血中のC-マンノシル・トリプトファン(CMW)が、卵巣がんの優れた診断マーカーになり得る

和歌山県立医科大学らのグループは、C-マンノシル・トリプトファンの診断領域での応用について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6924205/

C-マンノシル・トリプトファン(CMW)は、ヒトの尿から最初に単離されたグリコシル化アミノ酸であり、α-マンノースがC-C結合を介してトリプトファン残基のインドールC2炭素に結合している独特の糖鎖構造を持っています。 CMWは、翻訳後修飾としてヒトリボヌクレアーゼ2(RNase2)でも同定されました。

医療分野では、2型糖尿病に関連する腎疾患を含む腎機能障害のある患者で血中CMWが上昇することが最初に報告されています。癌生物学では、R-スポンジン2のC-マンノシル化が様々なヒト腫瘍細胞におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達および遊走活性を活性化することが最近報告されました。この研究は、R-スポンジン2のC-マンノシル化が癌の進行の促進に関与していることを示唆しました。更に、C-マンノシル化の基質タンパク質であるスポンジン2(ミンディン)は、卵巣がん患者の血液中で増加していました。これらの研究は、プロテインC-マンノシル化とCMWが癌進行の病態生理学的プロセスに関与している可能性があることを示唆しています。

本研究においては、卵巣がんの血中CMWが、健常者と比較して、ボーダーおよび良性腫瘍群よりも悪性腫瘍群で有意に高くなってることが示されました。血中CMWのROC分析では、悪性腫瘍をボーダー/良性腫瘍から明確に区別できました(AUC = 0.905)。診断性能は従来のマーカーであるCA125(AUC = 0.835)より優れており、CMW + CA125の組み合わせでは、更に優れた診断能力が得られました(AUC = 0.913、感度=81.8%、特異度=87.5%)

なお、サンプル中のCMWは、液クロ法によって分析および定量化されました。サンプルをUPLCシステムに注入し、蛍光を測定することでCMWが定量されました(285nmでの励起/ 350 nmでの発光)。