Pfizerの新型コロナウイルス(COVDI-19)ワクチンの有効性:B.1.1.7(英国変異株)、B.1.351(南アフリカ変異株)への影響

Grossman School of Medicine, New Yorkらは、Pfizerの新型コロナウイルス(COVDI-19)ワクチンの有効性をB.1.1.7(英国変異株)、B.1.351(南アフリカ変異株)について報告しています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.02.05.430003v1

本ブログサイトでも、他の研究グループによる同様な研究結果を記載しています(2021年2月6日の記事参照)。
本グループの報告でも、似たような傾向になっています。現在のPfizerのワクチンは、英国変異株の影響はさほど受けませんが、南アフリカ変異株に対しては、有効性がかなり下がりそうだ、というのは確かなようです。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRCA増幅とRedox反応を用いた電気化学的な高感度検出法

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検出のGold Standardと言えば、RT-PCRであります。
Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailandらのグループは、RT-PCRと同レベルの感度と特異度を有し、かつ高額な装置も必要としない電気化学的な検出法について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-021-21121-7

SARS-CoV-2を高感度に検出するには、当然ながら遺伝子の増幅工程が必要です。筆者らは、Rolling Circle Amplification(RCA)を使用しています。RCA法は、PCR法やLAMP法とは異なり、キャリーオーバーコンタミネーションを起こしても次の増幅工程に与える影響が小さい、室温程度(25℃~37℃)の等温工程で増幅できる、といった利点を持っています。RCA amplicon (Padlock probe)は、下図のように設計され、検出したいターゲット(SARS-CoV-2のN-gene, S-geneなど)に特異的な配列(Target gene), Universal capture probe-binding region, Gene specific reporter probe-binding regionからなっています。このPadlock probeを用いてRCAを行うと、Target geneらが繰り返し現れる巨大な長鎖が得られます。このRCA productsに対して、probe-conjugated magnetic bead particle (CP-MNB), Silica methylene blue reporter probe (SiMB-RP)をハイブリダイズして最終的な産物を得ます。Redox反応を起こさせるためにMethylene blueやAcridine orangeを使用します。電気化学反応によって得られる電流は、下図のようにcopy numberと共に増加します。結果として、検出限界感度は、1 copy/uLが得られたとのことです。

Vitamin Cと新型コロナウイルス(COVID-19)

University of Helsinkiらのグループは、Vitamin Cと新型コロナウイルス(COVID-19)の関係について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7848027/

健常者ですと、血中のVitamin C濃度を維持するには、0.1g/day程度のVitamin C摂取量で事足ります。しかし、COVID-19に感染して重症化すると、血中のVitamin C濃度が激減し、Vitamin C欠乏症と同程度、更には、ほとんど検出されないレベルにまで下がってしまう場合もあります。

大量のVitamin C(6~8g/day)を摂取することで、以下のような効果が得られるということです。
ICU治療期間を平均8%短縮
致死率を35%から78%に低減

Vitamin Cには副作用がないので、これも一つの治療法として有効であると考えられます。

気管支肺胞洗浄液を用いた肺癌の新しいバイオマーカーについて

The First Affiliated Hospital of Xi’an Jiaotong University, Xi’an, Chinaらは、肺腺癌、肺扁平上皮癌、小細胞肺癌らを判別するための新しいマーカーを気管支肺胞洗浄液から報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7840895/

マーカー探索には、レクチンマイクロアレイを使用し、サンプルとしては、気管支肺胞洗浄液を使用しています。adenocarcinomas (ADC) 肺腺癌、squamous carcinomas (SCC) 肺扁平上皮癌、small cell lung cancer (SCLC) 小細胞肺癌らを、benign pulmonary diseases (BPD) 良性肺疾患から判別することを目的としています。更には、early stage lung cancer (LC-ES) 早期癌と、advanced stage lung cancer (LC-AS) 進行癌を区別することも目的としてます。

レクチンマイクロアレイの結果からは、15種類のレクチンで有意差が見受けられ、各種肺癌の違いも見分けるために、数種類のレクチンを組み合わせてロジスティック回帰分析を行っています。

