新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検出におけるRT-PCRのサンプル前処理の簡略化:熱処理のみ

新型コロナウイルスの感染有無の検査には、RT-PCRがGold Standardとなっています。サンプルを鼻腔らより綿棒で取得し、前処理で核酸を抽出してからRT-PCRを実施するのですが、世界的な検査数の増加で試薬や消耗品が不足してきています。
この前処理工程を簡素化できないか、について研究した報告例があります。
https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0243266

結果として、20uL~40uLのサンプルを95℃~98℃にて、2~20分加熱処理するだけで、RT-PCRの良好な結果を得ることができたとのことです。
使用されたRT-PCRキットは、
ABI TaqMan fast Virus 1-Step RT-qPCR kit
Meridian Bioscience Fast 1-Step RT-qPCR kit
です。
但し、UTM Viral Transport COPANを使用してサンプルを回収した場合には、この方法では結果が出なかったということです。
試薬の組成が開示されていないこともあり原因は不明ですが、RT-PCR Kitに使われている試薬の組み合わせによっては、熱処理のみという簡略化前処理は使えない場合があるようです。

直腸癌とTn-抗原

福島県立医科大のグループから、直腸癌とTn-抗原に絡んで、直腸癌治療の力点に関する論文があります。
https://www.mdpi.com/1422-0067/21/23/9081

癌では、ゲノムやエピゲノムに変異の蓄積が進むのですが、直腸癌では、85%が染色体不安定性、15%がミスマッチ修復機構欠損(dMMR)から起きるマイクロサテライト不安定性由来となっています。
また、癌では糖鎖修飾にも異常が発生し、O-型糖鎖が刈り込まれて、Tn-抗原が高発現することも知られています。Tn-抗原は、マクロファージのMGLと結合し、IL-10の産生を促して免疫抑制的に作用するとともに、T-細胞のアポトーシスも誘導します。その結果として、癌細胞が免疫を回避するようになります。

ミスマッチ修復機構が欠損した癌細胞には、欠損していないものに比べてTn-抗原が有意に高発現しています。また、この種の癌細胞においては、CD8+ T-細胞の浸潤が少なく、免疫チェック機能分子であるPD-L1の発現も低いという傾向があります。従って、Tn-抗原が強いミスマッチ修復機能欠損した癌細胞に対しては、Tn-抗原をターゲットにした免疫治療や免疫チェック機能分子の阻害が有効であるかも知れないと結論しています。

新型コロナウイルス(COVID-19)におけるACE2阻害剤の使用がもたらす影響について、糖尿病がやばい

新型コロナウイルス(COVID-19)では、基礎疾患があると重症化を招きやすいことが知られており、例えば、急性腎疾患、糖尿病、免疫不全、閉塞性気道疾患では、Hazard Ratio (HR)が、下記のようになります。
急性腎疾患 (HR = 3.23, 95%CI: 2.01 to 5.19),
糖尿病 (HR = 2.07, 95%CI: 1.32 to 3.26),
免疫不全 (HR = 2.33, 95% CI: 1.29 to4.2),
閉塞性気道疾患(HR = 2.13, 95 %CI: 1.06 -4.3),

下記のグループは、SARS-CoV-2の主要な感染受容体がACE2であることから、ACE阻害剤を用いた場合の副作用について、617名の患者から得られたデータを元に統計解析をしています。
http://www.ijkd.org/index.php/ijkd/article/view/5920/1222

ACE2阻害剤の副作用は、特に糖尿病で深刻であり、(HR = 3.51, 95% CI: 1.59 to 7.75)と報告しています。
下図において、DM=Diabetes Mellitus、ACE=0はACE阻害剤無、ACE=1はACE阻害剤有を示しています。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)における感染経路としてCD147も疑われる

エンベロープを持つウイルスにおいては、宿主細胞の細胞膜表面に存在する受容体とエンベロープタンパク質の結合が感染をイニシエートします。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)においては、ACE2がその受容体になるということが一般的に認識されています。ACE2は、肝臓、肺、胃、腎臓、大腸らに発現していますが、肺におけるACE2の発現はむしろ少なく、COVID-19の重症化を鑑みれば、他の感染ルートが存在していることが疑われます。免疫細胞に広く発現しているC-型レクチンもその候補ではありますが、以下のグループは、CD147が感染経路になり得るということを示しています。
https://www.nature.com/articles/s41392-020-00426-x

CD147とS-タンパク質の相互作用は、SPR及びELISA法で検証され、VeroE6, BEAS-2B細胞を用いた実際の感染実験も行われています。
CD147を介した感染は、そのメカニズムとして細胞膜融合ではなく、エンドサイトーシスであるとのことです。

ディスポーザブルな新型コロナウイルス(COVID-19)用qPCRチップ

ディスポーザブルな新型コロナウイルス(COVID-19)用qPCRチップの試作例が、Imperial College Londonのグループから報告されています。もちろん、このチップは、他の感染症にも使えます。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19911-6

