ヒトの目の涙液層におけるN-型糖タンパク質カタログの作成

Department of Experimental and Translational Ophthalmology, University Medical Center, Johannes Gutenberg University, Mainz, Germanyのグループは、ヒトの目の涙液層におけるN-型糖タンパク質カタログの作成を行いました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36677706/

本研究の主な目的は、ヒト涙液膜から糖タンパク質/糖ペプチドを濃縮するためのレクチンベースのアフィニティー精製法とMSベースの検出を組み合わせて、涙液層におけるN-型糖タンパク質カタログの作成(即ち、糖たんぱく質の種類とN-型糖鎖修飾位置の同定)を行うことでした。

最高性能のマルチレクチンカラムシステムとして、4Lと呼ばれる4つのレクチン ConA、JAC、WGA、および UEA Iを用いたエンリッチメント法でヒト涙液サンプル消化物から糖ペプチド濃縮を行い、MS分析によってその詳細解析が行われました。本研究の主な結果として、11種のN-型糖タンパク質 (LIF、PIGR、IGHA2、IGHA1、AZGP1、LACRT、JCHAIN、PIP、TF、HP、および SERPINA1) の合計26個のN-型糖鎖修飾部位が、健康な女性の涙液層サンプルから得られました。

これらの結果は、眼の表面に焦点を当てた将来の研究のための重要なN-型糖タンパク質リファレンスマップとなり、涙液膜の安定性と眼の防御システムを維持するためのN-型糖タンパク質の複雑な調節機能を解明するのに役立つと考えられます。

コウモリおよびげっ歯類から分離された二種のロタウイルスの糖鎖結合特性

北海道大学北海道大学国際人畜共通感染症研究所分子病態生物学部門らのグループは、コウモリやげっ歯類から分離されたロタウイルスA(RVA)の特徴について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36633410/

本研究においては、ザンビアで収集されたエジプトオオコウモリおよびナタール多乳動物マウスからRVAを分離し、その特徴を解析しています(代表的なウイルス株は、16-06 と MpR12)。
RVAゲノムは、11個のdsRNA セグメントで構成され、それぞれが6つのウイルス構造タンパク質 (VP) と 5つまた6つの非構造タンパク質 (NSP) をコードしています。RVAは、スパイクタンパク質VP4と糖タンパク質VP7 からなる外側キャプシド層を持つ、エンベロープのない三層ウイルス粒子構造を持っています。

16-06株は、細胞表面のシアル酸に結合することによって細胞に侵入するのに対し、MpR12株は、シアル酸非依存的に侵入することがわかりました。特に、その糖鎖結合特性は、16-06株は、ヒト型と動物型の両方のシアル酸、NeuAcとNeuGcを認識することが分かりました。

イネの葉圏細菌叢:野生種と栽培種間における葉圏細菌叢の違いについて

State Key Lab of Urban and Regional Ecology, Research Center for Eco-Environmental Sciences, Chinese Academy of Sciences, Beijing, Chinaらのグループは、イネの葉圏細菌叢における野生種と栽培種の間の違いについて報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36625666/

葉圏細菌叢において、Proteobacteria門が相対存在量の62.8%を占めており、Pantoeaが最も豊富な属 (42.7%) であり、続いてMethylobacterium (4.8%)、Pseudomonas (3.6%)、Acinetobacter (2.9%)、およびSerratia (2.1%)と続きます。Proteobacteria門以外では、Actinobacteriota門 (11.7%)、Firmicutes門 (8.5%)、および Bacteroidota門 (0.5%) が主要な葉圏細菌でありました。
真菌に関しては、主要なアンプリコンリードは、Nigrospora(13.2%)、Pyrenophora(13.1%)、Papiliotrema(12.5%)、およびPhaeosphaeria(4.5%)らの真菌属に分類されました。

バクテリアについては、Xanthomonas、Klebsiella、Sphingomonasが主に野生種に豊富に存在していました。一方、野生種で著しく豊富ないくつかのバクテリア、Methylobacterium、Xanthomonas、 Hymenobacter、Klebsiella、が存在しました。栽培種と比較して、Methylobacteriumは、野生種で最も豊富な属でした。野生種と比較して、PseudomonasとComamonasは栽培種で豊富に存在する細菌属でした。
真菌については、Khuskia、Acidomyces、および Pyrenophora は主に野生種に豊富に存在していましたが、主要な真菌分類群はいずれも野生種には多くは含まれていませんでした。ChaetomiumとRhodotorulaは栽培種で豊富に存在する真菌属でした。

イネの葉圏細菌叢の機能的なプロファイルの観点から眺めると、栽培種よりも野生種において、メタノール酸化 (+594%)、メチルトローフ (+460%)、尿素分解 (+430%)、および光合成関連(+345%)に関する高い機能ポテンシャルが予想されました。更に、栽培種においては、植物病原体 (+91%)、ヒト関連病原体 (+88%)、およびヒト病原体 (+88%) が有意に増加していることが分かりました。

腸内細菌シアリダーゼ活性とマウスの急性大腸炎には関係性がある

Institute of Physiology, University of Zurich, Zurich, Switzerlandらのグループは、腸内細菌のシアリダーゼ活性が高まるとマウスの急性大腸炎が悪化すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9780602/