結果として、
肺癌を良性肺疾患から判別するには、ECA, GSL-I, RCA120が使用され、(cutoff value: 0.754, AUC: 0.961, 感度: 0.918, 特異度: 0.939)となり、
ADCを判別するには、DBA, STL, UEA-I, BPLが使用され、(cutoff value: 0.569, AUC: 0.619, 感度: 0.706, 特異度: 0.586)、
SCCを判別するには、PNAが使用され、(cutoff value: 0.578, AUC: 0.693, 感度: 0.800, 特異度: 0.667)、
SCLCを判別するには、STL, BS-I, PTL-II, SBA, PSAが使用され、(cutoff value: 0.728, AUC: 0.718, 感度: 0.721, 特異度: 0.684)、
そしてまた、
早期癌を見分けるには、MAL-II, LTL, GSL-I, RCA120, PTL-II, PWMが使用され、(cutoff value: 0.668, AUC: 0.856, 感度: 0.829, 特異度: 0.810)が得られました。

多様な疾患を判別するには、一変数(一レクチン)に頼るのではなく、多変数(多レクチン)を用いて、各疾患ごとに特徴的なプロファイルを見分けていくことが有利であります。本ブログ管理者の私見ですが、プロファイルの違いを見分けて行くために、従来型の統計解析手法ではなく、AIを投入していくことがトレンドになると考えています。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の英国及び南アフリカ変異株に対するModernaとPfizerのワクチンの有効性について

Columbia University Vagelos College of Physicians and Surgeonsらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の英国及び南アフリカ変異株に対するModernaとPfizerのワクチンの有効性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7852271/

英国および南アフリカ変異株には、従来のD614Gに加えて、下記のような変異が入っています。 英国変異株(B.1.1.7 )には8個の変異が(UKΔ8と略記)、南アフリカ変異株(B.1.351)には9個の変異が入っています(SAΔ9と略記)。
ModernaとPfizerのワクチンを接種したボランティアからの血清サンプルを用いて力価を測定した結果、D614GをWTとして、UKΔ8ではそれほどでもないですが(1.8 倍, Moderna; 2.0 倍, Pfizer)、 SAΔ9では(8.6 倍, Moderna; 6.5 倍, Pfizer)と、かなり力価が下がっていることが示されています。

レクチンを発現したLactococcus lactis(グラム陽性菌)を用いた癌細胞のターゲティング

癌では、特異的な糖鎖が発現します。その状態は、もちろん癌種によって異なるのですが、一般的には、多分岐N型糖鎖の発現、O型糖鎖の昂進、O型糖鎖の刈込、末端修飾の変化(シアル酸、フコース)が特徴とされています。
University of Ljubljanaらのグループは、Lactococcus lactis(グラム陽性菌の一種)の表面に、癌の糖鎖に特異的なレクチンを人工的に発現させて、癌細胞を狙い撃ちする方法を提案しています。
https://www.mdpi.com/2076-2607/9/2/223/htm

具体的には、二種のレクチンに着目しました。ひとつはB subunit of Shiga holotoxin(Stx1B)、もう一つはClitocybe Nebularis lectin (CNL)であります。
これらレクチンの糖鎖結合特異性は、
Stx1B = Gb3
CNL = LacdiNAc
であります。

これらのレクチンの遺伝子は公開されていますので、それをプラスミドに組み込んで、Lactococcus lactisの細胞表面にこれらレクチンが発現するように改変しました。
Stx1B自体、細胞障害性を持つため、下図のように癌細胞に効果的にターゲティングし、癌細胞を狙い撃ちすることができます。
CNLについては、細胞障害性を持たない為、癌細胞へのターゲティングは可能ですが、細胞障害性はありません。
最終的には、癌細胞ターゲティング用にレクチンを発現するように改変されたバクテリアに治療薬を運ばせる、というような使い方を提案しています。

Adeno-associated virus (AAV) の組織ターゲティング性能に糖鎖が関係する?

