SARS-CoV-2の宿主感染防御機構としての気道ムチンの存在

Division of Infectious Diseases and Vaccinology, School of Public Health, University of California, Berkeley, CA, USAらのグループは、SARS-CoV-2感染に対する主要な抗ウイルス経路について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41588-022-01131-x

最近の機能喪失 (LOF) スクリーニング法を、SARS-CoV-2感染における宿主因子要件の探索に使用しました。この研究では、非上皮細胞株または内因的にACE2およびTMPRSS2を発現しない細胞株のいずれかで、宿主遺伝子ノックアウトアプローチが採用されます。このLOF スクリーニングは、プロウイルス遺伝子の同定には強力です。一方で、機能獲得 (GOF) スクリーニングを用いれば、アップレギュレーション時にウイルス制限を媒介する抗ウイルス因子を同定できます。従って、双方向の方法でスクリーニングを実行すると、バイモーダルな役割を持つ宿主経路を明らかにすることが出来、ウイルス依存性と宿主指向の創薬開発に対する潜在的な創薬ターゲットをに対するより包括的な描像を描き出すことができます。

このようにして、本スクリーニング結果から、Gタンパク質共役受容体 (GPCR) シグナル伝達、転写調節 (TAF7L、FOXE1、ZNF275、TEAD3、SPDEF、JDP2)、細胞周期調節 (CCNE1)、およびムチン修飾 (MUC1、MUC4、MUC13、MUC21、 B3GNT8) が、主要な抗ウイルス経路であることが示されました。

様々なSARS-CoV-2臨床分離株の感染に対する膜固定型ムチンの影響を判断するために、MUC1 および MUC4 GOF Calu-3 系統にアルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、デルタ変異株、および WA/1 野生株を感染させました。 MUC1またはMUC4のいずれかの過剰発現は、NTGコントロールと比較して、これらSARS-CoV-2変異株のウイルス複製を制限することが分かりました。更に、ムチン選択的プロテアーゼ (StcE) 処理とそれに続くこれらの同じ変異株の感染実感において、Calu-3細胞はウイルス感染に対して有意に弱くになりました。これらのデータは、膜固定ムチンが、SARS-CoV-2変異株の感染を抑制することを示しています。

チョレイマイタケの菌根から取得した植物成長促進細菌の効果について

School of Pharmaceutical Sciences, Peking University, Beijing, Chinaらのグループは、チョレイマイタケ から分離された菌根細菌に関して報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9340266/

真菌性病原体は、フサリウム萎凋病などの一連の深刻な植物病害を引き起こし、農業生態系におけるほとんどの病害の原因となっています。
これらの病気に対処するためには、主に二つの方法があります。
(1)病気に強い植物を開発すること、そして
(2)化学的な殺菌剤を使用して病原体の拡散を制御すること、であります。
しかし、これらの二つの方法には、長い開発期間を要するという問題と、病原体がやがては薬剤耐性を持つようになるといった欠点があります。従って、植物病原性真菌病に対処するための実用的かつ持続可能な戦略というのは、生物学的防除剤の開発と適用であろうと考えられます。

このような観点で、従来より、植物や菌類から幾つかの細菌が分離されており、そのほとんどはバチルス属とシュードモナス属に属していて、これらの属が十分な植物成長促進効果と顕著な生物防除力の可能性を示すことが実証されて来ています。

本論文においては、チョレイマイタケの菌根サンプルから21種類の根圏細菌株が分離され、有害な殺菌剤の過剰使用を必要としない農業の持続可能性という観点と、IAA、シデロフォアなどの産生やリン酸塩の可溶化という植物成長促進能力の観点の両面からその有効性が評価されました。

分離された菌株の中で、シュードモナス ZL8 株が植物生長促進細菌として最も高い性能を示すことが示されました。ZL8 株の発酵液から19種類の化合物が同定され、その内 2,4-ジアセチルフロログルシノール (DAPG) が、植物病原性真菌に対して 3.12 ~ 25 μg/mL の最小阻害濃度で有意な阻害効果を示しました。また、シソ科植物の丹参を用いて植物生育促進能力を評価したところ、以下のように顕著な効果があることが確認されました。

ここで、Fo. は、Fusarium oxysporumを意味します

緑茶のカテキン(没食子酸エピガロカテキン)がコロナウイルスの付着を阻害する

Department of Biomedical and Molecular Sciences, Queen’s University, Canadaのグループは、緑茶カテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)は、コロナウイルス一般(CoVs)に対する付着阻害剤である可能性があると報告しています
https://www.nature.com/articles/s41598-022-17088-0

