SiglecのN-型糖鎖結合特異性について:糖鎖アレイを用いた実験から

Georgia State Universityらのグループは、Siglecの糖鎖結合特異性について、糖鎖アレイを用いて検討した結果を報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8116747/

Siglec-3、-9、-10 は、α1-3 branching構造の場合にはSiaα2-6Galβ1-4GlcNAcに対するアフィニティーが強く、逆にα1-6 branching構造の場合には、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcに対するアフィニティーが高いことが分かりました。更に興味深いことに、Siglec-10は、Neu5Gcに対するアフィニティーが高いことが分かりました。

前立腺癌の尿中マーカーについて:PSAのフコース修飾が前立腺癌の進行で減少する

弘前大医学部のグループは、前立腺癌に対する尿中マーカーとその診断法に関するレビューをしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8100853/

今日現在、FDAが認可した前立腺癌(PC)に関する診断マーカーはただ一つしかありません、それは血中PSAです。 前立腺癌が進行すると、α-2,3-Sia (S2,3PSA) と α-2,6-Sia (S2,6PSA) の比率が変動し、α-2,3-Siaが増加することが知られています。
α2,3-linked Sialyl N-Glycan-Carrying Prostate-Specific Antigen
しかしながら、同じ結果は、尿中のPSAには当てはまらず、シアル酸修飾は尿中では殆ど変化しません。

尿中PSAの場合には、PSAのフコース修飾が前立腺癌のマーカーになる可能性があります。前立腺癌では、Lewis型やコア・フコース修飾を受けたPSAが顕著に減少することが分かっています。これらは、例えば、AALやPhoSLと言ったレクチンを使って検出することが可能です。また、コア・フコース修飾されたPSAが生検サンプルのGleasonスコアーと良く相関することも分かっています。Gleasonスコアが7以上の場合で、 PSA-AALでACU=0.69 (P=0.0064)、PSA-PhoSLで0.72 (P=0.0014)という値が得られています。
Decreased fucosylated PSA as a urinary marker

miRNAのプロファイルがCOVID-19の優れたマーカーとなり得る

University Hospital Arnau de Vilanova and Santa Maria, Spainらのグループは、miRNAのプロファイルがCOVID-19の優れたマーカーとなり得ることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8149473/

血中のmiRNAの発現レベルをCOVID-19の入院患者とICU患者の間で比較を行いました。その結果、41種のmiRNAの内、10個に有意差が見られました。

多変数モデル予測を用いて、入院患者とICU患者の判別を行った処、AUCは0.89に達しました(95% CI: 0.81-0.97)。この値は、COVID-19の重症度を判別するマーカーである既存のマーカーに比べて勝るとも劣らない数値です、因みにleukocyte counts (AUC=0.72)、D-dimer (AUC=0.87)、CRP AUC=0.72)であります。

更に、血中のmiRNAが重篤なCOVID-19患者を予測できるマーカーになり得るかについて検討が行われました。6個のmiRNAがICU治療を受けても生存できなかった患者において、優位に低下していることが分かりました(miR-16-5p (FC=0.69)、miR-92a-3p (FC=0.78)、miR-98-5p (FC=0.56)、miR-132-3p (FC=0.69)、miR-192-5p (FC=0.66)、miR-323a-3p (FC=0.66))。多変数モデル予測を用いて検討した結果、2個のmiRNA(miR-192-5p、miR-323a-3p)がその予測に有効であり、得られたAUCは0.80に達しました(95%CI: 0.64-0.96)。

ACE2-FcとscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変した間葉系幹細胞(MSC)を新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に使用するというアイデア

間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療は現在幅広く行われています。2020年までに実に1138件以上のMSCを用いた治療法の治験が実施されています。MSCを用いた治療の基本的なメカニズムは、免疫調整機能、サイトカインのパラクリン分泌、同様な効果を持つエクソソームの分泌、小胞体ストレスの緩和、脱繊維化などにあると考えられています。これらの特性を生かせば、MSCは、COVID-19のARDSに対しても効果を示すだろうと考えられます。

