新型コロナウイルス(COVID-19)における液性免疫応答(抗体を中心とした免疫反応)には永続性がないのはどうしてか?

Harvard Medical Schoolらのグループは、液性免疫応答(抗体を中心とした免疫反応)にはどうして永続性がないのか?について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32877699/

生体に侵入するウイルスなどの外来性の異物の排除には自然免疫に加えて、抗体を中心とする適応免疫が活躍します。感染の初期には低親和性のIgG抗体が産生されますが,時間の経過とともに産生されるIgG抗体は成熟し抗原に対する親和性が上昇していきます。これは,胚中心(Germinal center:免疫応答の際に脾臓やリンパ節などの免疫組織に形成される微小な構造)において高親和性の抗体を産生するB細胞が分化するからです。感染の初期には抗原に特異的なB細胞がプラズマ細胞へとすみやかに分化し低親和性の抗体を産生しますが、一部のB細胞は転写因子Bcl6を発現し(Bcl-6 Tfh細胞)、胚中心を形成します。

実は、COVID-19においては、この杯中心の形成が抑制されていることが表題の原因のようです。何故、胚中心の形成が抑制されるのか?について、詳細なメカニズムは分かっていませんが、TNF-αのようなサイトカインが過剰に産生されるとBcl6-Tfh細胞の分化が抑制され、胚中心も結果として形成されないとのことです。

この現象は、COVID-19のみでなく、Ebora, Marburg disease, H5N1 influenzaでも起こるようです。