新しい不死化肝細胞株、HepaMN、の樹立とその特性

肝細胞は、in vitroでの医薬品の毒性検査で欠かせない細胞です。HepG2, Huh7, THLE-2, PLC-PRF-5, and AML-12といった肝細胞株が利用されています。国立成育医療研究センターらのグループは、胆道閉鎖症を発症した肝細胞からHepaMNと命名された新しい不死化肝細胞株を樹立しました。不死化は、CDK4, cyclin D1, and TERTの遺伝子導入により行われました。
https://www.nature.com/articles/s41598-020-73992-3

HepaMN株の特徴について:
非形質転換肝細胞から樹立されており正常な肝機能と二倍体を持つ
HepaRGと同レベルのアルブミン遺伝子の発現を示す
肝細胞の細胞形態を示す
安定したシトクロムP450 3A4 (CYP3A4) を誘導し、正常な代謝作用を示す
効率よく増殖し、非常に長いパッセージでも安定である
結果として、毒性検査に新しい有用な肝細胞株を提供できたとしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

HepaMN細胞の培養には、EMUKK-15が推奨されます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するアデノ随伴ウイルス(AAV)を利用したワクチンの開発

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する先行するファイザーやモデルナのワクチンはmRNAタイプですが、下記のグループは、 adeno-associated viral (AAV)を利用したワクチンの試作評価を進めています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.05.422952v3.full.pdf

AAVを利用した遺伝子治療薬は、安全性が高い方法として認識されており、 遺伝子治療薬として、既に、Glybera, Luxturna, ZolgensmaらがFDAやEMAで承認されています。
二種類のAAVを利用したワクチンが試作されています。AAVCOVID-19-1(AC1)は、全長Sタンパク質がエンコードされており、感染した細胞の細胞膜上に抗原となるSタンパク質が発現します。もうひとつのAAVCOVID-19-3(AC3)は、Sタンパク質の一部をエンコードしており、抗原は分泌タンパク質の形態をとります。

 

 

 

 

評価は、マウスとサルで行われており、1回のドーズで5カ月間ほど免疫反応が持続したとのことです。保存も室温で1か月は問題がなく、AAVワクチンの量産については、方法論が確立しているので問題ないとのことです。なお、効果としては、AC1の方がAC3より高そうです。

しかし、ブログ管理人的には、抗原となる遺伝子が細胞に組み込まれてしまうことに一抹の不安を覚えますが、どうなのでしょうか?

英国および南アフリカでの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異がワクチンに及ぼす影響

英国および南アフリカでの感染爆発の背後には、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異が関係していると指摘されています。数多くの変異が発生しているのですが、これらに共通する変異は、N501Yであることも既に示されています。
University of Texas Medical Branch, Galveston TXのグループは、この変異がファイザーのワクチンであるTozinameran(BNT162b2, a nucleoside modified RNA vaccine)の効果に如何なる影響を与えるかについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7805448/

N501の遺伝的バックグラウンドであるY501との比較実験を、ワクチンを投与後、2週間及び4週間経過後の20人の血清を用いて、N501とY501ウイルスに対する中和抗体力価を測定することで実施しました。結果として、ほぼ同一の力価を得たとのことです。

米国NISTの reference mAb(humanized IgG Type1)の糖鎖構造評価

米国NISTは、reference mAbとしてヒト化IgG Type1 mAbを提供しています。このmAbの製造には、NS0細胞が使われています。同細胞は、生物医学研究や治療用タンパク質の生産で商業的に使用されている非分泌型マウス骨髄腫に由来するモデル細胞株であります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31591262/

世界73機関で実施された103件の評価結果を包括して、糖鎖付加の状態を報告しています。IgG Type1のreference mAbの糖鎖修飾情報として役に立ちそうです。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチン投与の優先順位について:やはり60歳オーバーを優先すべきか

University of Colorado Boulderらのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチン投与の優先順位についてシュミレーションを行いました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7743091/

5つの年齢群のワクチン投与モデルを作り、ワクチンの人口に対する投与スピード(0.05%~1%/day)、感染率(1.15、1.5)、ワクチンの有効性(90%)、更にはワクチンの有効性が60歳以上で年齢と共に低下(60歳=90% -> 80歳=50%へ低下)する場合らを想定し、シュミレーションをしています。
結果は、条件で変化するのですが、60歳以上を優先する場合と、20歳から59歳を優先する場合が、最良の選択として入れ替わります。しかし、前提条件が実情で常に変化することから、オーバーオールに見ると、60歳以上を優先する方がベターな選択となるでしょう。

