Lactoferrinが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗ウイルス薬として機能する

Lactoferrinは、乳から分離された鉄結合性の分子量8万の糖タンパク質です。ヒトを含む哺乳類の乳(特に初乳)に多く含まれていますが、成人においても涙液、唾液、膵液その他の外分泌液や好中球に含まれています。Lactoferrinが、免疫調整機能、抗ウイルス機能、ビフィズス菌の増殖、鉄結合能と関連する鉄吸収調節、抗炎症作用、脂質代謝改善作用などの健康を維持・増進する作用を持つことも知られています。

University of Arizona, Tucsonらのグループは、lactoferrinが実際にSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を示すこと、そしてまた、そのメカニズムは何なのか?について報告しています。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2021.1888660

Vero E6 細胞, Calu-3 細胞, ACE2を過剰発現させた293T 細胞を用いて、SARS-CoV-2のin vitroでのlactoferrinの感染抑制効果を示しています。
そしてまた、その機構がACE2の共受容体であるヘパラン硫酸へのSARS-CoV-2結合阻害であることを分子ドッキング法を用いて検証しています。ヘパラン硫酸は負電荷を持ち、SARS-CoV-2のSタンパク質のNTDに存在する正電荷を帯びた領域(17~41残基領域)と結合するものと考えられています。下図において、BLF=Bovine lactoferrin 、HLF=Human lactoferrinであります。下図の右側は、heparin dp4とBLFとの分子ドッキング図を示しています。