トウモロコシの種子に昆虫病原糸状菌とトリコデルマをプライミングすることでトウモロコシの収量が増加

State Key Laboratory for Biology of Plant Diseases and Insect Pest, Institute of Plant Protection, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing, Chinaらのグループは、トウモロコシの成長と昆虫による食被害に対する耐性を高めるための昆虫病原菌の種子プライミングを用いた方法の有用性について報告しています。
https://bmcplantbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12870-022-03949-3

アジア アワノメイガは、トウモロコシに最も被害を与える害虫であり、東および東南アジアで年間約 600 万から 900 万トンの収量損失を引き起こしています。

種子プライミングは、現在、作物の非生物的および生物的ストレス耐性、収量、および成長を促進する最も有望な技術のひとつと考えられています。本研究においては、昆虫病原糸状菌(BB処理)とトリコデルマ(TA処理)を用いた種子のプライミングについて検討が行われています。

種子プライミングで得られた実験結果から、昆虫病原糸状菌の種子プライミングによるトウモロコシ収量と経済的収益の増加を推定したところ、BBとTAを同時に種子プライミングした場合(BT処理)において、2018年と2019年にそれぞれ 6811.62 KG/ha と 8117.45 KG/ha という最高の追加収量が得られた計算になりました(これはコントロールよりも 82 ~ 96% 増加しています)。BBとTAそれぞれによる種子プライミングでは、2018 年には、それぞれ 4518.06 (52.2%) と 2930.19 (3​​5.4%)、2019 年には、それぞれ 4688.58 (55.8%) と 3982.40 (47.5%) の追加収量が得られたという結果になりました。

昆虫病原糸状菌の種子プライミングの効果は、アワノメイガ幼虫の発育に見られ、幼虫の成長速度が大幅に低下するとともに、50%以上の幼虫が3齢期に到達することさえできずに死亡したことがわかりました。BT処理で13%という最低生存率が記録され、続いてBB処理で28%、TA処理で36% が記録されたのに対し、コントロールの生存率は94%でした。

アワノメガのストレスを受けた種子プライミングおよび非プライミングのトウモロコシの葉サンプルを、抗酸化物質、プロリン、およびクロロフィルの含有量について分析したところ、真菌株による種子プライミングは、非プライミングのコントロールと比較して、BT処理によって24時間で酵素活性が大幅に昂進していました。 BT処理によって、SOD、POD、プロテアーゼ、PPO、およびプロリン活性は、それぞれ最大 80.29、336、302、141、および65.8 倍と大幅に増強されていました。更に、アワノメイガのストレスは、すべての種子プライミング処理 (BB、TA、BT) で cis-OPDA、JA、および JA-Ile を大幅に増加させましたが、BT処理で最高の植物ホルモン含有量となり、特にBT処理はトウモロコシにおける JA代謝産物の産生の増強を誘導していました。