野生小麦の根圏に存在する優れた善玉菌(シュードモナスとエンテロバクター)

UMR IPSiM, Université de Montpellier, Institut Agro, CNRS, Montpellier, Franceらのグループは、野生小麦の祖先の根圏から分離されたふたつの窒素固定能を持つ善玉菌について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9740669/

野生コムギの祖先の根圏からふたつの善玉菌、シュードモナス BPMP-PU-28 とエンテロバクター BPMP-EL-40、が分離されました。これらの菌株は、植物の成長に必要な土壌中の窒素の利用可能性が制限されている場合に、植物の成長を助けることが示されています。

これらの善玉菌から得られた培養上清は、以下に示すように、根尖部の根毛密度と長さに顕著な影響を与えていました(左がコントロール、右がシュードモナスの場合)。

これらのバクテリアからの分泌物には次のような特徴がありました。

AHL N-テトラデセノイル-L-ホモセリン ラクトン (TDHL) が、BPMP-PU-28 および BPMP-EL-40 からの分泌物として発見されています。 AHLは、細菌のクオラム・センシングと細菌のコミュニケーション・ネットワークに関与しており、植物の成長にプラスの効果をもたらし、植物受容体によって認識されることで、植物遺伝子発現の変更につながる可能性があります。

細菌の分泌物にはアミノ酸が検出されませんでしたが、幾つかの環状ペプチドが存在したことにも注意する必要があります。AHLとともに、環状ペプチドはクオラム・センシングに関与することが示されています。クオラム・センシングで役割を果たすことに加えて、環状ペプチドは、植物ホルモンの模倣物として機能することで、サリチル酸、エチレン、およびジャスモン酸シグナル伝達経路を昂進させます。

AHL と環状ペプチドに加えて、分泌物として同定された代謝産物の多くは、例えば抗生物質として作用作用したり(同定された代謝産物の約 18% が抗生物質効果を持つことが期待できます)、あるいは、栄養素の吸収を改善するという形で植物の成長促進に役割を果たす可能性もあります。