COVID-19による腎機能障害に対して、uNGALが優れたマーカーとなる

Department of Medicine, Columbia University, New York, USAらのグループは、COVID-19において、尿中好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(uNGAL)が、組織病理学的損傷(AKI)、腎機能障害(AKI)、そしてCOVID-19患者の重症度と定量的に相関していると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8497954/

注意すべきは、COVID-19の患者は、2.6倍AKIを発症する可能性が高く(35.2% vs. 13.6%, P<0.0001)、3.9倍AKIが持続してしまう可能性が高く(17.5% vs. 4.5%, P<0.0001)、1.8倍腎機能障害が重症化してしまう可能性がある(Acute Kidney Injury Network (AKIN) stages 2-3, 12.5% vs. 6.8%, P<0.01)ということです。このように、腎機能障害というのは、COVID-19感染に共通する特徴なのですが、血中クレアチニン(SCr)は、このような腎機能障害に対してはあまり感度の良いマーカーとは言えません。

例えば、SCrは、診断のカットオフ値に達するまで十分な時間をかけて蓄積された後、過去に遡って腎機能障害を検出することしかできません。 加えて、限局的な腎組織へのダメージでは、SCrには顕著な影響は起こらない可能性があります。SCrの値が上昇したことが顕著な場合でも、尿細管損傷の証拠は、COVID-19の患者で良く見られる下痢によって尿の量が少なくなっているような場合、欠けているかも知れませんし、SCrの上昇は、クレアチニン産生を促すCOVID-19における横紋筋融解症の発生によっても乱されてしまいます。

そこで、著者らは、uNGALと尿中KIM-1 (uKIM-1) がマーカーとして使用できないかについて、コロンビア大学の救急科におけるニューヨークのCOVID-19パンデミックのピーク(March-April 2020)時の444名のコホートデータを使用して検討しました。

結果として、uKIM-1ではなく、uNGALが腎機能障害の重症度と非常に良く相関していることが分かりました(下図参照)。uNGALのレベルは、AKINのステージと共に階段状に上昇しています(P<0.0001)。同様にuRGALのROCカーブもAKINのステージと共に上昇しています(0.70-0.93)。uNGALは、カットオフ値を15ng/mLとした時に、感度=80%、特異度=75% でAKINステージ2や3を診断することができました。