癌に対する糖鎖創薬の在り方について

糖鎖は細胞の顔と言われるように、細胞の状態で大きく糖鎖が変化します。癌化でも特異的な糖鎖構造変化が起こることが知られており、糖鎖を創薬ターゲットとして様々な診断薬や治療薬の開発が行われています。癌化で発生する糖鎖構造の変化は、癌の種類によってもことなるのですが、共通する特徴としては、下記があります。

(1) N-型糖鎖の多分岐化
(2) O-型糖鎖の刈込
(3) 末端シアル酸修飾の増加
https://jitc.bmj.com/content/8/2/e001222.long

しかし、これらに加えて、癌化すると糖鎖修飾量自体が増加したり、ハイマンノース構造も増加するという特徴もあるようです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32143591/

上記引用論文を踏まえて、糖鎖創薬のストーリーを以下のようにまとめてみます。

  • 抗体薬物複合体(Antobody-drug conjugates: ADC):レクチンなどを用いてターゲットとする糖鎖が発現している癌細胞を狙い撃ちする。この場合に、二重の糖鎖特異性を持たせた抗体でより精密にターゲットを狙い撃ちする手法が更に有効(例えば、GD2ガングリオシドとMUC1を二重に狙い撃ちする)
  • Siglec阻害剤:Siglecは、免疫細胞のほとんどに発現しており、シアロ糖鎖との結合で信号が入ると免疫反応が抑制される。
  • Galectin阻害剤:腫瘍細胞にはgalectinが高発現しており、免疫チェックポイントCTLA-4と結合し免疫反応を抑制したり、galectin-1はT-細胞のアポトーシスを誘導する
  • 免疫チェックポイント阻害剤:PD-1/PD-L1も強く糖鎖修飾を受けており、それを踏まえて優れた阻害効果を示す分子標的薬が有望
  • C-typeレクチン:DC-SIGN, Dectin-1らは免疫増強に有効、逆にNK62DGやMicleは免疫抑制的に働く