SARS-CoV-2がマクロファージに貪食で感染し、炎症カスケードを引き起こす

Department of Immunobiology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT, USAらのグループは、SARS-CoV-2のウイルス増殖がマクロファージで起こり、炎症カスケードを引き起こしていると述べています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.09.27.461948v1

SARS-CoV-2 が感染している細胞を特定する為、著者らは、MISTRG6-hACE2 マウス(ヒト化-ACE2発現マウス)を使用しました。期待されるように、SARS-CoV-2のウイルスRNAはSARS-CoV-2感染の主要なターゲットである肺上皮細胞から検出されました。しかし驚くべきことに、免疫細胞も同じレベルのSARS-CoV-2ウイルスRNAを持っていました。これらの感染された細胞を可視化し特徴付けるために、MISTRG6-hACE2マウスをレポーターを発現させたウイルス株 SARS-CoV-2-mNG19で感染させました。気管支肺胞洗浄液(BAL)中の大多数の上皮細胞(EPCAM+)は、トータルの肺上皮細胞から見たら少ないのですが、SARS-CoV-2に感染していました。免疫細胞からはクリヤにmNG信号が観測され、そのmNG+ 免役細胞は、主にマクロファージでした。

マクロファージは貪食細胞なので、SARS-CoV-2のウイルスRNAがマクロファージの中で複製したものなのか?それとも感染細胞や残骸の貪食で単に獲得されたものであるのかを判断する必要があります。これを行う為に、まず初めに、ACE2がトランスフェクトされていないMISTRG6マウスのマクロファージのmNG信号が評価されました。このマウスにおいては、上皮細胞はSARS-CoV-2に感染していませんでした。しかしながら、マクロファージには同レベルのmNG信号が観測され、マクロファージによるウイルスの捕獲は、感染された上皮細胞とは独立であることを伺わせます。マクロファージにおけるSARS-CoV-2の複製を決定付ける為に、ウイルス複製の特徴となるウイルス複製産物であるsubgenomic RNAやdouble stranded RNA (dsRNA)、そしてまた複製に関わる酵素であるRNA dependent RNA polymerase (RdRp) らが評価されました。
(1) mNG+ 対 mNG-上皮細胞におけるgenomic 及び subgenomic ウイルスRNAの定量を4日後或いはまた14日後に行った結果では、mNG+上皮細胞とmNG+免疫細胞のみが検出可能なsubgenomicウイルスRNAを示しました。免疫細胞と上皮細胞におけるそのsubgenomic RNAのレベルは同程度であり、両方の細胞で同程度のウイルス複製が起こっていることを示唆していました。
(2) mNG+ 細胞内のdsRNA(ウイルス複製の証)を染色し、mNG信号とdsRNAが同じ場所に局在しているか?を確認したところ、上皮細胞、免疫細胞の両方において同位置に局在していました。
(3) マクロファージの中にRdRpが確認されました。

加えて、マクロファージによる抗体依存性感染増強の存在可能性についてですが、SARS-CoV-2に対するmAbを感染したマウスに与え、35日後に感染度合いをmNG信号で評価しています。肺におけるmNG+のマクロファージが顕著に増加していることが確認されました。