HCV感染に由来する肝細胞癌の糖鎖マーカーについて:Core FucoseとBisecting GlcNAc修飾を受けた二分岐N-型糖鎖が候補

HCV感染に由来する肝硬変を伴う肝細胞癌のバイオマーカーについての研究報告があります。
https://www.mdpi.com/1422-0067/21/23/8913

A2G1(6)FB(Core FucoseとBisecting GlcNAc修飾を受けた二分岐N-型糖鎖)が優れた糖鎖マーカーになると結論されています。

 

 

 

下図において、TNMはTumore-node-metastasisの略であり、TNM=1, TNM=2, TNM=3, TNM=4は、肝細胞癌のステージを表します。既存マーカーである、AFP, PIVKA-IIらとは、明確な相関を示さず、A2G1(6)FBのマーカーとしての優秀さが示されています。

新型コロナウイルス(COVID-19)とインフルエンザA/Bを判別できる良い指標がある

新型コロナウイルス(COVID-19)とインフルエンザの初期症状はよく似ています。
この二種の感染症を区別するには、RT-PCRや抗体検査しかないのでしょうか?

Sapienza Univ. of Romeのグループは、白血球の1種である単球の数値が両者の良い判別指標になると報告しています。
https://www.infezmed.it/media/journal/Vol_28_4_2020_9.pdf

単球の絶対数が0.35×10^3個/mL以上であると、COVID-19をインフルエンザA/Bと判別可能であるとしています。AUC=0.68(感度=0.992, 特異度=0.368)

このことは、COVID-19とインフルエンザA/Bでは、やはり免疫応答が異なっていることを強く示唆しています。

新型コロナウイルス(COVID-19)からの回復やウイルスの完全排除には、S-タンパク質或いはそのRBDに特異的なIgGが鍵となる

武漢における1850人の新型コロナウイルス(COVID-19)患者から、SARS-CoV-2に対するIgGの動的変化を調査しました。もしもIgGの産生量が少ないと、回復後(退院後)のウイルス完全排除に問題があり、RT-PCRによるSARS-CoV-2ウイルス検査で再陽性になる可能性があると指摘されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19943-y

IgGの動的変化について、以下のようなことが示されています。

  • 軽症者の場合に比べて、重症者の場合は、IgGの産生が1週間近く遅れる傾向がある。
  • 重症者の場合は、IgGの産生レベルは顕著に高くなり、高齢者の場合においても、IgGの産生レベルは高くなる傾向にある。
  • 退院時にIgGの産生レベルが低い患者の場合には、SARS-CoV-2のRT-PCR再検査で陽性となる場合があり、注意する必要がある。

新型コロナウイルス(COVID-19)の死亡率と関連した免疫関連のバイオマーカーを同定

新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化においては、サイトカインストームが発生しているということが定説となっており、血中サイトカイン濃度の変化については多くの研究例が存在しています。
その中でも特質すべき幾つかの研究には、既に本ブログ記事の中でも紹介していますが、

本稿においては、イタリアにおけるCOVID-19の患者から得られた結果を紹介します。
https://insight.jci.org/articles/view/144455

臨床的なパラメーターとしては、好中球/リンパ球比、LDH、CRP、そしてD-dimerらの上昇が死亡率と相関していることが示されています。

血中のサイトカインについては、66種類が網羅され、その中でも、MCP-1/CCL2, sTNFRSF1A, MMP-9, NGAL, S100A9, sST2, IL-10, IL-15がCOVID-19の重症化に深く関係しているという事が示唆されています。
因みに、
MCP-1/CCP, sTNFRSF1Aは、NK-kB依存のマーカー、
MMP-9, NGAL, S100A9は、好中球由来、
sST2は、敗血症マーカー、
IL-15は、NK-細胞の活性化と機能に関連、
IL-10は、重度の肺炎の反作用、
として議論されています。

重症化のメカニズムが具体的に判明するに従って、有効な治療薬が絞られていくことでしょう。

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、65歳以上で重症化が顕著であることから、免疫賦活栄養剤の役割が今更ながら着目される

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、ワクチンの安全性・有効性の確認にはまだ時間がかかること、重症化を食い止める有効な治療薬がないことなどから、今更ながら免疫賦活栄養剤が着目されます。特に、65歳以上の高齢ではCOVID-19の重症化率が高くなることから、栄養免疫学研究の重要性と緊急性が上がっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7211076/

COVID-19の致死率は年齢とともに上昇しますが、50~59歳で0.2%、60~69歳で0.4%、70~79歳で1.3%、80歳以上では3.6%となっているようです。

免疫賦活栄養剤として、特に着目されるのが、ビタミンC、ビタミンD、そして亜鉛です。それぞれの免疫賦活に関する知見を以下に示します。

ビタミンCの役割
ビタミンCは、肺炎の治療において有効であることが確認されています。ビタミンCは、免疫機能を担う白血球の一つである好中球の活性維持や増強に関与しているため、免疫機能を高め、ウイルスに対する抵抗力を高める効果があります。潜在的なメカニズムの観点から、感染症が酸化ストレスを増加させることはよく認識されています。感染症は通常、酸化剤である活性酸素を放出する食細胞を活性化します。ビタミンCは、これらの影響を打ち消すことができる有名な抗酸化物質となります。

