Galectin-9 が SARS-CoV-2 の増殖と炎症を助長する

Department of Laboratory Medicine, University of California, San Francisco, CA, USAらのグループは、Gal-9がSARS-CoV-2の感染を増強すると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35378763/

Gal-9は、SARS-CoV-2ウイルスの細胞表面への付着を増強し、ACE2依存的な細胞への侵入を促進することにより、ヒト気道上皮細胞(AEC)におけるSARS-CoV-2感染と複製を促進することが示されました。Gal-9が宿主組織上の受容体と病原体表面とを糖鎖修飾依存的に架橋することがその背景に考えられます。

臨床的に言えば、Gal-9活性に拮抗する低分子および抗Gal-9モノクローナル抗体(LYT-200など)は、COVID-19の治療にで有用である可能性が示されたことになります。

ACE2非依存で、SARS-CoV-2がマクロファージに感染する:CD169/Siglec-1(I-型レクチン)を媒介するSARS-CoV-2のマクロファージへの直接感染機構

Department of Microbiology, Boston University School of Medicine, Boston, MA, USAらのグループは、CD169/Siglec-1、骨髄細胞特異的なI-型レクチン、がマクロファージへのSARS-CoV-2のACE2非依存性の感染を可能にしていると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35378756/

血中を巡回する単球、マクロファージ、および組織に存在する肺胞マクロファージらは、SARS-CoV-2の感染受容体であるACE2を基本的に発現していません。これらの細胞には、しかしながら、低レベルのTMPRSS2、および中レベルのエンドソームカテプシンらのSARS-CoV-2感染に必要なプロテアーゼが発現しています。一方、CD169/Siglec-1(I-型レクチン)は、脾臓の赤脾髄、濾胞周囲マクロファージ、被膜下洞マクロファージ、肺胞マクロファージで高度に発現していまし、CD169の発現は、特にI型インターフェロン(IFN)に応答して、炎症性条件下で末梢血単球で発現昂進される可能性があることも知られています。

この研究では、骨髄細胞特異的受容体CD169/Siglec-1を発現する2つの異なるヒトマクロファージモデル、PMA分化THP1細胞(THP1/PMA)と単球由来マクロファージ(MDM)を使用して、ACE2の存在下または非存在下で、マクロファージがSARS-CoV-2感染の炎症誘発に関わるメカニズムについて調べています。

SARS-CoV-2 Spike NTDを標的とする抗体による前処理や、E64Dによるエンドソームカテプシンの阻害は、CD169+マクロファージにおけるSARS-CoV-2 Spikeレンチウイルスの感染を著しく弱めましたが、TMPRSS2阻害剤(カモスタット)は全く効果がなく、SARS-CoV-2 Spike が、ACE2欠損単球由来マクロファージ(MDM)に対して、エンドソームを介して感染していることが示されました。また、CD169を発現するTHP1細胞は、THP1/ACE2細胞で観察されたレベルに匹敵するSARS-CoV-2 Spikeの結合を示しました。

興味深いことに、CD169を発現するTHP1/PMA細胞は、SARS-CoV-2感染後、低レベルのウイルスdsRNA産生しか示さず、感染の過程でもそれは有意に増加しませんでした。しかしながら、炎症性サイトカインである、IL-6、TNFα、IL-1β、およびIL-18の産生は、感染したCD169+ THP1/PMAマクロファージで有意に上昇し、初期のウイルスRNAの産生が自然免疫活性化の重要なトリガーとなること分かります、言い換えれば、マクロファージへのSARS-CoV-2の感染が炎症誘発性反応を誘発し、最終的にサイトカインストームに繋がる可能性があると考えられました。

SARS-CoV-2は、感染初期過程で細胞膜上のα-(2,6)-sialic acidsに結合する: ミルクオリゴ糖 2-6-sialyl-lactose (6′SL)が結合を阻害する

Department of Chemistry, University of California, Davis, Davis, CA, USAらのグループは、SARS-CoV-2の宿主細胞膜への結合は、末端にα-(2,6)-sialic acidsを持つシアロ糖鎖に媒介されると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8964299/

ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を、SARS-CoV-2をHepG2細胞にアプライする前に、SARS-CoV-2のRBDとHMOをプレインキュベートすることにより、RBDをブロックできるかどうかがテストされました。蛍光標識されたRBDを2′-FL、LNnT、および6′-SLと別々にプレインキュベートし、次に宿主細胞HepG2と相互作用させました。蛍光シグナル強度の定量化は、HMOがおそらくSARS-CoV-2自体の挙動を反映して、細胞へのRBDの結合をブロックしたことを示しています。 RBDは、2’FL(統計的に有意ではない)によってわずかにブロックされ、LNnT(有意)によってさらにブロックされ、6’SLによって最もブロックされました。 LNnTと6’SLの比較は、後者の方がより効果的(有意)であることを示示しています。

このデータは、HMOがSARS-CoV-2の宿主細胞への接着に影響を与える「おとり」として機能する可能性があることを示唆しています。

NeuGcシアル酸に特異的なインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを作ることが出来る

Department of Chemical Biology & Drug Discovery, Utrecht Institute for Pharmaceutical Sciences, Utrecht University, Utrecht, the Netherlandsらのグループは、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンの糖鎖結合特性を幾つかの変異を導入することでNeuAcからNeuGcに変更できるとしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35044215/

