真菌表面の多糖類 α-(1,3)-グルカン、β-(1,3)-グルカンが樹状細胞のWnt/β-カテニン経路の活性化に関わる

Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale, Centre de Recherché des Cordeliers, Sorbonne Université, Université de Paris, Franceらのグループは、樹状細胞において、C-型レクチンがWnt/β-カテニン経路の活性化に必要であり、真菌表面においては、キチンではなく、多糖類 β-(1, 3)-グルカン、α-(1, 3)-グルカンがこの経路の活性化に関わっていると報告しています。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.02824-21

アスペルギルス・フミガーツス (Aspergillus fumigatus)は、空中に遍在する真菌であります。通常は、健常者であれば、吸い込んでも排除されてしまうのですが、時により、過敏症、真菌感染による重度の喘息、アレルギー性気管支炎、変化した肺上皮細胞のコロニー形成、既存の胚病変におけるアスペルギルス腫らを引き起こす場合があります。

マクロファージ、樹状細胞、好中球らの自然免疫細胞が、A. fumigatusに対する抗真菌活性に関わっています。真菌が入ってくると、樹状細胞が持つ様々なパターン認識受容体(PRRs)が侵入してきた真菌を認識します。A. fumigatusを認識できる樹状細胞が、引き続いてCD4+ T-細胞をTh1、Th2、Th17、oxP3+ 制御性T-細胞らへと分化誘導します。これらの中で、Th2 や Th17 応答は、A. fumigatusの感染に対しては非保護的です。 Th1 が防御免疫応答の誘導に主要な役割を果たします。制御性T-細胞は、免疫抑制的であり慢性的かつ持続的な感染症を促進しますが、それらはまた炎症性の組織ダメージを押さえるために重要であります。つまり、Th1と制御性T-細胞のバランスがA. fumigatusに対する防御免疫反応にとって非常に重要であるということです。

最近の研究では、IL-10、TGF-β、レチノイン酸の産生といった各種の抗炎症性メカニズムを介した樹状細胞の寛容原生機能や制御性T-細胞反応の促進に、Wnt/β-カテニン経路が関わっていることが示されています。

A. fumigatus をモデルとすることで、次のようなことが分かりました。 真菌種が、WntリガンドWnt1およびWnt7aの分泌とともに、樹状細胞CのWnt/β-カテニン経路を活性化し、Wnt経路の阻害は、ほとんどの炎症性サイトカインの分泌に影響を与えることなく、樹状細胞の成熟を押さえ、抗炎症性サイトカインIL-10の選択的阻害をもたらしました。樹状細胞におけるWnt/β-カテニン経路の無効化は、他のCD4 + T細胞サブセットの分極を変えることなく、制御性T細胞の分極を抑制しました。

そしてまた、樹状細胞におけるC-型レクチンがβ-カテニン経路の誘導には必要であり、A. fumigatus表面の多糖類β-(1, 3)-グルカン、α-(1, 3)-グルカンが、キチンではなく、β-カテニン経路の活性化に関わっていました。

 where, CA=unstimulated, SC=stimulated with swollen conidia