T-抗原(シアル酸修飾の有無にかかわらず)はMUC21の抗アポトーシス効果に不可欠である

東京大学薬学部のグループらは、MUC21の抗アポトーシス効果にT-抗原(シアル酸修飾の有無にかかわらず)の存在が必須の様だと報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35410995/

ムチンは、物理的、化学的、および生物学的傷害から上皮表面を保護すると考えられている高度にO-型糖鎖修飾されたタンパク質であり、ムチンは、がんの診断や治療の分野で注目されています。
ムチン21(MUC21)は、乳がん関連ムチンであり、マウスのエピグリカニンを同定する努力の中で発見されたユニークな膜貫通型ムチンです

トランスフェクションによるMUC21の発現が上皮細胞をアポトーシス抵抗性にすることが本研究で初めて報告されました。この効果を発生させるには、MUC21のO-型糖鎖を伸長して、シアル化の有無にかかわらずGal残基を含める必要がありました。更に、このMUC21依存性アポトーシス抵抗性は、Galectin-3が存在しなくても変化しないことを示し、別のGalectinまたは糖鎖結合性分子が効果を媒介していることが示唆されました。

ガラクトースによるO-型糖鎖の伸長がMUC21のアポトーシス効果に必要かどうかを調べるために、CHO-グリコシル化変異体であるldlD細胞を使用しました。 ldlD細胞は、UDPガラクトース酵素およびUDP-Gal/UDP-GalNAc 4-エピメラーゼが不足しているため、GalNAcおよび/またはガラクトースを培地に添加した場合にのみO-型糖鎖を合成できます。
通常の培地で増殖させたldlD–MUC21トランスフェクタントは、約160 kDaの分子量に対応する1つのバンドのみを示し、ldlD細胞がO-型糖鎖修飾を受けていないMUC21のみを発現したことを示しています。培地にGalNAcを添加した場合には、ライセートをVVAレクチンでブロットすると、分子量が約200 kDaに対応するバンドが現れ、MUC21がTn-抗原を持っていることが示唆されました。培地にGalNAcとGalを添加すると、2つのバンドが認識され、1つは約200 kDa(シアリダーゼ処理なし)、もう1つは200 kDa以上(シアリダーゼ処理後)でした。後者のバンドは、PNAレクチンをブロッティングに使用した場合にも見られました。これらの結果から、GalNAcとGalを添加した場合には、シアリルT-抗原がMUC21に発現していることが示唆されました。
このようにして得られた三者の比較から、MUC21上の-T抗原(シアル化の有無にかかわらず)が抗アポトーシス効果を引き出すために必要であることが明確に示されました。

Galectin-3は、様々な細胞型で抗アポトーシス効果があることが示されています。そこで、MUC21トランスフェクタントHEK293細胞でGalectin-3をサイレンシングすることにより、Galectin-3がMUC21依存性アポトーシス耐性の誘導に関与しているかどうがテストされました。しかし、Galectin-3サイレンシングは、MUC21トランスフェクタント細胞のアポトーシス抵抗性には有意に影響を及ぼさないことが示されました。

不思議です、どうなってるんでしょうか?