A型インフルエンザウイルス(IAV)は、細胞表面の末端シアル酸を持つ糖鎖に結合することによって感染を開始します。 IAVの宿主は、シアル酸の2つの主要な形態、N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)とN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を様々に発現しています。NeuGcは、NeuAcのヒドロキシル化を促進してNeuGcに変換する酵素「CMP-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)」の活性型を発現する種にのみ発現します。 CMAHをコードする遺伝子は、主に哺乳類の種で発現していますが、進化中にCMAHが部分的または完全に失われた結果として、ヒト、フェレット、ヨーロッパの犬、鳥類では、NeuGcは発現していません。

ヘマグルチニンのNeuGc結合特異性を、次のような手法で実現することが出来ています。
(1) A135EとI130Vの変異を導入、或いはT189AとK193Rの変異を導入(A/Chicken/Jalisco/12283/2012 H7N3株のヘマグルチニン)、

(2) S128T、I130V、A135E、T189A、K193Rの5種の変異を導入(A/Turkey/Italy/214845/02 H7N3株のヘマグルチニン)、そして

(3) A135E、D189A、K193Rの3種の変異を導入、或いはS128T、I130V、A135E、D189A、K193Rの5種の変異を導入(A/Duck/Australia/341/1983 H15N8株のヘマグルチニン)。

ループス腎炎の新規バイオマーカー、尿中のgalectin-3 binding protein (G3BP)

Department of Rheumatology, Shanghai Institute of Rheumatology, Renji Hospital, School of Medicine, Shanghai Jiao Tong University School of Medicine, Chinaらのグループは、尿中のGalectin-3 binding protein (uG3BP) がループス腎炎(LN)の新規バイオマーカーと成り得ると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8962213/

uG3BPのレベルが、非活動性LN患者(p <0.001)、慢性腎臓病(CKD)患者(p = 0.01)、および健常人(p <0.001)と比較して、活動性LN患者で有意に増加していました。 ROC分析の結果、uG3PBの活動性LNのCKD患者、非活動性LN、更に健常人に対する識別能力は、それぞれ、AUC=0.7、AUC=0.76、AUC=0.87となりました。 uG3BPレベルは、R&D Systems(Minneapolis, MN, USA)のhGalectin-3BP/MAC-2BP ELISAキット(DY2226)を使用し、ELISAアッセイによって尿サンプルで測定されました。すべての尿サンプルは1:30に希釈されました。 uG3BPレベルは、尿中クレアチニンレベルによって正規化されました。尿中クレアチニンレベルは、同じサンプルを使用してクレアチニンパラメーターアッセイキット(KGE005)、R&D​​ Systems(Minneapolis, MN, USA)で測定されました。

Neu5Gcに特異的なレクチン(SubB2M)を用いて乳癌を極めて高い感度と特異度で検出できる

Institute for Glycomics, Griffith University, Gold Coast campus, Southport, QLD 4222 Australiaらのグループは、血清Neu5Gcバイオマーカーが乳癌の早期発見に対する強力な武器になると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8962556/

α2–3結合Neu5Gcを認識する新しいレクチンが、志賀毒素を産生する大腸菌(STEC)サブチラーゼ細胞毒素(SubAB)のBサブユニットから作られました。このレクチンの糖鎖結合特異性ををα2–3結合Neu5Gcからα2–3とα2–6の両方のNeu5Gc結合を含むように改変し、SubB2Mと名付けられました。SubBA12と名付けられた非シアル酸結合性分子も、Ser12をAla12に置き換えることで開発されました。このSer残基の変異によって、シアル酸のC1カルボキシレート基との相互作用が消失し、SubBA12変異体はシアリル糖鎖に結合できなくなります。

SPRバイオセンサーを使用して乳癌患者と健常人の血清Neu5Gcレベルが測定されました。
SubB2M固定化センサーチップのSPRシグナルからSubBA12固定化センサーチップのSPRシグナルを差し引くことにより、非特異的結合の効果が排除されました。
その結果、血清Neu5Gcレベルは、高い特異性(100%)と感度(98.96%)で、乳癌患者と健常人を明確に区別できることが示されました。

麦わら戻し効果:根圏のフサリウムなどの病原菌を抑える

Key Laboratory of Plant Immunity, Department of Plant Pathology, Nanjing Agricultural University, Nanjing 210095, Chinaらのグループは、麦わらを土壌に戻すと病原菌を抑えることが出来ると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8951542/

麦わら戻し、つまり小麦の茎を細かく砕いたものを、小麦-大豆輪作システムで、土壌表面に直接加え戻しました。 しかし、この麦わら戻しが作物の根圏細菌叢にどのように影響するかについては従来ほとんど知られていませんでした。根圏細菌叢は、畑の土壌の細菌叢よりも植物の健康に密接に関連しています。

本研究では、麦わら戻しによるバクテリアの相対的な存在量に有意な変化は見られませんでしたが、興味深いことに、真菌では有意に変化していました。
具体的には、幾つかの植物病原体関連真菌属、例えば、フザリウム、およびアルテルナリア、の相対的な存在量は、麦わら戻し後に減少し、アクレモニウム、ミコスフェレラ、ピレノケトプシス、ピレノフォラ、トリコデルマ、およびフェオスフェリアの相対的な存在量は増加していました。これら後者の真菌属は、セルロース分解活性に関連していることが知られています。


ここで、「U」と「D」は、相対存在量がそれぞれ大幅に増加および減少したことを意味します。BS=土壌、RS=根の表面に近い根圏土壌、RP=根の表面、およびES=根の内部。