膀胱がんにおける治療ターゲットとしてのバイオマーカーについて:sialyl-T, sialyl-Tn抗原を発現するHOMER3がそれだ

Portuguese Institute of Oncologyらのグループは、膀胱がんの治療ターゲットとして、sialyl-Tやsialyl-Tn 抗原を発現するHOMER3が有望であると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8188679/

膀胱がんの細胞株である5637とT24からは、10種類ほどの糖鎖構造が特異的に見つかっており、O-型糖鎖が主体です。両方の細胞株で、特に高発現しているのは、mono- 及び di-sialylated T 抗原 (sialyl-T)、core1、更にsialylated 或いはまた fucosylated core2 であります。

このグライコミクス解析をベースとして、細胞からライセートを抽出し、超遠心して膜タンパク質をエンリッチしました。その後、シアリダーゼで処理した後、T抗原にアフィニティーを持つPNAレクチンでプルダウンしました。得られた糖タンパク質をトリプシン消化し、nanoLC-CID-MS/MSにかけ、プロテオミクスの標準的な手法に従って糖タンパク質が同定されました。その結果、900種を超える糖タンパク質が同定されました。

これらの中で、GLUT1(SLC2A1) と HOMER3 が1stランクに位置付けられ、膀胱がんの潜在的な治療ターゲットとして浮上しました。GLUT1 進行した膀胱がんでしばしば過剰に発現するきわめて重要なグルコース・トランスポータです。一方、HOMER3は、ニューロンのシグナル伝達、T細胞の活性化、およびベータアミロイドペプチドの輸送に関与しているとされています。

膀胱がんにおいては、下図に示すように、HOMER3が、sialyl-Tn や sialyl-T 抗原とともに細胞膜上の同じ位置に発現していることが免疫染色で確認されました。