チップは、非常に簡単な構造で、Si基板の上に作り込まれています(チップのサイズは1cm角程度)。Si 4インチ基板で作成した場合のコストですが、約40円/チップということなので、確かにディスポーザブル可能でしょう。
チップの温調はSiに電流を流すことで行われ、検出はmethylene blue(MB)を酸化還元材として使用し電気化学的に行い、MBはDNAのインターカレーターにもなるので、DNAが増幅されると電流が変化することを利用しています。

新型コロナウイルス(COVID-19)において、肥満は危険です

Jinyun People’s Hospital, Chinaのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)と肥満との関係をレポートしています。
https://eurjmedres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40001-020-00464-9

12,591名のCOVID-19患者の統計的な解析により、新型コロナウイルスに感染し重症化したヒトのBMI(Body Mass Index)は、軽症者よりも高いことが示されました(MD(BMIの平均値差)2.48 kg/m2, 95% CI [2.00 to 2.96 kg/m2])。更に、COVID-19の病態において、肥満はより重症化を招きやすいことが示されました、例えば、ICU治療(OR = 1.57, 95% CI [1.18–2.09]、ECMO使用(OR = 2.13, 95% CI [1.10–4.14])。

ナイーブB細胞の過剰な浸潤が新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化のきっかけを作る

新型コロナウイルス(COVID-19)の患者では、CD4+/CD8+ T細胞、形質細胞、マクロファージらの過剰な肺組織への浸潤が共通して起こっており、これが肺組織へのダメージやその繊維化につながっていると理解されています。
National Defense Medical Center, Taipeiのグループは、この引き金になっているのがナイーブB細胞の過剰な浸潤であるとレポートしています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0242900

以下のようなメカニズムが考えられます。
COVID-19は、β2-インテグリンやα4β1インテグリンの活性化を介して、縦隔リンパ節へのナイーブB-細胞の蓄積やその活性化を引き起こします。SARS-CoV-2のS-タンパク質によって活性化されたナイーブB-細胞の過剰な浸潤により、多量のIgMが分泌され、液性免疫応答が活性化されます。これにより、多量の単球が肺組織にリクルートされ、マクロファージへと分化します。分泌されたIgMは同時に、補体システム、樹状細胞のFc受容体、そしてマクロファージを活性化し、SARS-CoV-2の抗原提示を増加させるとともに、食作用を強化します。加えて、SARS-CoV-2の抗原提示の増加は、IL-12依存の形質細胞の分化を通じて濾胞外反応を加速し、胚中心の形成とB-細胞の成熟を抑えてしまいます。

結論として、ナイーブB-細胞をターゲットとする治療法の重要性が提案されています。

新型コロナウイルス(COVID-19)において、IgM Memory B細胞の減少が重症化と相関している

新型コロナウイルス(COVID-19)において、一般的には、自然免疫と獲得免疫のアンバランスが重症化の引き金を引くのではないか?と考えられています。
Univ. of Pavia(イタリア)のグループは、IgM Memory B細胞の減少が重症化に関係していることを示唆しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-020-77945-8

IgM Memory B細胞は、健常者では、中央値=65.0/uL(IQR: 51.0 – 85.0/uL)であるのに対して、COVID-19患者では、中央値=5.9/uL(IQR: 2.1 – 13.9/uL)と大幅に減少しており、評価されたCOVID-19患者数は66名と少ないのですが、IgM Memory B細胞の減少は、重症化と相関していることも示されました。
年齢、性別らと、このIgM Memory B細胞の減少との間には相関は見られませんでした。

HCV感染に由来する肝細胞癌の糖鎖マーカーについて:Core FucoseとBisecting GlcNAc修飾を受けた二分岐N-型糖鎖が候補

HCV感染に由来する肝硬変を伴う肝細胞癌のバイオマーカーについての研究報告があります。
https://www.mdpi.com/1422-0067/21/23/8913

A2G1(6)FB(Core FucoseとBisecting GlcNAc修飾を受けた二分岐N-型糖鎖)が優れた糖鎖マーカーになると結論されています。

 

 

 

下図において、TNMはTumore-node-metastasisの略であり、TNM=1, TNM=2, TNM=3, TNM=4は、肝細胞癌のステージを表します。既存マーカーである、AFP, PIVKA-IIらとは、明確な相関を示さず、A2G1(6)FBのマーカーとしての優秀さが示されています。

新型コロナウイルス(COVID-19)とインフルエンザA/Bを判別できる良い指標がある

新型コロナウイルス(COVID-19)とインフルエンザの初期症状はよく似ています。
この二種の感染症を区別するには、RT-PCRや抗体検査しかないのでしょうか?

Sapienza Univ. of Romeのグループは、白血球の1種である単球の数値が両者の良い判別指標になると報告しています。
https://www.infezmed.it/media/journal/Vol_28_4_2020_9.pdf

単球の絶対数が0.35×10^3個/mL以上であると、COVID-19をインフルエンザA/Bと判別可能であるとしています。AUC=0.68(感度=0.992, 特異度=0.368)

このことは、COVID-19とインフルエンザA/Bでは、やはり免疫応答が異なっていることを強く示唆しています。

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