腸内細菌叢は主にバクテロイデス門とファーミキューテス門で構成されていて、アクチノバクテリア、ベルコミクロビア、フソバクテリア、プロテオバクテリアのメンバーの存在割合は少なくなっています。腸内細菌叢は、人間の健康に重要な役割を果たし、必須栄養素を供給し、免疫システムの強化や、病原体から保護するのに役立ちます。また、腸内細菌叢は宿主の代謝にも関与しており、さまざまな慢性疾患にも影響を与えています。

腸内細菌は、オリゴ糖および多糖類を消化するために必要な炭水化物消化酵素の膨大なグループを含む多数の遺伝子を発現します。これらの酵素は、食物の炭水化物の消化に加えて、腸の表面を覆う厚い粘液層でも活性化されます。従って、細菌のこれら消化酵素による宿主糖鎖の切断は、細胞接着、輸送、更には活性化に関与する糖鎖構造も変化させる可能性があります。特にフコシル化およびシアリル化エピトープは、それぞれ白血球の輸送と活性化を調節するセレクチンやシグレックなどの内因性レクチンによって認識されます。

大腸炎発症時の腸内細菌叢の組成および宿主糖鎖に対する腸内細菌の炭水化物加水分解酵素活性の影響を調べるために、シアリダーゼ、フコシダーゼ、およびラムノシダーゼ消化酵素を発現する組換え大腸菌を急性大腸炎を発症したマウスに接種することにより、これら消化酵素の活性を人為的に高める実験が行われました。興味深いことに、フコシダーゼおよびラムノシダーゼ活性の増加は大腸炎の状態に特段の影響を与えませんでしたが、シアリダーゼ活性の増加は疾患の重症度を悪化させることが分かりました。

注目すべきは、シアリダーゼ、フコシダーゼ、およびラムノシダーゼ消化酵素を発現する組換え大腸菌を強制経口投与されたマウスにおいて、その腸内微生物叢の組成にほとんど変化が起こらなかったということです。その一方、腸内粘膜の糖鎖および結腸粘膜に常在ずる白血球上の糖鎖からは、PNA染色およびシグレックリガンド染色実験から、シアル酸が切断されていることが分かりました。

PNA staining in proximal colon

結論として、シアリダーゼ活性の増加によって引き起こされる表面糖鎖のシアル酸修飾のリモデリングが、免疫細胞の活性を変化させ、マウスの急性大腸炎の悪化を招いたと考えられます。

自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症したラットの前頭前野における糖鎖修飾の変化

College of Life Sciences, Shaanxi Normal University, Xi’an, Shaanxi, Chinaらのグループは、自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症したラットの前頭前野における糖鎖修飾の変化について、レクチンマイクロアレイを用いた評価結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9772556/

レクチンマイクロアレイを用いることで、次のような糖鎖修飾の変化がラットの前頭前野に起こっていることが示されました。
(1) 多分岐のハイマンノース構造がASDラットで増加する(ConAによって認識される)、
(2) 複合型二分岐アガラクト型のN‐型糖鎖がASDラットで増加する(GSL-IIによって認識される)、
(3) Siaα2-3 Gal/GalNAc(MAL-IとWGAによって認識される)とα‐GalNAc structure (BPLとVVAによって認識される)がASDラットで減少する。

野生小麦の根圏に存在する優れた善玉菌(シュードモナスとエンテロバクター)

UMR IPSiM, Université de Montpellier, Institut Agro, CNRS, Montpellier, Franceらのグループは、野生小麦の祖先の根圏から分離されたふたつの窒素固定能を持つ善玉菌について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9740669/

野生コムギの祖先の根圏からふたつの善玉菌、シュードモナス BPMP-PU-28 とエンテロバクター BPMP-EL-40、が分離されました。これらの菌株は、植物の成長に必要な土壌中の窒素の利用可能性が制限されている場合に、植物の成長を助けることが示されています。

これらの善玉菌から得られた培養上清は、以下に示すように、根尖部の根毛密度と長さに顕著な影響を与えていました(左がコントロール、右がシュードモナスの場合)。

これらのバクテリアからの分泌物には次のような特徴がありました。

AHL N-テトラデセノイル-L-ホモセリン ラクトン (TDHL) が、BPMP-PU-28 および BPMP-EL-40 からの分泌物として発見されています。 AHLは、細菌のクオラム・センシングと細菌のコミュニケーション・ネットワークに関与しており、植物の成長にプラスの効果をもたらし、植物受容体によって認識されることで、植物遺伝子発現の変更につながる可能性があります。

細菌の分泌物にはアミノ酸が検出されませんでしたが、幾つかの環状ペプチドが存在したことにも注意する必要があります。AHLとともに、環状ペプチドはクオラム・センシングに関与することが示されています。クオラム・センシングで役割を果たすことに加えて、環状ペプチドは、植物ホルモンの模倣物として機能することで、サリチル酸、エチレン、およびジャスモン酸シグナル伝達経路を昂進させます。

