肺感染症を引き起こすスケドスポリウム属は、フコース特異的なSapL1レクチンを持ち、肺上皮細胞に結合する

Univ. Grenoble Alpes, Franceらのグループは、真菌であるスケドスポリウム・アピオスペルムムが持つレクチン、Scedosporium apiospermum Lectin 1 (SapL1)、の糖鎖結合特異性について報告しています。.
https://www.nature.com/articles/s41598-021-95008-4

スケドスポリウム・アピオスペルムムは、ヒトの肺感染症を引き起こす日和見真菌病原菌であり、土壌に広く分布しています。宿主と病原菌の相互作用は、しばしばレクチンが関係しており、結合を阻害するための糖鎖様分子の開発のための治療ターゲットとなっています。著者らのこの報告は、このSapL1と名付けられたレクチンの糖鎖結合特異性らについて初めてのものと思われます。

肺上皮細胞表面へのSapL1の結合リガンドを同定するために、585種類の糖鎖を固定化したCFGの糖鎖アレイVer5.4が使われました。SapL1をFITCにてラベリングし、ふたつの濃度(5 と 50 μg/mL)でアプライしました。SapL1 は、フコシル化された糖鎖を認識するようであり、フコースの修飾配位にはそれほど大きく影響されません。α1,2 および α1,3/4 配位のフコースで高いアフィニティーを示し、core fucose(α1,6 配位)ではアフィニティーが下がっていました。最も弱いアフィニティーを示すのは、多分岐のフコシル化糖鎖です。

血液型に関係する糖鎖に関して、SapL1 は、H-抗原(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAcβ)に強く結合し、Lewis a(Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ)そして Lewis X(Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ)の順になりました。しかしながら、認識された分岐型糖鎖にはcore fucoseが含まれていました。ふたつのフコースユニットを含む構造、例えばLewis b や フコシル化ポリラクトサミン、は良く認識されました。B抗原やA抗原におけるα-Galやα-GalNAcの付加は、Fucα1-2 の認識に影響を与えていません。