プロテオグリカン・リンク・タンパク質1(HAPLN1)は、膵癌の腹膜播種のドライバーであり、優れた予後マーカーと成り得る

Division Vascular Signaling and Cancer, German Cancer Research Center (DKFZ), Heidelberg, Germanyらのグループは、プロテオグリカン・リンク・タンパク質1(HAPLN1)は、膵癌の腹膜転移のドライバーであり、優れた予後マーカーと成り得ると報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-023-38064-w

細胞の可塑性は、腫瘍細胞の重要な特徴です。細胞可塑性は、上皮細胞の間葉細胞への転換、ならびに間葉細胞の上皮細胞への逆転換を誘導することによる異なる細胞状態間を変換する能力であり、がん細胞の幹細胞性の特徴であります。このような可塑性は、がん細胞の腫瘍微小環境への侵入と適応をより起こし易くするだけでなく、アポトーシス、免疫攻撃、および化学療法からも保護するのに役立ちます。

がん細胞転移の重要な調節因子は、腫瘍細胞が転移部位へ浸潤する際に直面する腫瘍微小環境です。腫瘍微小環境は、がん関連線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、細胞外マトリックスなど、幾つかの細胞および非細胞成分で構成されています。膵癌においては、腫瘍微小環境は強く線維形成性であり、細胞外マトリックス成分かなり蓄積されています。 細胞外マトリックスの主要成分の一つであるヒアルロン酸は、部分的な上皮間葉転換、浸潤、免疫調節、および治療抵抗性を促進することにより、腫瘍の進行と転移を促進します。細胞外マトリックスは、がん関連繊維芽細胞によって主に生産されます。

HAPLN1は、細胞外マトリックスにおけるヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの架橋剤ですが、がんにおけるその役割はこれまでのところよく分かっていませんでした。本研究では、HAPLN1が、隣接組織と比較して膵癌で最も昂進した遺伝子であることが確認されました。HAPLN1は、がん細胞に高度に可塑性の表現型を誘導し、膵癌における腹膜播種のドライバーとして機能していると定義付けられました。