コメの根圏:シュードモナス・クロロラフィスは、コメの免疫防御を活性化するようだ

International Centre for Genetic Engineering and Biotechnology, Trieste, Italyらのグループは、コメの根圏におけるシュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)の接種の影響について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8309335/

植物成長促進根圏バクテリア(PGPR)の中で、シュードモナス・クロロラフィス(P. chlororaphis)に属する株が、単子葉植物、双子葉植物、野生植物、栽培植物を含んで多様な植物と共生関係を作っています。P. chlororaphis は、現在、次の四種に分類されています、即ち、chlororaphis、aureofaciens、aurantiaca、pisciumであります。 P. chlororaphis は、植物プロバイオティクスとしての応用が注目されており、根圏バクテリアとして、走化性、運動性、バイオフィルム形成、リン可溶化、aminocyclopropane-1-carboxylic acid (ACC)デアミダーゼ、Indole-3-acetic acid (IAA)生産と制御など、植物に有利なフェノタイプが存在します。

P. chlororaphis は、異なった抗カビ材である Prn (pyrrolnitrin)、PCN (phenazine-1-carboxamide)、PCA (phenazine-1-carboxylic acid)、2-OH-PHZ (2-hydroxyphenazine)、HPR (2-hexyl-5-propyl-alkylresorcinol) 、HCN (hydrogen cyanide)らを生産します。これらの分子は、フサリウム菌 やその他菌類、植物炭疽病菌、疫病菌、フハイカビ、菌核病菌、イモチ病菌、リゾクトニア菌などのような植物病原菌の成長を阻害し、植物の健康を守ります。

P. chlororaphis の植物成長に対する影響を調査するために、幾つかの表現型パラメータが評価されました、例えば、クロロフィル、フラボノイド、窒素バランス指標などです。加えて、P. chlororaphis接種後90日目の植物の背丈、根の総量なども評価されました。 結果は、コントロールとP. chlororaphisを接種した植物の間で、殆ど何も統計的な有意差は観測されませんでした。ただ、窒素バランス指標の上昇傾向やフラボノイドの低下傾向は、P. chlororaphis接種した植物で見られました。結果として、本試験の環境下では、P. chlororaphisの接種は、植物に対して実質的な利益は何もないようだとの結論になりました。

しかしながら、P. chlororaphisの接種によって、植物の免疫力が強化されるという可能性があることは示されました。
P. chlororaphisを接種された植物では、接種後28日目において、多様なストレス応答性ジンクフィンガータンパク質をコードするOsISAP1遺伝子の発現が上昇しており、これは植物の免疫防御システムが活性化されたことを示すものだからです。