ACE2非依存で、SARS-CoV-2がマクロファージに感染する:CD169/Siglec-1(I-型レクチン)を媒介するSARS-CoV-2のマクロファージへの直接感染機構

Department of Microbiology, Boston University School of Medicine, Boston, MA, USAらのグループは、CD169/Siglec-1、骨髄細胞特異的なI-型レクチン、がマクロファージへのSARS-CoV-2のACE2非依存性の感染を可能にしていると報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35378756/

血中を巡回する単球、マクロファージ、および組織に存在する肺胞マクロファージらは、SARS-CoV-2の感染受容体であるACE2を基本的に発現していません。これらの細胞には、しかしながら、低レベルのTMPRSS2、および中レベルのエンドソームカテプシンらのSARS-CoV-2感染に必要なプロテアーゼが発現しています。一方、CD169/Siglec-1(I-型レクチン)は、脾臓の赤脾髄、濾胞周囲マクロファージ、被膜下洞マクロファージ、肺胞マクロファージで高度に発現していまし、CD169の発現は、特にI型インターフェロン(IFN)に応答して、炎症性条件下で末梢血単球で発現昂進される可能性があることも知られています。

この研究では、骨髄細胞特異的受容体CD169/Siglec-1を発現する2つの異なるヒトマクロファージモデル、PMA分化THP1細胞(THP1/PMA)と単球由来マクロファージ(MDM)を使用して、ACE2の存在下または非存在下で、マクロファージがSARS-CoV-2感染の炎症誘発に関わるメカニズムについて調べています。

SARS-CoV-2 Spike NTDを標的とする抗体による前処理や、E64Dによるエンドソームカテプシンの阻害は、CD169+マクロファージにおけるSARS-CoV-2 Spikeレンチウイルスの感染を著しく弱めましたが、TMPRSS2阻害剤(カモスタット)は全く効果がなく、SARS-CoV-2 Spike が、ACE2欠損単球由来マクロファージ(MDM)に対して、エンドソームを介して感染していることが示されました。また、CD169を発現するTHP1細胞は、THP1/ACE2細胞で観察されたレベルに匹敵するSARS-CoV-2 Spikeの結合を示しました。

興味深いことに、CD169を発現するTHP1/PMA細胞は、SARS-CoV-2感染後、低レベルのウイルスdsRNA産生しか示さず、感染の過程でもそれは有意に増加しませんでした。しかしながら、炎症性サイトカインである、IL-6、TNFα、IL-1β、およびIL-18の産生は、感染したCD169+ THP1/PMAマクロファージで有意に上昇し、初期のウイルスRNAの産生が自然免疫活性化の重要なトリガーとなること分かります、言い換えれば、マクロファージへのSARS-CoV-2の感染が炎症誘発性反応を誘発し、最終的にサイトカインストームに繋がる可能性があると考えられました。