乳癌の再発群と非再発群の間に見られる特徴的な糖鎖修飾の違いが発見される:TJA-IIが特異的に結合するβ-GalNAc糖鎖修飾

順天堂大医学部らのグループは、乳癌の再発群と非再発群の間に、特徴的な糖鎖修飾の違いがあることをレクチンマイクロアレイを用いて発見しました。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0250747

乳癌は女性の最も一般的な悪性腫瘍の一つです。トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、再発しやすいサブセットであり、全体の乳癌の15~20%を占め、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の発現を欠き、ヒト上皮成長因子受容体-2(HER2)が過剰発現していることが特徴となっています。このTNBC患者には、ホルモン治療や抗HER2治療が効かないことから、現状では細胞毒性の化学療法が唯一の選択肢となっています。

著者らは、Fucα1-2Gal や β-GalNAc構造を持つ糖鎖にアフィニティーを持つレクチンTJA-IIの信号が、再発したTNBC患者から外科手術で摘出した組織標本からの細胞抽出物において高くなっていることを発見しました。そして、組織標本のTJA-II免疫染色によっても、TNBC患者と非TNBC患者の間におけるこの違いを確認しました。他2つのレクチン、WFAとBLP、も同じような傾向を示すことから、β-GalNAc構造を持つ何らかの糖タンパク質がこの背後にあると考えられました。次の研究段階は、再発性のTNBC治療に向けて、この糖鎖修飾構造を持つターゲットとなる糖タンパク質を見つけることです。