AHL と環状ペプチドに加えて、分泌物として同定された代謝産物の多くは、例えば抗生物質として作用作用したり(同定された代謝産物の約 18% が抗生物質効果を持つことが期待できます)、あるいは、栄養素の吸収を改善するという形で植物の成長促進に役割を果たす可能性もあります。

ヒトのDectin-1は、O-型糖鎖修飾を強く受けており、CLEC-2 のリガンドとしても機能する

九州大学医学部らのグループは、ヒトのDectin-1は、O-型糖鎖修飾を強く受けており、C-型レクチン受容体であるCLEC-2のリガンドとしても機能すると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36479973/

Dectin-1 は、病原体のβ-グルカンを認識する最も特徴的なC-型レクチン受容体(CLR)として知られています。本研究においては、Dectin-1が血小板に発現する別のCLRであるCLEC-2のリガンドである可能性があることが初めて発見されました。CLEC-2については、従来、その内因性リガンドであるポドプラニンをO-型糖鎖修飾依存的に認識することが知られていました

Dectin-1はムチン様タンパク質であり、その根元部分はシアリル core 1 (Galβ1-3GalNAc) またはシアリル core 3 (GlcNAcβ1-3GalNAc) らのO-型糖鎖修飾を強く受けています。この発見は、糖鎖修飾の際に個体発生を調節する生理学的リガンドとしても機能する自然免疫受容体の最初の例と考えられます。

小麦の根圏細菌叢:門レベルと属レベルの視点から

ICAR-Indian Institute of Wheat and Barley Research, Karnal, Haryana, Indiaらのグループは、幾つかの作付け法における小麦の根圏細菌叢の特徴について解析しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36445165/

本研究では、下記に示す6種の作付け法における小麦の根圏細菌叢を比較解析しています。
organic (Org),
timely sown (TS),
wheat after pulse crop (WAPC),
temperature-controlled phenotyping facility (TCPF),
maize-wheat cropping system (MW),
residue burnt field (Bur).

門レベルでの細菌叢の分析では、プロテオバクテリアの存在が際立っており、続いて放線菌、アシドバクテリア、ゲンマチモナデテス、およびバクテロイデスが全てにおいて大部分を占めています。属レベルでは、相対的な存在量は変化しており、特徴的なのは、バチルスとフラボバクテリウムの存在量が、それぞれTCPFとOrgで一番高く、ニトロスピラの存在量が、TS、MW、および WAPC で一番高くなっていました。

葉に病原菌が感染すると、根からの分泌物が変化し、善玉菌を呼び寄せる

State Key Laboratory for Conservation and Utilization of Bio-Resources in Yunnan, Yunnan Agricultural University, Kunming, Chinaらのグループは、葉に病原体が感染すると、根からの分泌物が変化し、善玉菌を呼び寄せる、と報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36445116/

サンシチニンジンの葉に薬用ニンジン斑点病菌が感染すると、根圏細菌叢が変化し、根圏土壌における土壌伝染性病原体(Ilyonectria destructans)を抑制し、善玉菌(Trichoderma、Bacillus、および Streptomyces を含む)らを呼び寄せることが示されました。これら善玉菌は、病原菌(I. destructans)に対する拮抗能力を示しただけでなく、薬用ニンジン斑点病菌に対する植物の抵抗性を高めました。


葉の感染が根からの代謝分泌物を変化させる(GC-MS解析)、Inoculatedは、薬用ニンジン斑点病菌を感染させたことを意味する

これって、まるで、ヒトの免疫反応で、炎症部からサイトカインやケモカインが分泌され、白血球などの免疫細胞を炎症部位に呼び寄せる状況にそっくりです。根からの分泌物の変化がサイトカインやケモカインの分泌に相当していて、善玉菌が骨髄細胞由来の免疫細胞という訳です。

SARS-CoV-2陽性となった鼻腔サンプルにおける特徴的な糖鎖構造について

GLYcoDiag, 2 Rue du Cristal, 45100 Orléans, Franceらのグループは、ARS-CoV-2陽性となった鼻腔サンプルにおける特徴的な糖鎖構造についてレクチンを用いて解析しています。
https://www.mdpi.com/2075-4418/12/11/2860

ブログ記事にする事を止めたSARS-CoV-2ですが、ま、良いでしょう(笑)。

GlycoDIAGのGLYcoPROFILE® テクノロジーを用いて、SARS-CoV-2 陽性サンプルと陰性サンプルの間の糖鎖の違いが明確に示されました。
BPAとPHA-Eは、SARS-CoV-2 陽性サンプルから対照群を識別することができ、その蛍光強度は 3000 前後またはそれ以上でした。BPAは GalNAc 含有糖鎖を認識し、PHA-Eは二分岐複合体N-型糖鎖を認識します。更に、WFA (LacdiNAc に結合)、GSL-II (アガラクトに結合)、PHA-L (多分岐複合体N-型糖鎖に結合) らのレクチンも、SARS-CoV-2 陽性を区別できることが示されています。なお、HHAは、ネガティブコントロールとなり得ると考えられました。

Powered by WordPress |Copyright © 2020 Emukk. All rights reserved