Deep Learning(深層学習)とレクチンマイクロアレイを組み合わせた細胞の超高精度判別法の実証

国立成育医療研究所のグループは、レクチンマイクロアレイの糖鎖プロファイリングデータにDeep Learning(深層学習)を組み合わせることで、細胞の違いを超高精度で判別できることを実証しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352320420300742?via%3Dihub

レクチンマイクロアレイには、GlycoTechnicaのLecChip Ver1.0が使用されています。同レクチンマイクロアレイには厳選された45種類の天然型レクチンが搭載されており、2007年に上市以降、レクチンアレイのデファクトスタンダートとして世界中で広く使用されています。
Deep Learningは、ご存知のようにAIの一手法として色々な分野で応用が進んでおり、本研究ではGoogleのTensorFlowをバックエンドとし、Kerasをラッパーソフトとして使用しています。Deep Leaning の層構成は、入力層が45(レクチンの個数と同じ)、出力層が5(5種の細胞の判別を行うため)であり、隠れ層は1から5層であります。評価した細胞種は5種(Pluripotent stem cell, Mesenchymal stromal cell, Endometrial and ovarian cancer cell, Cervical cancer cell, Endometrial cell)であり、合計1,577サンプルを評価に用いています。
得られた結果は下記のように驚異的であり、総合97.4%という高い判別能力を示しています。

 

 

なお、本論文で用いられているDeep Learningは、Mxより”SA/DL Easy”というソフト名にて販売されています。本ソフトは、Deep Learningを使用するに際し、Pythonなど一切のプログラミング言語に関する知識を必要とせず、一次元配列のデータセット(上記論文で使用されているレクチンマイクロアレイの糖鎖プロファイリングデータ等)を入力として、マウスをクリックするだけで、Neural Networkを構築し、Deep Learningを走らせることが出来るユーザーフレンドリーなソフトとなっています。
本ソフトについてご興味がありましたら、Mxへお問い合わせをお願い致します。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源について、米国務省がFACT Sheetを公開

本ブログでは、2020年12月15日、[The 2nd Yan report」を引用する形で、SARS-CoV-2は人工的な産物である可能性が高いとする記事をアップしています。

2021年1月15日、米国務省から、Activity at the Wuhan Institute of Virology、と題するFACT Sheetが公開されました。
https://www.state.gov/fact-sheet-activity-at-the-wuhan-institute-of-virology/

この記事の中において、米国務省は、SARS-CoV-2の起源がWuhan Institute of Virology (WIV)であるという明言は避けているのですが、WIVにおける三つのFACTsを次のように示しています。

  1. 2019年秋に、WIVでCOVID-19と思しき患者(研究者)が出ていた
  2. 2016年よりRatG13(SARS-CoV-2に96.2%類似)を含むコウモリのコロナウイルスの研究をWIVで行っていた
  3. 極秘に中国の生物武器研究がWIVで行われていた

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染防止用にコンタクトレンズをGriffithsinで修飾する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、咽頭鼻腔だけでなく、目からも侵入してきます。
Sichuan University, Chengdu, Chinaのグループは、コンタクトレンズにマンノース結合型のレクチンであるGriffithsinをコーティングする方法を提案しています。
レクチンの使い方としては簡単で有効かも知れませんね。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2020.599757/full

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRT-PCRのCt-値について

Albert Einstein College of Medicineのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRT-PCRにおけるCt-値と死亡率の間の相関について、後ろ向き試験の統計解析から、その結果を報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0244777

新型コロナウイルスで入院した患者1044名に対する後ろ向き試験の結果です。
RT-PCRのCt-値を4分割して統計分析をしています。
Q1: Ct=<22.9
Q2: 23.0<Ct<27.3
Q3: 27.4<Ct<32.8
Q4: Ct=>32.9

結果として、院内死亡率とCt-値は逆相関していることが示されています。
つまり、Ct-値が低いほど院内死亡率が上昇し、Ct-値が高いほど院内死亡率が減少するようです。

言い換えれば、暴露したウイルス数が多ければ、あるいはまた体内でのウイルス増殖が多ければ、死亡率があがるということになります。

新型コロナウイルスの感染を押さえる低分子化合物(Protoporphyrin IX (PpIX), Verteporfin):SARS-CoV-2のACE2への結合を阻害

Fudan Univ.のグループは、FDA承認の医薬品である低分子化合物(Protoporphyrin IX (PpIX), Verteporfin)が効果的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染を押さえることをin vitroではありますが示しました。
これら化合物がACE2に結合し、SARS-CoV-2のACE2への結合を阻害するからです。

in vivoでの臨床試験が期待されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095927320307283?via%3Dihub