本研究においては、ヒトの季節性および高病原性コロナウイルスの侵入に対するEGCGの阻害活性が評価され、その特徴付けが行われています。ここにおいて、EGCGが、広範囲のコロナウイルスが生理学的に関連するヒト肺上皮細胞へのコロナウイルスの侵入を阻害することが実証されました。更に、EGCGは、複数のヒトコロナウイルスの細胞表面への結合を阻害し、この天然産物が、細胞表面ヘパラン硫酸への一次付着など、コロナウイルスの付着という高度に保存されたステップを阻害することを示唆しています。
SARS-CoV-2に焦点を当てると、EGCGは、ヘパラン硫酸の構造類似体であるヘパリンへのウイルス付着を競合的に阻害することが示されました。これらの発見は、コロナウイルスに対するEGCGの抗ウイルスメカニズムの我々の理解をさらにサポートし、潜在的な将来の新型コロナウイルスを含む多様なコロナウイルスによる感染を防ぐための改良された抗ウイルス分子の開発に際し、高度に保存された抗ウイルス標的を特定するものです。

ワイルドライス(イネ科マコモ属の植物)の根圏から抽出した植物成長促進細菌について

Northeast Institute of Geography and Agroecology, Chinese Academy of Sciences, Chinaらのグループは、ワイルドライス(イネ科マコモ属の植物)の根圏から抽出した植物成長促進細菌について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9324538/

お米は世界の食用作物において重要な位置を占めており、人口の約 50% がお米を主食として生活しています。ワイルドライスは、栽培イネにとって重要な改良資源であり、生物的および非生物的ストレスに対する抵抗性の独特の能力は、多くの学者の注目を集めています。

ワイルドライスの根圏からスクリーニングした細菌株の機能を調べた結果、イネいもち病に対して良好な抑制効果を示す細菌株が18株、リン可溶性、カリウム可溶性、窒素固定能を有する細菌株が33株見つかりました。鉢植え実験では、499G2 (Peribacillus simplex)、499G3 (Bacillus velezensis)、および 499G4 (Nacillus megaterium) の3つの細菌株がイネいもち病抵抗性に加えて、栽培イネの生育にプラスの効果をもたらしました(下図参照)。

, CKはコントロール

がん特異的なHigh mannose型糖鎖を認識するレクチン-Fc融合タンパク質(すなわち、レクティボディ)は、がん治療における有用な治療薬となる

Department of Pharmacology and Toxicology, University of Louisville School of Medicine, KY, USAらのグループは、がん特異的なHigh mannose型糖鎖を認識するレクチン-Fc融合タンパク質(すなわち、レクティボディ)は、がん治療において有用な薬剤となり得ると報告しています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pbi.13902

Avaren-Fc (AvFc) は、ニコチアナ ベンサミアナ(植物のタバコ)で産生されるレクチン-Fc 融合タンパク質 (すなわち、レクティボディ) であり、がん関連のHigh mannose型糖鎖を選択的に認識します。AvFcの糖鎖改変体 (AvFcΔXF) は、コアα1,3-フコースおよびβ1,2-キシロース残基を含む植物に特有な糖鎖を除去したものとして開発されました。これらの糖鎖の除去が成功したことは、HPLCを使用した糖鎖分析によって確認されました。

本研究においては、AvFcΔXF が in vitro でより強力なADCC応答を誘導し、in vivoでの癌転移モデルと同様に側腹部腫瘍モデルの両方でマウスB16F10メラノーマの成長を遅らせることが実証され、High mannose型糖鎖が癌治療における有用な創薬ターゲットのバイオマーカーとなる可能性を示唆しています。

ここで、AvFcΔlec は、糖鎖結合特異性を欠く変異体を意味します

コーヒーの葉からの抽出物がSARS-CoV-2に対する優れた感染阻害剤となる

Graduate Institute of Biomedical Sciences, China Medical University, Taichung, Taiwanらのグループは、コーヒーの葉からの抽出物は、SARS-CoV-2の5つの変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびオミクロン株)が宿主細胞に侵入するのを効果的に抑制したと報告しています。
https://www.ijbs.com/v18p4677.htm

下図のように、100μg/mlのコーヒーの葉からの抽出物は、5つの変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびオミクロン株)から作られた偽ウイルスSARS-CoV-2の感染に対して有意な抑制効果を示しました。

コーヒーの葉の抽出物中には、カフェイン、CGA、キナ酸、マンギフェリンを含む4つの主要な化合物が同定されました。 ACE2 TR-FRETアッセイを使用して、スパイク-ACE2相互作用の阻害効果を評価したところ、4つの主要な化合物にを用いた処理がSpike-ACE2の活性を阻害する可能性があることが実証されました。化合物の性質上、マンギフェリンとCGAはDMSOに可溶であり、カフェインとキナ酸は水溶性です。