新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のfurin cleavage site周辺に存在するO型糖鎖の影響について、英国変異株(B.1.1.7)の感染力アップを絡めて

National Institutes of Healthのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のfurin cleavage site周辺のO型糖鎖修飾の影響を、英国変異株(B.1.1.7)の感染力が上がっていることと関係付けています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7872346/

SARS-CoV-2のSタンパク質のS1/S2境界には、下図のようにPRRAという配列が挿入されており、furin cleavage siteを形成しています。

 

 

 

上図のようにO型糖鎖が修飾される位置には、S673, T676があります。この位置にO型糖鎖修飾が起こるには、681のprolineの存在が深く関係しています。また、O型糖鎖修飾に関わる糖転移酵素について、著者らはGALNTファミリーの中でGALNT1が最も活性が高いことも突き止めました。更に、O型糖鎖の修飾が起こると、furin cleavage siteの切断が大きく抑制されることも示されました。英国変異株(B.1.1.7)では、P681Hという変異が入っており、prolineがhistidineに置換されています。上記の結果を踏まえると、英国変異株では681にprolineが存在しないことで、O型糖鎖修飾が抑制され、その結果としてfurin cleavage siteの切断効率が上昇し、感染力のアップに繋がっていると推論されます。