根圏細菌叢という複雑系の特徴をどのように抽出し、効率よく根圏細菌叢を制御するか?

自己組織化する複雑系に対しては、主成分解析のように多項目を組み合わせた特徴抽出とそのクラスタリング解析手法が良く使われます。逆に言えば、それしか身近に良い解析方法論がないということです。自己組織化する複雑系では、全体の性質はしばしば構成要素についての知識だけでは理解も予測もできないことがあり、システムの構成要素間の相互作用が新しい構造と機能を生み出し、その新しい構造や機能が大きなスケールで出現するようになります。
根圏細菌叢にしても、善玉菌がある閾値を超えると、日和見菌が味方になって相乗効果が顕著に出現する、みたいなこともあり得ると思います。逆も真で、悪玉菌がある閾値を超えると一気に植物が死んでしまう。

そういう根圏細菌叢という複雑系の特徴抽出(即ちパターン認識)をどうやって現場(農場)で行うのかということが問題です。研究現場では、根圏細菌叢の網羅的16S rRNAリード解析と、得られるビッグデータを駆使したコンピュータ解析から、そこにひそむ目に見えないパターンをあばき出して可視化する、こういう手法もあるとは思います。しかし、そんな手法が現場で使えるでしょうか?こういう仕事は論文の世界に留まると思います。研究者しか使えない技術は世の中に広がりません。誰でもが簡単に使える技術でないと最終的には事業として成功しません。誰でもが使えるという事は、安い技術でなければなりませんし、即座に結果が得られるものでなくてはなりません。

根圏細菌として代表的な善玉菌と言われているものには、バチルス、シュードモナス、ストレプトマイセス、アルスロバクターらがあり、エンテロバクターやバルクホルデリアも善玉でしょう。
そのような代表的な善玉細菌と悪玉細菌の細菌分類を下記に書き出します。
まずは善玉菌、
アクチノバクテリア門→アクチノバクテリア網→ストレプトマイセス目→ストレプトマイセス科→ストレプトマイセス属(善玉)
プロテオバクテリア門→γ-プロテオバクテリア網→シュードモナス目→シュードモナス科→シュードモナス属(典型的善玉)
プロテオバクテリア門→γ-プロテオバクテリア網→エンテロバクター目→エンテロバクター科→エンテロバクター属(善玉)
プロテオバクテリア門→β-プロテオバクテリア網→バルクホルデリア目→バルクホルデリア科→バルクホルデリア属(善玉)
ファーミキューテス門→バチルス網→バチルス目→バチルス科→バチルス属(典型的善玉)
アクチノバクテリア門→アクチノバクテリア網→アクチノバクテリア目→マイクロコッカス科→アルスロバクター属(善玉)
そして悪玉菌、
アスコミコタ門→フンタマカビ網→ボタンタケ目→アカツブタケ科→フサリウム属(典型的悪玉)

してみると、アクチノバクテリア門、プロテオバクテリア門、ファーミキューテス門を捕まえられれば、根圏の大きな傾向が把握できそうに思われます。
因みに、プロテオバクテリア門はグラム陰性細菌であり、アクチノバクテリア門、ファーミキューテス門はグラム陽性細菌です。