GlycoStation誕生秘話(番外編:GLI)

GlycoStation誕生秘話(番外編:GLI)

GLIとは、Glycobiomarker Leading Innovationsの略にて、産総研発のベンチャー企業です。社長には、産総研出身の竹生氏が就任し、取締役には、成松先生、久野先生が名を連ねていました。GLIの基本的な事業内容は疾患糖鎖バイオマーカーの開発であり、診断薬や治療薬に繋がるバイオマーカーを権利化し、それを診断薬や創薬メーカーにライセンスや売却を行うことでの収益化を考えていました。この手の事業モデルでは、長い期間売上を立てることが出来ないので、VCや事業会社から投資資金を入れ続けるしかありません。具体的に何が直接的な原因になったのかは部外者の自分には不明ですが、GLIは、2018年9月に倒産してしまいました。

この一ヵ月程前になるでしょうか、久野先生から「GLIの従業員を何人か引き取れないか?」という相談を受けました。自分は経営者ですので、こう言われれば会社が危険な状態になっていることは直ぐに分かりますし、役員が従業員の行く末を気にして救済の道を探っていることもわかります。久野先生には本当にお世話になっていたので、「1名くらいなら何とかできるかも知れませんが、自分だけでは決められないので高畠社長と相談致します」と言って別れました。


(つくば研究支援センター(TCI)の中にGLIがありました)

早速、このことを高畠夫妻(社長と会長)に伝えました。この時期には、高畠は、GPバイオサイエンスの自己破産に伴う自粛期間をへて、堂々とグライコテクニカ会長を名乗っていました。GPバイオサイエンスを倒産に追い込んだ「あの経営スタイル」がグライコテクニカに舞い戻って来ていたのです。なんて運命ってこれほどにも皮肉なんでしょう。2018年4月から1年間の計画で、自分は成育医療研究センター、ロート製薬とタッグを組んだ大型のAMED助成金を獲得することに成功していました。「再生医療等製品(脂肪細胞医薬品)の糖鎖プロファイリングを用いた品質管理システムの構築」という委託研究開発事業です。総予算は、5,200万円でした。この潤沢な資金があったことが高畠を狂わせたのです。「それ、売上でなく、委託研究開発費だよ、分かってんの?」高畠は「自分が安く、GLIを買収してやろう」と言い出しました。オーナー会社というのは非常に厄介です。上場しているモリテックスでさえも、起業者の森戸会長の影響力は強烈でしたし、それを排除するためには会社をつぶしてしまうくらいの大きなお家騒動が必要なのです。ましてや上場していない企業となると、役員とは名ばかりで、オーナーの言うことには逆らえないという雰囲気になってしまいます。当時のグライコテクニカは、VCからの投資金は一切受けず、自己資金と借り入れのみで運営されていましたので、物言う株主がおらず、会長の暴走を止められなかったということです。逆に言えば、VCからお金を入れてしまうと思うようにできなくなるので、借り入れのみにしたということです。

その結果、自分が獲得した多額の委託研究開発資金が、GLIの買収と従業員が増えることによる固定費の増加を補うために使われてしまい、結果、何と1,355万円もの委託研究開発資金が未使用となってしまいました。委託研究開発資金は、計画通りに使用することが鉄則です。万が一未使用分が出た場合には、翌年度の8月末までにそれをAMEDに戻す必要があります。助成金の不正使用などを行ったらその研究者や組織はお終いです。
高畠晴美社長に「助成金は契約通りに使用しなければいけない、目的外使用は厳禁です」、「絶対に未使用分は返済する必要があります」と念を押しました。「しかし、そう言われても返すお金がないの、AMEDに分割支払いに出来ないか聞いてみて欲しいの」こんなことを言いだしました。「なんなんだこの言いぐさ、事の重大さを分かってるのか?これでも社長か?」と思いつつ、社長命令なので仕方ない、AMEDに聞くだけは聞こうと電話をすると、案の定「委託研究開発費は先払いしてあるんだから、未使用が出ても払えないなどと言うことはあり得ない、払えないということは目的外に使用したということですよね、分割なんてできませんよ、予定通り返済してください」と言われてしまいます。

社長は、結局借り入れをして未使用分をAMEDに返済し、とりあえず事なきを得るのですが、会長は「未使用が出るのはお前の計画がおかしいからだ、多額の借金をしなくてはいけなくなったんだぞ、会社の危機だ」と山田に責任転換してきました。「この人どういう神経してんの?」自分ははらわたが煮えくり返りました。「委託研究開発資金が未使用になったのは、お前の目的外使用のせいだろうが」

この買収によって、グライコテクニカの固定費は一気に倍増、しかも売上は従来のグライコテクニカのそれと変わらず、一気にキャッシュフローが悪化していきます。GLIの事業モデルは前記したようにグライコテクニカのそれとは異なるので、売り上げなど急には増えないのです。分かり切った通りなのに、高畠はそんなことももう判断できなくなっていました。GLIを安く買収できたことに喜んでいました。そして、この後、グライコテクニカは坂を転げ落ちるように経営状態が悪化し、2022年8月、グライコテクニカが倒産してしまうのです。


2018年というのは、高畠夫妻にとっては、GPバイオサイエンスからグライコテクニカを通しての栄華のピークだったのかもしれません。高畠会長の無茶盛大なお誕生日会も開かれました。時期を合わせて開催されたこの年の株主総会後には、盛大な野外バーベキュー大会が開かれました。この大宴会には、自分の家内も息子も招待されていました。それはそれで楽しい思い出なのですが、この後、恐ろしい下り坂が待っていたのは上記した通りです。



真鶴オレンジフローラルファームにて、グライコテクニカのBBQ大会)


(無茶嬉しそうな高畠会長、白のジャケットを着用、左の女性はオペラ歌手の三堀美和さん)

(お誕生日会にオペラ歌手のロベルト・ボルトルッツィさんを呼ぶ、散財しすぎだろ)

Mx

糖鎖プロファイリング技術のパイオニア 環境再生型農業の実現

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