、ACE2-Fc融合タンパク質とscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変したものを治療に用いることを提案しています。前者は、SARS-CoV-2の感染阻害に有効であり、後者はIL-6のシグナルパスを抑制することでサイトカインストームを抑えることに効果があると考えられます。
本提案はアイデアに留まっている内容なので、実際の知見での有効性の確認が必要です。しかし、アイデアとしては面白いので紹介させて頂きました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34007862/