腸内細菌シアリダーゼ活性とマウスの急性大腸炎には関係性がある

腸内細菌シアリダーゼ活性とマウスの急性大腸炎には関係性がある

Institute of Physiology, University of Zurich, Zurich, Switzerlandらのグループは、腸内細菌のシアリダーゼ活性が高まるとマウスの急性大腸炎が悪化すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9780602/

腸内細菌叢は主にバクテロイデス門とファーミキューテス門で構成されていて、アクチノバクテリア、ベルコミクロビア、フソバクテリア、プロテオバクテリアのメンバーの存在割合は少なくなっています。腸内細菌叢は、人間の健康に重要な役割を果たし、必須栄養素を供給し、免疫システムの強化や、病原体から保護するのに役立ちます。また、腸内細菌叢は宿主の代謝にも関与しており、さまざまな慢性疾患にも影響を与えています。

腸内細菌は、オリゴ糖および多糖類を消化するために必要な炭水化物消化酵素の膨大なグループを含む多数の遺伝子を発現します。これらの酵素は、食物の炭水化物の消化に加えて、腸の表面を覆う厚い粘液層でも活性化されます。従って、細菌のこれら消化酵素による宿主糖鎖の切断は、細胞接着、輸送、更には活性化に関与する糖鎖構造も変化させる可能性があります。特にフコシル化およびシアリル化エピトープは、それぞれ白血球の輸送と活性化を調節するセレクチンやシグレックなどの内因性レクチンによって認識されます。

大腸炎発症時の腸内細菌叢の組成および宿主糖鎖に対する腸内細菌の炭水化物加水分解酵素活性の影響を調べるために、シアリダーゼ、フコシダーゼ、およびラムノシダーゼ消化酵素を発現する組換え大腸菌を急性大腸炎を発症したマウスに接種することにより、これら消化酵素の活性を人為的に高める実験が行われました。興味深いことに、フコシダーゼおよびラムノシダーゼ活性の増加は大腸炎の状態に特段の影響を与えませんでしたが、シアリダーゼ活性の増加は疾患の重症度を悪化させることが分かりました。

注目すべきは、シアリダーゼ、フコシダーゼ、およびラムノシダーゼ消化酵素を発現する組換え大腸菌を強制経口投与されたマウスにおいて、その腸内微生物叢の組成にほとんど変化が起こらなかったということです。その一方、腸内粘膜の糖鎖および結腸粘膜に常在ずる白血球上の糖鎖からは、PNA染色およびシグレックリガンド染色実験から、シアル酸が切断されていることが分かりました。

PNA staining in proximal colon

結論として、シアリダーゼ活性の増加によって引き起こされる表面糖鎖のシアル酸修飾のリモデリングが、免疫細胞の活性を変化させ、マウスの急性大腸炎の悪化を招いたと考えられます。

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