新型コロナウイルス(COVID-19)においては、IL-10とIgGが逆相関している

Univ. of Virginia Health Systemのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)における、IgG, IgA, IgMの発現について、興味深い報告をしています。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.12.05.20244541v1

IgG, IgM, IgAは、重症化するほど高発現する。
IL-10とIgGが逆相関する
という結果を得ています。

 

 

 

 

 

IL-10というサイトカインは、通常抗炎症性サイトカインであると考えられており、
IL-10とIgGが逆相関する、
しかもIgGは重症化するほど高発現しているということは、
IL-10が炎症性サイトカインとして働いていることを示唆してはいないでしょうか?

ムール貝から抽出したR型レクチン”Sevil”は、asialo-GM1に強く結合する

リシンB鎖に由来するレクチンをR型レクチンと総称します。
植物毒素であるリシンはガラクトース特異的ですが、リシン様構造は生物分布が極めて広く、ガラクトース以外にもシアル酸、マンノース、キシロースなど多様な特異性をもちます。
ムール貝から抽出されたR型レクチン”Sevil”と命名は、asialo-GM1構造に特に強く結合するとのことです。
横浜市立大のグループより
https://www.nature.com/articles/s41598-020-78926-7

新型コロナウイルスの感染を押さえる低分子化合物(Protoporphyrin IX (PpIX), Verteporfin):SARS-CoV-2のACE2への結合を阻害

Fudan Univ.のグループは、FDA承認の医薬品である低分子化合物(Protoporphyrin IX (PpIX), Verteporfin)が効果的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染を押さえることをin vitroではありますが示しました。
これら化合物がACE2に結合し、SARS-CoV-2のACE2への結合を阻害するからです。

in vivoでの臨床試験が期待されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095927320307283?via%3Dihub

慢性的なHBVでは、樹状細胞のC-型レクチン受容体の発現量に変化が起こっている

樹状細胞(DC)は免役反応の最前線にいます。
ウイルス等の病原体が侵入すると、DCに発現しているトール様受容体(TLR)、C-型レクチン受容体(CLR)らが、病原体特有の分子構造を認識し、免疫反応の引き金を引きます。
樹状細胞のCLRとしては、DCIR/CD367/CLEC4A, DECTIN1/CD369/CLEC7A, DECTIN2/CLEC6A, DNGR1/CD370/CLEC9A, MMR/CD206, DEC205/CD205, DC-SIGN/CD209, langerin/CD207, BDCA2/CD303/CLEC4Cらが知られています。
これらレクチンの機能については、まだまだ不明点が多いのですが、例えば、
DCIRは、high mannose/fucose系の糖鎖に結合し、IL12やTNFαの分泌に抑制的に働き、DECTIN1は、β-1,3-glucansを認識し、逆にそれら炎症性サイトカインの分泌を促します。

Univ. Grenoble Alpesのグループは、慢性化したHBVにおいて、各種CLRの発現がどのように変化しているかについて、Flow cytometryを用いて行われた実験結果を元に考察を加えています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cti2.1208

DCには、CD1c/BDCA1 (cDC2s), CD141/BDCA3 (cDC1s), plasmacytoid DCs (pDCs)という三つのサブクラスが存在します。

    血中cDC2s:DECTIN1, MMRが減少
    肝臓内cDC2s:DCIR, MMRが減少
    血中cDC1s:DECTIN1, CLEC9Aが減少、FcɣRIIAが若干増加、
    肝臓内cDC1s:DCIR, CLEC9A, Fcɣ受容体, MMRが減少、DECTIN1が若干増加
    血中pCDs:ほとんど変化はない
    肝臓内pCDs:DCIRが増加、Fcε受容体が若干増加

というような変化が起こっています。

非常に変化は複雑ですが、HBVに慢性的に感染することで、DCのCLRの発現量に変化が起こっているという現象は注目に値すると思われます。
全般的には、CLRの発現が減少しているようであり、それによって、HBVが免疫系の攻撃から逃れやすくなっているのではないでしょうか?

アルツハイマー病の新規エクソソームマーカーを発見

産総研と京大のグループは、アルツハイマー病のマーカーとして、高性能な新規エクソソームマーカーを発見しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33345458/

アルツハイマー病の患者では、健常者に比べてエクソソームの糖鎖修飾に大きな違いがあり、強くハイマンノース修飾を受けていることを発見しました。
そこで、ハイマンノース特異的なレクチンを用いて、レクチンブロッティングを行った結果、80kDa付近に非常に強いバンドが見つかり、それがCD61(エキソソームのマーカー)であることが分かりました。

Tim4(T cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 4)とエクソソームの各種CDマーカー(CD61, CD41, CD63, and CD9)に対する抗体でサンドイッチアッセイを組んだところ、Tim4-αCD63が最も高い判別能力を示し、AUC=0.957が得られたとのことです。

