植物の生長を促すには、善玉菌の接種という考え方よりも、根圏細菌叢の多様性が基本的に重要である:シュードモナス菌とトマト

Nanjing Agricultural University, Weigang, Nanjing, Chinaらのグループは、根圏微生物の善玉菌効果は、その土壌接種によって直接的に発揮されるというよりも、根圏常在菌叢の多様性をもたらすことによって間接的にドライブされると述べています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34641724/

根圏細菌に由来する多様な機能を発揮させる一つの方法は、善玉菌を土壌に直接接種する方法であります。これまでに長い時間をかけて、植物に有利な機能を持つ根圏細菌が選別されてきました、例えば、植物に必要とされる栄養素の可溶化、窒素の固定、病原菌の阻害、などです。しかしながら、善玉菌を土壌に接種しても、常在菌との細菌叢の中において機能を発揮するに必要な濃度を維持できなくなることで、そのような善玉菌効果は周知の如く不安定です。さらに、微生物生理学における固有のトレードオフ問題により、ひとつの微生物種または菌株が植物に提供できる機能の発現は制限されてしまうようです。

従って、善玉菌効果が、根圏細菌の接種によって直接的に発揮されるのか、それとも根圏常在菌叢の変化によって発揮されるのか、ということをきちんと理解することが非常に重要です。

本研究においては、最大8種類の異なったシュードモナス菌を土壌への接種株として使用し、トマトを用いて植物成長促進効果を評価しています。

接種するシュードモナスの菌種を増やすほど、接種した細菌の定着は良くなり、栄養素の吸収、病原菌の抑制、そして植物の生長促進をもたらしていました。決定的なのは、シュードモナス菌の接種が根圏常在菌叢に変化を引き起こし、これらの効果が増強されたということです。これは、接種するシュードモナス菌の種類が多いほど顕著になり、それによって、根圏細菌叢の希少種が増加し、細菌叢における生物多様性が生まれていたのです。in vitroで予見されているシュードモナス菌の善玉菌機能は、個々の植物の成長特性を十分に予測できないことが分かりました。唯一の注目すべき例外は、シュードモナス菌のリン酸可溶化能力と植物の新芽のリン含有量との間の正の相関でした。代わりに、植物成長へのプラスの効果は、植物ホルモンの生産と根圏細菌による資源競争に関連した、接種したシュードモナス菌によって媒介される根圏常在菌叢の変化によって最もよく説明されました。