SARS-CoV-2 オミクロン変異株に特異的なO-型糖鎖修飾が見られた:GalNAcGal(NeuAc)2 at Thr376

Department of Chemistry, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI 53706, USAのグループは、SARS-CoV-2 オミクロン変異株に特異的なO-型糖鎖修飾について報告しています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.02.09.479776v2.full

HEK293細胞で発現させたSARS-CoV-2 WT(WA1 / 2020)、デルタ変異株(T478K)、およびオミクロン変異株(BA.1)のS-RBDタンパク質を、フーリエ変換イオンサイクロトロン(FTICR)-MS、およびトラップトイオンモビリティスペクトロメトリー(TIMS)-MSで分析しました。S-RBDタンパク質の配列とO-型糖鎖修飾を解明するために、PNGase F酵素処理を使用してS-RBDタンパク質からN-型糖鎖を除去し、N-型糖鎖の不均一性による干渉を最小限に抑えました。

S-RBDのO-型糖鎖修飾の詳細なトップダウンMS/MS分析により、オミクロン変異株に特有の新しいO-型糖鎖(Thr376)の存在が明らかになりました。興味深いことに、WTおよびデルタ変異株で検出されたすべてのS-RBD O-型糖鎖は、ほぼ間違いなくThr323のみであります。オミクロンと比較してデルタ変異株における突然変異の数が少ないことを考えると、O-型糖鎖修飾サイトThr323がデルタとWTの変異体の間で保存されていたことは驚くべきことではありません。
一方、オミクロン変異株には、同様なThr323 O-型糖鎖に加えて、主にGalNAcGal(NeuAc)2 O-型糖鎖修飾を受けた新しいThr376O-糖鎖修飾サイトが存在していました。このThr376O-糖鎖修飾サイトは、残基373のプロリンに隣接して3残基上流側であり、これは、プロリン付近でのO-グリコシル化頻度が増加するという知見と一致しています。この特定のPro373は、オミクロン変異株に特有の部位特異的変異であり、この新しいO-型糖鎖修飾サイトに深く関わっている可能性があります。Thr376サイトの糖鎖占有率はThr323に比べて低くなっていることは(<30%)、付け加えておいた方が良いかも知れません。

しかしながら、現段階では、Thr376 O-型糖鎖がオミクロンの感染力や免疫回避とどのように関係しているかについては不明です。