Adeno-associated virus (AAV) を利用した遺伝子治療において、AAVのカプシドに組織ターゲティングという観点において差異が存在し、糖鎖が関係しているのではないか?という議論がかなり以前から存在します。例えば、下記のような論文がリファレンスになります。
https://www.nature.com/articles/gt201316
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)51734-1/fulltext
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)48853-2/fulltext
https://jvi.asm.org/content/80/18/9093

具体的には、AAV-1とAAV-6はシアル酸に結合しやすく、AAV-2はヘパラン硫酸に、AAV-9はGalactoseと結合しやすいと報告されています。
しかし、本当なのでしょうか?
本ブログ管理者には、カプシドタンパク質にレクチン様機能が存在する?にわかには信じられない事象ですね。

アンモニアを使って多能性幹細胞(iPSC, ESC)より分化させた肝細胞を選別する方法

肝細胞を用いた毒性試験は、薬物の毒性試験を動物実験で行う方法の代替技術として広く使用されるに至っています。毒性試験で肝細胞を使用する場合の問題点は、同じ特性を持つ肝細胞を大量に安定供給できないというところにあります。そこで、国立成育医療研究所のグループは、多能性細胞(iPSC, ESC)から肝細胞を作り、アンモニアを使って不均一な細胞集団から均一性の高い肝細胞集団をエンリッチしてくる方法を提案してます。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.20.999680v1.full

ESCを肝細胞に分化させた後、2日間のアンモニア処理をすることにより、アンモニア毒性に耐性を持つ均一な肝細胞を選別します。70~80%がこの段階で死滅します。生き残った肝細胞をMEF-feederの上で培養し、増殖させます。このようにして選別された肝細胞は、190日間で30倍ほどに増殖します。アンモニア毒性の詳細なメカニズムは分かっていませんが、アンモニアイオンがカリウムイオンと競合し、最終的に細胞膜内外のpH変化で死に至ると考えられます。アンモニア選別された肝細胞は、ALB, AFP, CYP3A4, CPS1, and OTCらの遺伝子が高発現しており、ALBとAFPは培養日数とともに減少していきます。CPS1, OTCは、アンモニアの代謝にかかわる遺伝子であります。また、CYP3A4は、不要な生体異物を代謝する酵素の一つです。
同様なことは、iPSCから作った肝細胞でも言えます。

iPSC, ESCより分化させた細胞は、ESTEM-HE 培地 (GlycoTechnica, Ltd) にて、培養されました。

 

新しい不死化肝細胞株、HepaMN、の樹立とその特性

肝細胞は、in vitroでの医薬品の毒性検査で欠かせない細胞です。HepG2, Huh7, THLE-2, PLC-PRF-5, and AML-12といった肝細胞株が利用されています。国立成育医療研究センターらのグループは、胆道閉鎖症を発症した肝細胞からHepaMNと命名された新しい不死化肝細胞株を樹立しました。不死化は、CDK4, cyclin D1, and TERTの遺伝子導入により行われました。
https://www.nature.com/articles/s41598-020-73992-3

HepaMN株の特徴について:
非形質転換肝細胞から樹立されており正常な肝機能と二倍体を持つ
HepaRGと同レベルのアルブミン遺伝子の発現を示す
肝細胞の細胞形態を示す
安定したシトクロムP450 3A4 (CYP3A4) を誘導し、正常な代謝作用を示す
効率よく増殖し、非常に長いパッセージでも安定である
結果として、毒性検査に新しい有用な肝細胞株を提供できたとしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

HepaMN細胞の培養には、EMUKK-15が推奨されます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するアデノ随伴ウイルス(AAV)を利用したワクチンの開発

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する先行するファイザーやモデルナのワクチンはmRNAタイプですが、下記のグループは、 adeno-associated viral (AAV)を利用したワクチンの試作評価を進めています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.05.422952v3.full.pdf

AAVを利用した遺伝子治療薬は、安全性が高い方法として認識されており、 遺伝子治療薬として、既に、Glybera, Luxturna, ZolgensmaらがFDAやEMAで承認されています。
二種類のAAVを利用したワクチンが試作されています。AAVCOVID-19-1(AC1)は、全長Sタンパク質がエンコードされており、感染した細胞の細胞膜上に抗原となるSタンパク質が発現します。もうひとつのAAVCOVID-19-3(AC3)は、Sタンパク質の一部をエンコードしており、抗原は分泌タンパク質の形態をとります。

 

 

 

 

評価は、マウスとサルで行われており、1回のドーズで5カ月間ほど免疫反応が持続したとのことです。保存も室温で1か月は問題がなく、AAVワクチンの量産については、方法論が確立しているので問題ないとのことです。なお、効果としては、AC1の方がAC3より高そうです。

しかし、ブログ管理人的には、抗原となる遺伝子が細胞に組み込まれてしまうことに一抹の不安を覚えますが、どうなのでしょうか?