Shanghai Jiao Tong University, Chinaらのグループは、COVID-19の治療薬としてMSCを使うという方法を基本に、そのMSCに遺伝子工学的に改変を加え、ACE2-Fc融合タンパク質とscFv-IL6R-Fc融合タンパク質を分泌するように改変したものを治療に用いることを提案しています。前者は、SARS-CoV-2の感染阻害に有効であり、後者はIL-6のシグナルパスを抑制することでサイトカインストームを抑えることに効果があると考えられます。
本提案はアイデアに留まっている内容なので、実際の知見での有効性の確認が必要です。しかし、アイデアとしては面白いので紹介させて頂きました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34007862/

ACE2をプローブとして用いる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)高感度簡易センサー:電気化学反応による検出

Perelman School of Medicine, University of Pennsylvaniaらのグループは、高感度で高速検出な電気化学反応を利用した新型コロナウイルス検出のPOCTデバイス(RAPIDと命名)をプレゼンしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33997767/

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質を検出するためにACE2がプローブとして使用されています。ACE2を電極上に固定化するために、二官能性化合物であるグルタルアルデヒドをリンカーとして使用し、BSAを用いてノンスペをブロッキングします。感度を上げるために、ナフィオンも使用されました。
ACE2 と SARS-CoV-2 Spikeタンパク質の結合が、ここで使用されているRedoxプローブ(ヘキサシアノ鉄酸塩)と電極間の電荷の流れに影響を及ぼすことを利用して、その電荷移動抵抗の変化を測定することで検出します。

結果として、10 fg/mL から 100 ng/mL の範囲で線形な反応を得ることが出来 (R2 = 0.993)、検出限界は2.18 fg/mL (S/N=3)となりました。測定時間も4分と非常に高速です(サンプルのインキュベーションに2分、測定と解析に2分)。

139 鼻腔swabサンプルを用いたブラインドテストでは(109は、RT-PCRでCOVID-19陽性、内30は、RT-PCRで陰性)、感度、特異度、正確性は鼻腔Swabサンプルで、それぞれ83.5%、100%、87.1%となり、唾液サンプルで、それぞれ100%、86.5%、90.0%となりました。

ザクロの皮からの抽出物が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗ウイルス薬になるという

Arterra Bioscience SPA, Naples, Italyらのグループは、ザクロの皮からの抽出物(PPE)が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗ウイルス薬になる可能性を示しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fchem.2021.638187/full

ザクロの皮からの抽出物の二大成分は、プニカラギンとエラギタンニンです。

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質とACE2の結合阻害実験が行われ、PPEが効果的に結合を阻害することが示されました(下図参照)。本実験において、AC384がコントロールとして使用されていますが、これはSARS-CoV-2のSpikeタンパク質とACE2の結合を阻害するモノクロ抗体です。

Human kidney-2 cells (HK-2)を用いての感染阻害実験も行われました。SARS-CoV-2 Spikeタンパク質をキャリーするレンチウイルスと、Vesicular stomatitis virus G (VSVG)タンパク質をキャリーするレンチウイルスが使用されました。PPEがSARS-CoV-2 Spikeレンチウイルスの感染を見事に阻害していることが分かります(下図参照)。

これらin vitroの実験結果は、PPEを用いた効果的で斬新な治療薬の開発を進める上において、非常に心強いものとなっています。

脳内出血に対する血清糖鎖マーカーがあるらしい:ConAが最も優れた特異度を示した

The First Affiliated Hospital of Anhui Medical University, Hefei, Chinaらのグループは、脳内出血に対する血清糖鎖マーカーを見つけたと報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8105815/

AUCの値はTOP=6種類のレクチンに対して下記のようでした。
0.93 for ConA (P<0.01)、
0.95 for PNA (P<0.01)、
0.67 for VVA (P=0.04)、
0.92 for AAL (P<0.01)、
0.86 for LTL (P<0.01)、
0.84 for AIL (P<0.01)。

また、その時の感度/特異度は下記のようでした。
75.0%/95.8% for ConA、
100.0%/64.7% for PNA、
75.0%/58.3% for VVA、
100.0%/72.9% for AAL、
87.5%/79.2% for LTL、
A68.8%/83.3% for AIL。

