アンモニアを使って多能性幹細胞(iPSC, ESC)より分化させた肝細胞を選別する方法

肝細胞を用いた毒性試験は、薬物の毒性試験を動物実験で行う方法の代替技術として広く使用されるに至っています。毒性試験で肝細胞を使用する場合の問題点は、同じ特性を持つ肝細胞を大量に安定供給できないというところにあります。そこで、国立成育医療研究所のグループは、多能性細胞(iPSC, ESC)から肝細胞を作り、アンモニアを使って不均一な細胞集団から均一性の高い肝細胞集団をエンリッチしてくる方法を提案してます。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.20.999680v1.full

ESCを肝細胞に分化させた後、2日間のアンモニア処理をすることにより、アンモニア毒性に耐性を持つ均一な肝細胞を選別します。70~80%がこの段階で死滅します。生き残った肝細胞をMEF-feederの上で培養し、増殖させます。このようにして選別された肝細胞は、190日間で30倍ほどに増殖します。アンモニア毒性の詳細なメカニズムは分かっていませんが、アンモニアイオンがカリウムイオンと競合し、最終的に細胞膜内外のpH変化で死に至ると考えられます。アンモニア選別された肝細胞は、ALB, AFP, CYP3A4, CPS1, and OTCらの遺伝子が高発現しており、ALBとAFPは培養日数とともに減少していきます。CPS1, OTCは、アンモニアの代謝にかかわる遺伝子であります。また、CYP3A4は、不要な生体異物を代謝する酵素の一つです。
同様なことは、iPSCから作った肝細胞でも言えます。

iPSC, ESCより分化させた細胞は、ESTEM-HE 培地 (GlycoTechnica, Ltd) にて、培養されました。