新型コロナウイルス(COVID-19)に対するスタチンの効果

コレステロールを下げる治療薬としてスタチンは広く使われています。
ウイルスの感染においては、その感染のプロセスにおいて細胞膜に存在する脂質ラフトが介在するため、コレステロールやスフィンゴ脂質の変化がウイルスの感染に影響を及ぼすであろうことは十分に推察されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0306987720333430?via%3Dihub

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、重症化のHazard Ratio(HR)がスタチンの投与で大きく減少することが分かりました。
HR=0.70 (95% CI: 0.53 – 0.94)

一方、インフルエンザでもスタチンの効果は認められており、
オッズ比(OR)=0.72 (95% CI: 0.38 – 1.33)
というデータが報告されています。

しかし、スタチンが宿主細胞へのウイルス感染を押さえているのか?それともウイルスの複製を押さえているのか?を明確にするためには、更なる研究が必要です。

英国で大流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株(B.1.1.7)における遺伝子変異の様子

現在、英国で大流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(B.1.1.7)における遺伝子変異についてのレポートが出ています。
https://virological.org/t/preliminary-genomic-characterisation-of-an-emergent-sars-cov-2-lineage-in-the-uk-defined-by-a-novel-set-of-spike-mutations/563

14個の非同義置換、6個の同義置換、3個の欠失が発生しており、かなり大規模な変異が発生しているようです。

新型コロナウイルス(COVID-19)に対する経口投与可能なFc-融合イベルメクチン含有ナノ粒子治療薬

抗寄生虫薬であるイベルメクチンが、抗ウイルス作用を持つことが分かっています。その作用機序については、インポーチンらの核輸送タンパク質を阻害することで、ウイルスタンパク質の核内への輸送が阻止されるからだと考えられています。
イベルメクチンそのものには毒性があり、EC50は、1~10mMであります。イベルメクチンを体内に150ug/kgのドーズで投与した場合の血中濃度は9~75ng/mLにしかすぎず、イベルメクチンの薬効を発揮させるには濃度が低すぎます。
そこで、下記のグループは、イベルメクチン(IVM)を内包するナノ粒子(NPs)を用い、経口投与での腸内での吸収率を上げる為、ナノ粒子にFcを融合させることで、腸上皮細胞に発現しているFcRn受容体を介した腸吸収を可能にした治療薬(経口投与可能なFc-融合イベルメクチン含有ナノ粒子:T-Fc-IVM-NPs)の効果を検証しました。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsptsci.0c00179

現段階では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を感染させたHEK293を用いたin vitroでの実験ではありますが、T-Fc-IVM-NPsを投与することで、ACE2の発現およびS-タンパク質の発現が抑えられたとのことです。また、この方法は他のウイルスに対しても効果が期待できるとしています。

良いですね。

新型コロナウイルス(COVID-19)の重症化にはマクロファージが大きく関わっている

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、気管支肺胞洗浄液中に多量のマクロファージが存在することから、重症化に大きくマクロファージが関わっていることが示唆されています。マクロファージは、単なる食細胞ではなく、数多くのサブセットを持っており、それぞれに特有な機能があることが分かってきています。
下記のグループは、マクロファージにおける転写因子(MAFBとMAF)がCOVID-19の重症化に大きく関わっていることを報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.603507/full

転写因子であるMAFBは病原性の繊維化促進性のSPP1+マクロファージのサブセットを昂進し、転写因子MAFは炎症性のFCN1+マクロファージサブセットを抑制する機能があります。COVID-19が重症化すると、MAFB/MAF比が大きくなっていることが分かりました。即ち、肺組織の炎症を加速し、同時に繊維化も加速される方向にマクロファージのサブセット群が制御されているということです。
従って、COVID-19の治療に際しては、MAFBを沈黙させ、MAFを過剰に発現させるように誘導することが有効であると結論しています。

COVID-19症例報告から重症期におけるMP (methyl-prednisolone 1000mg for three days) パルス療法の有効性

ブログ管理人はお医者さんではないのですが、以下の症例報告は、新型コロナウイルス(COVID-19)に罹って重症化してしまった時には役に立つかもしれません。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213007120305323?via%3Dihub

一般的に、炎症を抑えるためにステロイド剤は良く使われますが、長期に使用すると副作用が大きく、COVID-19ではウイルスの排除が遅くなるという副作用があります。
しかし、COVID-19が重症化した後期に、MP (methyl-prednisolone)を高濃度で短期間(1000mg、三日間)にパルス療法を行うと非常に効果的であったという4件の症例報告がありました。
全員が回復して退院しています。

ご家族に伝えておくと良いかもですね。