ビタミンDの役割
ビタミンDの受容体は多くの免疫細胞に発現しており、ビタミンDは、肝臓で25(OH)D3に変換され、免疫細胞の働きで1,25(OH)2D3という活性形に変換されます。ビタミンDが欠乏すると、ウイルス急性呼吸器感染症のリスクが高くなり、ビタミンD代謝物は、インターフェロンIFN-γ、CXCL8、CXCL10らケモカイン、IL-6など炎症性サイトカイン、細胞壊死因子TNF-αの発現および分泌を変調することが知られています。

亜鉛の役割
亜鉛が欠乏すると、CD4+, CD8+ T-細胞の減少を伴った胸腺の萎縮、末梢血リンパ球数の減少、ヘルパーT-細胞からのサイトカイン産生の減少、NK細胞の細胞障害活性の低下、好中球細胞外トラップ(病原体に結合するネットワーク)の形成阻害など、細胞性免疫の機能低下が発生することが知られています。

新型コロナウイルス(COVID-19)の死亡率を下げるには、IL-10が重要なターゲットになり得るかも知れない

新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化とは、非常に重い肺炎と多臓器不全にあります。これは、SARS-CoV-2ウイルス感染の結果として誘発されるサイトカインストームの結果であるとされています。サイトカインストームを抑えるために。IL-6, IL-1, GM-CSFらサイトカインの阻害剤が検討されていますが、死亡率を下げるには更なる改善が必要とされています。
下記のグループは、これに加えてIL-10の重要性を見直すべきではないか?という論調を出しています。
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S1471-4906%2820%2930256-8

IL-10というサイトカインは、一般的には抗炎症性サイトカインとして認識されています。しかし、IL-10の機能と言うのは多面的で、メラノーマ、腎細胞癌、肺非小細胞癌らの治療において、IL-10がしばしば炎症性サイトカインとして作用する例が報告されています。COVID-19においては、ウイルスに感染し重症化が進むについれて、各種サイトカインの中でもIL-6とIL-10が非常に高発現し、重症化を予測するための共変量となっています。
感染初期の段階では、IL-10は炎症の進展に伴うバランサーとしての抗炎症性サイトカインとして機能しているのかも知れませんが、重症化が進んだ時には炎症性サイトカインとして機能している可能性があります。その為、投与時期はクリティカルですが、IL-10の阻害剤をIL-6らの阻害剤と合わせて投与することが有効かも知れないとしています。

実証はこれからの作業になります。

欧州における新型コロナウイルスの第三波には、SARS-CoV-2のS-タンパク質にA20.EU1という変異が入っている

新型コロナウイルス(COVID-19)の第二波の感染拡大の背後には、SARS-CoV-2のS-タンパク質におけるD614Gという変異が関係しているという報告があります。D614Gの変異が入ったことで、ACE2に対するRBDのopen配位の確率が上昇し、感染率を押し上げたとされています。
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31229-0

新型コロナウイルスは、現在第三波に入ったと言って良い状況ですが、この感染拡大においては、S-タンパク質のNTDにA222Vという変異が追加されているという報告があります。この変異が第三波の感染拡大の直接的な原因になっているかどうかについては、まだ不明です。また、フランスでは、同じくS-タンパク質のNTDにS477Nの変異が入った株の割合が高いとのことです。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.25.20219063v1

新型コロナウイルス(COVID-19)に見られる小児多臓器系炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children)は、SARS-CoV-2のS-タンパク質に存在する細菌性スーパー抗原が関与している

SARS-CoV-2に感染した小児での川崎病に似た炎症性疾患が報告されており、WHOは この疾患を「小児多臓器系炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children:MIS-C)」と名付けています。
この疾患の原因について考察した研究成果があり、その中で、MIS-Cは、毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome:TSS)とよく似た症状を示し、細菌性スーパー抗原の存在をほのめかしています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.11.09.372169v1

MIS-Cの重症度及びサイトカインストームとT-細胞受容体のβ-可変領域遺伝子(T-cell Receptor Beta variable gene: TRBV)11-2の展開が強く相関していることが確認されました。このTRBV11-2を含むT-細胞受容体とMHCIIがSARS-CoV-2のS-タンパク質に存在する細菌性スーパー抗原様の構造(polybasic insert PRRA周辺のE661からR685にかけての領域)と強く結合した複合体を作ることを分子動力学的に確認しています。このことによって、T-細胞を非特異的に多数を活性化させ、多量のサイトカインが放出されることになると考えられます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると多くの免疫抑制受容体が影響を受けている

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると、多くの免疫抑制受容体が影響を受けているらしいというレポートがあります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33200082/

SARS-CoV-1, Influenza A virus, Respiratory syncytial virusに比べて、SARS-CoV-2では、以下の免疫抑制受容体の発現が大きく昂進しています。
CEACAM1
SIGLECS
LILRB3
LILRB4
LILRB5
CLEAC12A
これらの阻害剤もCOVID-19の治療薬候補になり得ると締めくくっています。

日本における新型コロナウイルス(COVID-19)の第一波と第二波の違いについて

日本における新型コロナウイルスの第一波と第二波の違いについて調査した結果があります。
https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(20)30693-9/fulltext

第一波は、2020年4月にピークを迎え、第二波は同年8月にピークを迎えています。第二波では、D614Gの変異により感染力が上がったと言われていますが、重症化率は下がっていることが如実に示されています。但し、第二波では、第一波に比べて若年層の感染者が多いということもあり、それが重症化率を下げている原因になっている可能性もあります。

 

 

 

 

既に、現在は第三波に入っていると言われており、更にどのような変化が感染力や重症化に起こっているのかが注目されます。