前立腺がんにおけるPSMAの特異的な糖鎖修飾

Leroy T. Canoles Jr. Cancer Research Center, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Virginia 23507, USAらのグループは、転移性前立腺がんの前立腺特異的膜抗原(PSMA)のN-型糖鎖修飾位置毎の糖鎖修飾の違いについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9435049/

葉酸加水分解酵素 1 (FOLH1) またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼ 2 としても知られる前立腺特異的膜抗原 (PSMA) は、従来の生化学的方法を使用して組織および体液中の前立腺がんバイオマーカーとして以前より研究されてきましたが、結果はばらついていました。このタンパク質は、前立腺上皮、固形腫瘍の新血管系全般、および腎近位尿細管、十二指腸、および神経系の神経節を含むいくつかの健康な組織では、少量の発現にとどまりますが、前立腺がんでは、PSMA の存在量は疾患の重症度とともに増加し、正常組織と比較して、疾患の進行した転移性のそれでは、最大100 倍高い存在量が観察されています。

本研究においては、ふたつの前立腺がん細胞株、LNCaP 細胞、(CRL-1740) および MDAPCa2b (ATCC CRL-2422) を使用して、PSMA のN-型糖鎖修飾位置毎の特異的糖鎖修飾構造の特徴付けが比較されています。異なる表現型を持つふたつの細胞株 LNCaP と MDAPCa2b では、幾つかの糖鎖修飾の発現に有意差があり(下図参照)、更には、LNCaP 細胞と比較して MDAPCa2b で識別される糖鎖修飾が有意に高いことが実証されました。
これらの情報は、将来的に前立腺がんの進行度を把握する為のPSMAのN-型糖鎖修飾位置毎の特異的糖鎖修飾を用いた予後マーカー開発の基礎になるやも知れません。