リンパ系フィラリア症で見られるIgGの糖鎖修飾異常について

Institute of Medical Microbiology, Immunology and Parasitology Institut for Medical Microbiology, University Hospital Bonn, Germanyらのグループは、リンパ系フィラリア症で見られるIgGの糖鎖修飾異常について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8992374/

一般に象皮病として知られるリンパ系フィラリア症は、ベクター媒介性糸状虫であるバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、およびチモール糸状虫によって引き起こされる熱帯病です。風土病地域では、ほとんどの感染者は無症候性のままであり、ミクロフィラリア(MF+)を保有し、寄生虫の感染に寄与しつつも、感染の外部兆候を示しません。対照的に、風土病正常(EN)としても知られている人達は、ベクターへの継続的な曝露にもかかわらず、感染がないままです。感染曝露されたヒトの一部では、感染症が慢性病理学(CP)に発展し、リンパ浮腫(組織の腫れ)、象皮病(皮膚/組織の肥厚)、または水腫(陰嚢腫大)として症状が現れます。

感染の臨床転帰は、個人の免疫反応性と密接に関連しています。寄生虫誘発性のTh2免疫応答に加えて、通常、無症候性の患者は、高レベルの制御性細胞、抗炎症性サイトカインを伴う強力な免疫制御プロファイルを示します。

IgG分子のFc部に存在する糖鎖は、二分岐N-型糖鎖であり、そのフコース、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、およびシアル酸らの修飾状態が変化します。ほとんどのIgG分子はフコース化されています。これらの糖鎖構造は、抗体の持つエフェクター機能、ひいては健康に大きな影響を及ぼします。たとえば、アガラクトおよびアシアロIgG糖鎖は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(IBD)、HIV、およびマイコバクテリア感染症などの慢性炎症性疾患に特に良く見られることが知られています。

本研究で見られた特異的なIgG糖鎖プロファイルは次の様でした、
CPでは、MF+、ENに比べて糖鎖修飾自体が増加していました、
ENでは、アガラクト型の糖鎖が最も高くなっていました、
CPでは、単一、或いは二個のガラクトース修飾を受けた糖鎖が最も高くなっていました、
MF+では、フコース修飾が減少、シアル酸修飾が増加、そしてバイセクティングGlcNAcが増加していました。

この研究は、CP、MF+、およびEN間のIgG糖鎖プロファイルの明らかな違いを特定しており、IgG糖鎖修飾の変化がリンパ系フィラリア症の疾患重症度予測のバイオマーカーとして役立つ可能性があることを示唆しています。