直腸癌とTn-抗原

福島県立医科大のグループから、直腸癌とTn-抗原に絡んで、直腸癌治療の力点に関する論文があります。
https://www.mdpi.com/1422-0067/21/23/9081

癌では、ゲノムやエピゲノムに変異の蓄積が進むのですが、直腸癌では、85%が染色体不安定性、15%がミスマッチ修復機構欠損(dMMR)から起きるマイクロサテライト不安定性由来となっています。
また、癌では糖鎖修飾にも異常が発生し、O-型糖鎖が刈り込まれて、Tn-抗原が高発現することも知られています。Tn-抗原は、マクロファージのMGLと結合し、IL-10の産生を促して免疫抑制的に作用するとともに、T-細胞のアポトーシスも誘導します。その結果として、癌細胞が免疫を回避するようになります。

ミスマッチ修復機構が欠損した癌細胞には、欠損していないものに比べてTn-抗原が有意に高発現しています。また、この種の癌細胞においては、CD8+ T-細胞の浸潤が少なく、免疫チェック機能分子であるPD-L1の発現も低いという傾向があります。従って、Tn-抗原が強いミスマッチ修復機能欠損した癌細胞に対しては、Tn-抗原をターゲットにした免疫治療や免疫チェック機能分子の阻害が有効であるかも知れないと結論しています。