血栓形成促進性の血小板表現型(P-Selectin, GPIIb/IIIa複合体ら)と新型コロナウイルス(COVID-19)との関係性

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、急性呼吸窮迫症候群のみでなく、心血管合併症らの血栓形成状態を引き起こすことが知られています。

Technical University of Munichらのグループは、21種類の膜貫通型タンパク質に対する抗体パネルを用いて、マスサイトメトリー法によって血小板のこれらマーカーの発現状態を調査しました。
https://www.nature.com/articles/s41419-020-03333-9

マスサイトメトリーより、P-Selectin (0.67 vs. 1.87 健常者中央値 vs. COVID-19患者中央値, p = 0.0015) ,  LAMP-3 (CD63, 0.37 vs. 0.81, p = 0.0004),  GPIIb/IIIa 複合体 (4.58 vs. 5.03, p < 0.0001)らが高発現していることが分かりました。P-Selectinは、血管の内面を覆う活性化内皮細胞の表面上の細胞接着分子として機能し、血小板を活性化します。GPIIb/IIIaはインテグリン複合体であり、フィブリノーゲンおよびフォンヴィレブランド因子の受容体であり、血小板の活性化を助けます。LAMP-3はリソソーム関連膜糖タンパク質3です。

P-Selectinが活性化することで、血小板と白血球の相互作用が促され、結果として好中球細胞外トラップ(NETS)が形成されます。NETSは、自然免疫のひとつの機能であり、ウイルスの捕獲と排除を行います。しかし、過剰なNETSは、血栓形成に繋がります。また、P-Selectinとインテグリン複合体の高発現は、血小板凝集を引き起こし、炎症を助長します。血栓塞栓につながる病態生理学的な詳細なメカニズムや血小板の活性化における鍵となるドライバーについては依然不明ですが、ウイルスが感染した上皮細胞やサイトカインストームによって誘起されていることには間違いがないでしょう。