子宮内膜がんで見られる血清タンパク質のN-型糖鎖修飾の変化について

Medical Research Center, State Key Laboratory of Complex Severe and Rare Diseases, Peking Union Medical College Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College, Beijing, Chinaらのグループは、子宮内膜がんで見られる血清タンパク質のN-型糖鎖修飾の変化について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10331720/

本論文では、子宮内膜がんの血清バイオマーカーを見つけるために、血清糖タンパク質のN-型糖鎖の修飾変化をMALDI-TOF-MSを用いて調べています。

結果として、次のような糖鎖修飾異常が見つかっています。
(1) ハイブリッド型糖鎖に対するハイマンノース型糖鎖の比率が、コントロールと比較して子宮内膜がんで大幅に増加、
(2) フコシル化が子宮内膜がんで大幅に減少、
(3) 二分岐および三分岐型糖鎖のシアリル化は、主にα2,6 結合グリカン種の増加により、コントロールよりも子宮内膜がんで大幅に増加。

骨格筋線維症においては、Gal-3+ マクロファージとオステオポンチンが高発現している

Department of Physiology and Biophysics, University of California Irvine, Irvine, CA, USAらのグループは、骨格筋繊維症においては、特徴的なマクロファージ集団が高発現していると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10328414/

マクロファージは自然免疫において中心的な役割を果たしており、組織の修復と細胞外マトリックスの再構築を調節することによって組織の恒常性に貢献しています。マクロファージには、M1 とM2の2種類があることが知られており、急性筋肉外傷では、炎症誘発性のM1マクロファージが最初に損傷した筋肉に浸潤して、細胞残骸を貪食し、筋幹細胞を活性化します。その後、M2マクロファージへ移行して、筋幹細胞の分化と炎症の解消が促進されます。

骨格筋線維症の場合、gal-3+ マクロファージが筋ジストロフィー中に慢性的に活性化されていることが分かりました。ジストロフィー筋の空間的なトランスクリプトーム解析により、ジストロフィー筋には、gal-3+ マクロファージと筋線維症に関連する遺伝子を発現している間質細胞が高発現しており、更には、gal-3+ マクロファージはジストロフィー性病変部に間質細胞と共局在し、オステオポンチンがこれらの細胞型間の情報伝達を仲介していることも分かりました。

糖鎖プロファイラー GlycoStation Reader 2300(GSR2300)は、わずか3個の細胞からその糖鎖プロファイルを取得することが可能

産総研)細胞分子工学研究部門)分子細胞マルチオミクス研究グループらは、エバネッセント波蛍光励起スキャナー(糖鎖プロファイラーとも呼ばれる)GSR2300の優れた高感度特性について報告しています。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00216-023-04824-2

本論文では、最新モデルであるGSR2300をmGSR1200-CMOSスキャナと呼び、旧モデルのGSR1200をmGSR1200 (CCD)スキャナと呼んでいます。

結果として、エバネッセント波蛍光励起スキャナーの最新モデルであるGSR2300は、高NAの等倍無限遠補正光学系とデジタルビニングモードを備えるハイエンドsCMOSイメージセンサーを搭載することで、旧モデルのGSR1200に比べて優れた性能を示すことが実証されています。

具体的には、GSR2300を用いることで、より高感度で、精度と再現性に優れた分析が可能になり、細胞や組織からの少量の精製糖タンパク質やクルードな状態のタンパク質に対して、より短いスキャン時間(最速=15秒)で信頼性の高い糖鎖プロファイルが得られます。特に、GSR2300の感度特性における直線性を維持できる下限はGSR1200のそれより少なくとも4倍低くなっており、この特性により、GSR2300はわずかに3個の細胞があれば、その糖鎖プロファイリングが可能であります。これによって、非常に小さな細胞集団間の糖鎖の不均一性や内部の糖鎖の発現状態を容易に検出できることが示されています。

世界最高性能のエバネッセント波蛍光励起スキャナー(糖鎖ロファイラー)が登場したと言っても過言ではありません。

多価のナノ・レクチンを用いてSARS-CoV-2を中和する

School of Chemistry and Astbury Centre for Structural Molecular Biology, University of Leeds, United Kingdomらのグループは、多価のナノ・レクチンを用いてSARS-CoV-2を中和する方法について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10302749/