結果的には、α-Man/α-Glcに糖鎖結合特異性を有する(ConA) が最も高い特異度を示しました。このことは、ConAが脳内出血の診断や予後予測に特異的な糖鎖マーカーを検出するに際して、最も優れたレクチンプローブになるかも知れないということを示唆しています。

藻類から抽出された抗ウイルスレクチン(SARS-CoV-2、HIV、Influenza、Ebora)

藻類から抽出された天然分子(多糖類やレクチン)を抗ウイルス薬として検討した例は多く、Zhengzhou University, Chinaらのグループは、そのレビューを行っています。
https://www.mdpi.com/1420-3049/26/8/2134/htm

多糖類については、カラギーナン、ガラクタン、キトサン、アガー、フコイダン、ラミナランらは、あまりに有名であり、一度は名前を聞いたことがあるかも知れません。これらの作用機序については、ウイルスの宿主細胞への吸着阻害、ウイルスRNAの転写や複製の阻害、ヒトの抗ウイルス免疫の活性化らにあるとされています。多糖類は水溶性でもあり、副作用も少なく、手軽だと思われます。詳細については、もしご興味があれば、本論や引用文献を参照して頂きましょう。

ご存知のようにウイルスのエンベロープタンパク質は強く糖鎖修飾を受けており、藻類から抽出された糖鎖結合性のレクチンを用いて、ウイルスの感染を阻害する試みについても多くの研究例があります(下図はその代表例)。

 

 

 

 

 

 

糖鎖とレクチンの相互作用を用いてSARS-CoV-2にいかに立ち向かうか?については、過去のブログ記事も大いに参考になります。レクチンを抗ウイルス薬として用いる場合の副作用をどう克服するか?が大きな挑戦となっています。

Lenzilumab、第3相治験にて、COVID-19治療薬としての有効性が示された

Mayo Clinicらのグループは、COVID-19に対するLenzilumabの第3相治験から治療薬として有望な結果を報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33972949/

COVID-19においては、顆粒マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)が病態の重症度、肺組織へのマクロファージの遊走、ICU入院らと相関があると言われています。GM-CSFはサイトカインの一種であり、多能性造血幹細胞に分化を促し、結果としてそのダウンストリームにあるケモカイン (MCP-1, IL-8, IP-10) や、サイトカイン (IL-6, IL-1)の産生を加速します。

Lenzilumabは、GM-CSFに直接的に結合する抗体であり、GS-CFSの受容体への結合を阻害し、そのダウンストリームを遮断します。LenzilumabのGM-CSFへの結合アフィニティーは25pMであり、体内での消失速度も遅いとされています。 Lenzilumabの有効性を検証するために、ランダム化、ダブル・ブライン、プラセボ・コントロールを用いた第3相治験が行われました。Lenzilumabのドーズは600mgであり、8時間の間をあけ、28日間にわたって静脈注射にて投与されました。

Lenzilumabは、survival without ventilation (SWOV) を指標として、28日間を通して54%改善することが出来ました。しかし、この効果は、CRP<150 mg/L、85歳以下という条件に限られることに注意しましょう。

米国CDCのCOVID-19チームが報じたPfizer-BioNTech と Moderna ワクチンの有効性

米国CDC COVID-19 チームは、Pfizer-BioNTech や Moderna ワクチンの有効性調査の結果を報告しています。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7018e1-H.pdf

チームは、その結果として、Pfizer-BioNTech 或いは Moderna ワクチンの完全接種を受けた人のワクチン有効性は、94% (95% CI = 49%–99%)、部分的なワクチン接種を受けた人で 64% (95% CI = 28%–82%)と報告しました。
本研究においては、65歳以上で、COVID-19症状を示して2021年1月1日から3月26日の間に入院し、RT-PCRで確認された417名を対象としています。この中には, 187人の症例患者と230人の対照が含まれています。症例患者とは、一回以上のSARS-CoV-2 RT-PCRテストを受けて陽性と認められた人、対照とはRT-PCRで陰性と認められた人であります。また、この研究の参加者は、ワクチン接種を受けたことがCDCワクチン記録など公的な記録と自己申請で確認された人達です。

COVID-19の症状を発症する14日以内に、第一回目のワクチンの接種を受けていてもその効果はほとんどないということには注意しましょう(ワクチン有効性 = 3%, 95% CI = −94%–51%)。

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