HIVのエンベロープタンパク質の糖鎖(N262)と感染力および中和抗体との関係について

HIVは、SARS-CoV-2と同じようにエンベロープタンパク質を持つウイルスであり、そのタンパク質の構造や糖鎖修飾については、数多くの研究報告があります。HIVのエンベロープタンパク質は、gp160と呼ばれ、二つのサブユニット, gp41とgp120, からなります。HIVの感染は、gp120がT細胞のCD4受容体に結合することで開始されます。gp120には、27個のN型糖鎖修飾部位があり、強くハイマンノース型の糖鎖修飾を受けていることが知られています。

Univ. of Alabama at Birminghamのグループは、gp120の糖鎖が感染力および中和抗体に与える影響について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33205023/

結果として、N262糖鎖修飾がある場合に、感染力が7~9倍増加することが確認されました。
また、HIVの中和抗体に対しては、N262糖鎖修飾があると中和能力が減少することが分かりました。
特にPGT151, 35022, 2G12, VRC24, PG16, PGT145では、中和能力が大きく減少することが示されました。

本論では、分子動力学モデルを使いながら、これら変化の背景にあるメカニズムを議論しています。