SARS-CoV-2 デルタ変異株の感染力が高いのは、合胞体を作る能力がWTより2.5倍高いことによる

Georg-August-University Göttingen, Wilhelmsplatz 1, 37073 Göttingen, Germanyらのグループは、合胞体形成(細胞融合)がSARS-CoV-2 デルタ変異株の感染拡大に寄与しているに違いないと述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8487035/

Vero、293T、Caco-2、Calu-3、これらの細胞株はACE2を発現しており、Vero、Caco-2、Calu-3細胞は、しばしばSARS-CoV-2の感染実験に使用されています。デルタ株のSpikeタンパク質は、293TとVero細胞に対しては、WTとほぼ同じ効率で感染しましたが、Caco-2とCalu-3細胞に対しては1.5倍から2.0倍感染効率が上昇していました。しかしながら、デルタ株のSpikeタンパク質とACE2との結合力については、差異は観測されず、Caco-2とCalu-3細胞への感染効率が上昇したのは、一般的に言われているようなACE2へのデルタ株のSpikeタンパク質の結合力が上がったから、というのが原因ではないようです。

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質に起因する合胞体の形成がデルタ株の感染力のアップに寄与しているのではという考えがあります。この点を検証するために、ヒトの肺細胞株でACE2を良く発現しているA549細胞を用いて合胞体形成の確認実験が行われました。期待されたように、WTのSpikeタンパク質は合胞体の形成を促しました。驚くべきことに、デルタ株のSpikeタンパク質の合胞体形成はより多く起こっており、WTに比べて合胞体の形成量は2.5倍以上にもなっていました。

このような事から、合胞体(細胞融合)の形成が促進されることが、デルタ株の感染拡大に関係していると結論されました。