最も効果的に善玉菌を根圏に定着させる方法:推奨される接種法は、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌でも違う

最も効果的に善玉菌を根圏に定着させる方法:推奨される接種法は、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌でも違う

Department of Agronomy and Horticulture and Center for Plant Science Innovation, University of Nebraska – Lincoln, Lincoln, NE, USAらのグループは、植物にとっての善玉菌を根圏に定着させる接種法について比較検討をしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8826558/

植物成長促進細菌の接種方法は、宿主となる植物の根圏における根圏細菌のコロニー形成に影響を及ぼし、結果として植物成長に影響を与える可能性がある重要な要因です。種子接種は、農業生産に適しており、野外条件下で、商業規模で最も広く使用されています。種子にコーティングされたバクテリアの生存率を高めるために、泥炭スラリーなどのキャリアまたはアルギン酸塩ポリマーからなるフィルムコートは、乾燥や温度変化などの環境ストレスから接種する細菌を保護する層として良く使用されます。一方、植え付けの前後に土壌に細菌を接種する為には、土壌ドレンチ、または畝と畝の間のあぜへの接種が行われます。この方法は、種子にコーティングされた化学物質によって接種細菌が阻害されるのを防ぎ、種子の大きさに制約されることなく、より高密度で接種細菌を使用できるため、種子接種に比べていくつかの利点があります。また、葉面への散布と根の浸漬は、接種法として最も一般的に使用される方法でもあります。

このレポートでは、5種類の接種方法「すなわち、苗のプライミング土壌ドレンチ、および3つの種子コーティング方法(直接種子コーティングアルギン酸塩種子コーティング、および12時間コーティング)」を、3つの異なる細菌株をモロコシの根圏に定着させる効果について比較検討しています。

使用した根圏細菌は野外で栽培されたモロコシの根圏から分離された3種類であり、根の内球に由来するChitinophaga pinensis(グラム陰性細菌)、および土壌由来の Caulobacter rhizosphaerae(グラム陰性細菌)とTerrabacter sp.(グラム陽性細菌)でした。

滅菌した温室内の環境では:
他の接種方法と比較して、苗のプライミングによるC. rhizosphaerae、およびC. pinensisの接種にて、より大きな根の成長促進効果が得られました。実際、C. rhizosphaeraeによるの根の成長促進効果は、この効果がわずかに有意であるにもかかわらず、苗のプライミングでのみ検出可能でした。 C. pinensisの場合、アルギン酸塩コーティングで有意な根の成長促進効果も観察され、12時間のコーティングではわずかな効果に留まりました。 土壌ドレンチ法を用いてC. rhizosphaeraeおよびC. pinensisを接種した場合、有意な根の成長促進効果は測定されませんでした。使用した3つのバクテリアのうち、C. pinensisとTerrabacter sp.のみが有意なシュート成長促進効果を示しました。 C. pinensisからの有意なシュート成長促進効果は、苗のプライミング、アルギン酸塩コーティング、および12時間のコーティング方法で接種されたときに測定されました。 Terrabacter sp.の場合には、同様な種子コーティング方法で接種された場合には効果がありましたが、苗のプライミングでの接種では効果が限定的でした。

屋外での栽培では:
野外栽培に適した2つの接種方法、アルギン酸塩コーティングと12時間コーティング、を野外条件下でテストしました。 C. rhizosphaeraeとC. pinensisは、野外での接種後12週間まで根圏で検出され、接種された植物の根圏のDNAコピー数は、温室内実験のそれと比較して低く、接種されていないコントロールと有意差はありませんでした。Terrabacter sp.は、どのサンプリング時点でも検出されませんでした。これは、種子をコーティングするために使用された細菌分離株の濃度(種子あたり103 –104 CFU)が低すぎて、自然に存在する無数の細菌群との競争に勝ち残れていないためであると考えられます。

滅菌した温室内では、種子を細菌懸濁液でコーティングするグラム陽性細菌の接種法で、コロニー形成が出来ていましたが、屋外での結果は決定的ではありませんでした。グラム陰性細菌の場合では、苗のプライミングを使用した直接接種が、種子のコーティングよりも高いコロニー形成効率をもたらすようです。

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糖鎖プロファイリング技術のパイオニア 環境再生型農業の実現

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