原生生物(襟鞭毛虫)からはじめて R-型レクチンが見つかった

Univ. Grenoble Alpes, CNRS, CERMAV, 38000 Grenoble, Franceらのグループは、原生生物(襟鞭毛虫)からβ-トレフォイルレクチン(R-型レクチン)を初めて見つけたと報告しています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.02.10.479907v1.full

レクチンドメインは、酵素や毒素などの他の機能性タンパク質と関連していることがよくあります。生命を脅かす例は、リシン毒素やコレラ毒素です。レクチンドメインは、これら毒素が細胞に取り込まれて代謝異常を誘発する前座として、細胞表面に存在する特異的な糖鎖との接合に関与しています。

著者らは、TrefLecデータベースを使用して、襟鞭毛虫のゲノムに真核生物のMytilecドメインを初めて発見し、それをSaroL-1と名付けました。 Mytilecドメインは、β-トレフォイルレクチン(R-型レクチン)として機能し、グロボトリアオシルセラミド(Gb3)に効率的に結合することが知られています。 これらβ-トレフォイルレクチン(R型レクチン)は、バクテリア、菌類、植物、動物に広く分布しています。

様々なガラクトシルリガンドへのSaroL-1の結合特性が、等温滴定カロリメトリーによって溶液中で評価されています。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)とα-メチルガラクトシド(GalαOMe)は、同程度のアフィニティーを示し、それぞれ2.2mMと2.8mMのKdを与えました。グロボシドGb3の末端二糖であるαGal1-4Galを除いて、テストしたすべてのα-Gal二糖およびp-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNPG)誘導体は、更に2倍ほど強いアフィニティーを示し、そのKdは1mMに使い数値となりました。一方、β-Galを含むラクトースは非常に弱い結合を示し、αGal1-4Galよりも20倍ほどアフィニティーが低く、SaroL-1がα-Galエピトープに強い特異性を持つことが確認されました。

SaroL-1は、膜結合時に細胞膜に穴を開け、孔形成毒素として機能するようです。実際、SaroL-1は、癌細胞(H1299細胞)に対して強い細胞毒性を示しています。標準的な細胞増殖アッセイを用いて、細胞毒性がドーズ依存的に増加することが確認され、SaroL-1で刺激した後、細胞生存率は約87%も減少していました(下図a参照)。興味深いことに、可溶性糖PNPGをアプライすると、SaroL-1の細胞毒性をほぼ完全に阻害することが出来ています(下図b参照)。

SaroL-1は、癌治療に対する新しいツールとなる可能性があるのではないでしょうか。