SARS-CoV-2のスパイクタンパク質三量体は、各単量体サブユニット上に22個のN-型糖鎖の修飾部位があり、オリゴマンノース、ハイブリッド、複合型糖鎖らの構造が存在することが知られています。スパイクタンパク質エピトープの変異により、SARS-CoV-2変異体はワクチン接種等によって誘起される免疫反応を回避してしまいます。対照的に、SARS-CoV-2変異体における糖鎖修飾部位の変異は非常にまれであるため、糖鎖は抗ウイルス薬開発の強力な標的となる可能性があります。従って、レクチンがSARS-CoV-2変異株に対して潜在的に強力な抗ウイルス活性を示す可能性があると考えられます。

DC-SIGNの糖鎖認識部位(CRD)は、一価の低いアフィニティー(Kd-値: 0.1 ~ 3 mM)で、SARS-CoV-2を含むウイルス表面にあるマンノースおよびフコース含有糖鎖に特異的に結合することが知られています。レクチンである DC-SIGNのアフィニティーを高めるために、DC-SIGN CRDを金ナノ粒子(GNP)に多数結合させました。 13 nmサイズの金ナノ粒子(G13)を、H[AuCl4] のクエン酸還元によって合成し、まず初めに部分的にG13のPEG化を行いました。次に、これらのG13をリンカー標識されたDC-SIGN CRDとインキュベートし、多価のナノ・レクチンを得ました。

その結果、G13-DC-SIGN CRDは、初めての多価ナノ・レクチンとして、SARS-CoV-2変異体に対して幅広い活性を有することが示されました。

MannoseおよびMannanでコーティングされたフコイダン/キトサンのナノ粒子を用いてマクロファージを活性させる

LAQV, REQUIMTE, Departamento de Ciências Químicas, Faculdade de Farmácia, Universidade do Porto, Rua de Jorge Viterbo Ferreira, Porto, Portugalらのグループは、MannoseおよびMannanでコーティングされたフコイダン/キトサンのナノ粒子を用いてマクロファージを活性させる方法について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10298651/

マクロファージを活性化するために、マクロファージ表面に存在するマンノース受容体を、mannose (M) とmannan (Mn) を修飾した薬物を含まないフコイダン/キトサン (F/C) ナノ粒子によって刺激しました。ここで使用されている高分子電解質複合体ナノ粒子は、カチオン性キトサンとアニオン性フコイダンとの間のクーロン相互作用を通じて静電的に凝集させたものです。

マクロファージ上のCD11b発現は、LPSの曝露と同様に、mannanおよびmannoseでコーティングされた F/Cナノ粒子の存在下で強く昂進しており、それは、コントロール(NS)およびコーティングされていないF/C ナノ粒子の場合と比較して統計的に有意なものです。 従って、このような糖鎖でコーティングされたナノ粒子は、LPS 刺激で観察されたように、マクロファージの活性化を誘発することが確認されました。

このようにして、薬物を含まないポリマーナノ粒子の機能化を介してマクロファージ受容体を標的にすることは、免疫系を調節するための有望なアプローチであることが示されています。

統計的機械学習の一種であるボルツマンマシンを用いて糖鎖構造を推定する

Department of Physics, University of California, San Diegoらのグループは、ボルツマンマシンモデルを用いてレクチンパネルの情報から糖鎖構造を推定する方法について述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10274649/

本研究では、レクチンの糖鎖結合パターンから対象とする糖鎖構造を予測できるかどうかが議論されています。各レクチンには、それが特異的に結合する小さな糖鎖構造モチーフのセットがあります。レクチンには論理的に定式化される複雑な結合ルールがあるとは予想されていないため、浅いニューラル ネットワーク トポロジーが適切であると考えました。この相互作用を議論するための合理的な最小モデルは、2層ネットワークとして概念化できる完全に可視化されたボルツマンマシンであると考えられました。

正直言って精度は高くないです。それって糖鎖がとてもヘテロな集団だからということもありますし、レクチンの特異性が曖昧だからというのもありましょう。
この手のレクチンを使った糖鎖構造推定には、否定的な人が多く、MS/MS信奉者が非常に多いです。
しかし、この論文のディスカッションの文脈の中で、彼らが述べていることは、自分の考えと同じです。
「レクチンを用いた情報は生物学的な文脈においては十分正確である!」

T-細胞上のPD-1の茎領域にO-型糖鎖修飾が存在する

Translational Research Unit, Chulabhorn Research Institute, Bangkok, Thailandらのグループは、PD-1のO-型糖鎖修飾の存在について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-023-36203-3#Abs1

T-細胞に発現するPD-1のT153、S157、S159、およびT168 の茎領域が、core-1 およびcore-2ベースの構造を持つシアリルO-型糖鎖によって修飾されていることが分かりました。
これらの糖鎖修飾が存在することの最も顕著な意味というのは、O-型糖鎖と茎領域のペプチド骨格の間の立体相互作用によって、PD-1のロッド状構造の形成を促し、細胞表面上でその受容体を細胞外へ長く伸ばすことであると推測されました。

変形性関節症(OA)で見られる特徴的な糖鎖修飾変化について

Laboratory for Functional Glycomics, College of Life Sciences, Northwest University, Xi’an, Chinaらのグループは、変形性関節症(OA)で見られる特徴的な糖鎖修飾変化について報告しています。
https://arthritis-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13075-023-03084-w

変形性関節症 (OA) に関連する異常な糖鎖修飾と修飾部位特異的な糖鎖修飾の不均一性を、レクチンマイクロアレイとLC-MS/MSを用いて評価しています。
高レベルのα-1,3/6 フコシル化および低レベルのハイマンノース型N-型糖鎖を含む異常な糖鎖修飾が変形性関節症の軟骨で観察されました。

変形性関節症軟骨の新しい特徴として、フィブロネクチン(FN1)およびアグリカンコアタンパク質(ACAN)上の糖鎖修飾の不均一性が明らかにされました。これらのタンパク質は主に細胞外領域および細胞外空間に局在しているものです。
具体的には、Fibronectin(FN1)-N528はN4H5S2がほぼ消失し、N4H4F1S1が大幅に増加、
アグリカンコアタンパク質(ACAN)-N333 に関しては、N5H8F1 はほぼ消失し、N6H4S1、N4H3F1、N5H3F1、N2H5、N6H4 が大幅に増加、
そして、アグリカンコアタンパク質(ACAN)-N658に関しては、N5H4F1S2、N6H6F1、N6H7、N7H6 がほぼ消失し、N2H11 が大幅に増加していました。

早産児を壊死性腸炎から守るには母乳がとても効果的

USDA Children’s Nutrition Research Center, Department of Pediatrics, Baylor College of Medicine, Houston, TX 77030, USAらのグループは、プレバイオティクスとプロバイオティクスだけでは、粉ミルクだけをベースにした食事で壊死性腸炎から早産児を守るのに十分ではないと報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10255242/

壊死性腸炎は、早産児の胃腸疾患による主な死因であり、死亡率は15~40%に達します。本研究では、腸内細菌として、(1)Escherichia-Shigellaは、健康な子豚に有意に多く存在し、疾患の重症度と負の相関があり、(2)Clostridium sensu stricto 1 and Enterococcusは、病気の子豚の結腸に有意に多く存在し、疾患の重症度と相関していることが示されています(下図参照)。

食事性プロバイオティクスであるBifidobacterium longum 亜種およびミルクオリゴ糖であるシアリルラクトース(3’SL)の補給だけでは改善効果は認められませんでしたが、母乳は壊死性腸炎の発生率を有意に減少させることが示されています。

一型糖尿病の合併症における補体C3の特異的な糖鎖修飾変化について

Faculty of Pharmacy and Biochemistry, University of Zagreb, Zagreb, Croatiaらのグループは、一型糖尿病の合併症における補体C3の特異的な糖鎖修飾変化(c3.Asn939-N2H10)について報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2023.1101154/full

補体成分C3のN-型糖鎖修飾について、様々な合併症重症度を持つ189人の一型糖尿病被験者のプロファイリングを実施しました。分析は、Con A レクチンによるハイ・マンノース糖タンパク質のエンリッチメント、Glu-C 消化、糖ペプチド精製を行い、nano LC-ESI-MSを用いて行われました。

結果として、アルブミン尿と網膜症では ひとつの糖鎖構造(C3.Asn939-N2H10:下図参照)のみが有意に変化し、C3.Asn939-N2H10とHbA1cの間には強い相関関係があることも分かりました。

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