BanLec(レクチン)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス薬としての潜在性を示す

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)には、22個のN-型糖鎖修飾部位があるということが既に示されています(例えば、https://science.sciencemag.org/content/369/6501/330.longを参照のこと)。

SARS-CoV-2は、ACE2受容体に強く結合するということから、Sタンパク質のS1サブユニット内に存在するRBDのAsn343に存在する糖鎖(Man3GlcNAc2Fuc)をターゲットとして、Mannose及びGlcNAc特異的なレクチンの結合強度を分子ドッキング・分子動力学シュミレーションを用いて計算し、抗ウイルス試薬としての潜在的な評価を行いました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33292056/

比較したレクチンは次の通りであり、BanLecが一番高い結合力を示したとのことです。
BanLec: -105.99kcal/mol
NPA: -79kcal/mol
GRFT: -73.7kcal/mol
CV-N: -67.3kcal/mol
UDA: -98.3kcal/mol

レクチンは、しかしながら、一般的に、変異原性、血球凝集、炎症らの副作用を示すため、in vivoでの確認が必要不可欠です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の中和抗体応答について:治療中にウイルス集団の遺伝子変異が起こる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、RNAウイルスですが、一般的にこのタイプのウイルスは、平均的に年間23個前後の遺伝子変異が発生します。

University College Londonらのグループは、免疫不全のCOVID-19の患者に対して行われた回復期患者血漿治療がSARS-CoV-2ウイルス集団の進化に及ぼす影響について興味深い研究結果をレポートしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781345/

治療には、レムデシビルと回復期患者血漿が使用されており、前者は、発症後41日、54日、に投与されており、後者は63日、65日に投与され、93日には、両方が投与されています。
(なお、回復期患者血漿の治療効果については、臨床状態または全体的な死亡率に有意差は認められないという報告が既にでています、例えば、下記論文参照
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33232588/

下図のように回復期患者血漿の投与で、ウイルス集団の変異が極めてダイナミックに変化していくことが示されています。それほどにRNAウイルスは変異しやすく、回復期患者血漿投与の治療効果をすりぬけていく、ということを示しているようです。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とACE2の結合に対する糖鎖の影響は限定的

University of Southamptonのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染受容体であるACE2の結合について、ACE2の糖鎖修飾の影響を調べました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283620306872?via%3Dihub

WTのACE2に対してST6を加えてシアル酸修飾を増加させたもの
WTのACE2に対してSialidaseを加えて、シアル酸を切断させたもの
WTのACE2に対してkifunensineを加えて、糖鎖構造をMan9GlcNAc2主体に変化させたもの
WTのACE2に対してEndoHを加えて、N型糖鎖を除去したもの
WTのACE2に対してFucosidaseを加えて、Fucを切断したもの
らについて、S-タンパク質との結合をSPRによるKd値の測定を介して議論しています。

 

 

 

 

 

 

ACE2からN型糖鎖を除去した場合は、若干結合力はあがりますが、その影響は限定的です。
ACE2のFuc修飾はほとんど影響を与えないことがわかります。
ACE2のシアル酸修飾がSARS-CoV-2の感染力に影響を与える事はなさそうです、むしろ感染力を弱める。
ACE2のHigh Mannoseは若干感染力を弱めるようです。

新型コロナウイルス(COVID-19)の治療には、全身性コルチステロイドの方がトシリズマブ(アクテムラ)に勝る

新型コロナウイルス(COVID-19)が重症化するとサイトカインストームが発生し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症します。この治療については、免疫制御という観点から、IL-6阻害剤であるトシリズマブ(アクテムラ)や炎症を抑えるステロイドが使用されています。

Yale School of Medicineのグループは、ランダム化プラセボ対照試験から、全身性コルチステロイドの方が治療効果が高く、トシリズマブの効果は明確ではないという報告をしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781335/

下図の如く、COVID-19の各種バイオマーカーの振る舞いは、コルチステロイドとトシリズマブでは大きく異なっています。恐らく、単一のサイトカインを阻害しても効果は限定的ということなのだと思われます。

新型コロナウイルス(COVID-19)の後遺症は、40日以上も続く

University College Londonらのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)に罹患してからの後遺症について報告しています。
https://f1000research.com/articles/9-1349/v1

96種の炎症性及び抗炎症性関連のタンパク質パネルのMS解析結果より、COVID-19に罹患した後、40日以上も炎症性のバイオマーカーやストレス起因のバイオマーカーに変化が残留しているとのことです。
具体的には、特に下記の6種のバイオマーカーに罹患後の影響が残留しているとのことです。

    peroxiredoxin 3 (PRDX3)
    carbamoyl phosphate synthase (CPS1)
    N-Myc downstream regulated gene 1 (NDRG1)
    Collagen triple helix repeat containing 1 (CTHRC1)
    Cystatin C (CYTC)
    Progranulin (GRN)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染防止用にコンタクトレンズをGriffithsinで修飾する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、咽頭鼻腔だけでなく、目からも侵入してきます。
Sichuan University, Chengdu, Chinaのグループは、コンタクトレンズにマンノース結合型のレクチンであるGriffithsinをコーティングする方法を提案しています。
レクチンの使い方としては簡単で有効かも知れませんね。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2020.599757/full

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRT-PCRのCt-値について

Albert Einstein College of Medicineのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRT-PCRにおけるCt-値と死亡率の間の相関について、後ろ向き試験の統計解析から、その結果を報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0244777

新型コロナウイルスで入院した患者1044名に対する後ろ向き試験の結果です。
RT-PCRのCt-値を4分割して統計分析をしています。
Q1: Ct=<22.9
Q2: 23.0<Ct<27.3
Q3: 27.4<Ct<32.8
Q4: Ct=>32.9

結果として、院内死亡率とCt-値は逆相関していることが示されています。
つまり、Ct-値が低いほど院内死亡率が上昇し、Ct-値が高いほど院内死亡率が減少するようです。

言い換えれば、暴露したウイルス数が多ければ、あるいはまた体内でのウイルス増殖が多ければ、死亡率があがるということになります。

おしっこの色と泡立ちから新型コロナウイルスの診断や予後を予測する

Memorial Hospital Group, Istanbul, Turkeyのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)の診断や予後予測に尿の泡立ち状態が有効な指標になりうるという面白い報告をしています。
http://www.nclin.ist/jvi.aspx?un=NCI-42027&volume=

新型コロナウイルスの入院あるいはICUに入っている患者の尿は、その色がオレンジから赤みがかっており、テストチューブで尿を回収し、15秒振った後の泡立ちの状態を観察することで、新型コロナウイルスの診断を行いました。
診断の正確さは、感度=92%、特異度=89%であったとのことです。

健常者の尿は、淡黄色から淡黄褐色ですし、排尿後、尿が泡立っても消えてゆけば基本問題はありません。
しかし、尿の色は病態で変化し、
尿中のウロビリノーゲン、尿タンパク質、尿糖が増加すると泡立ちの強くなります。

ひとつの参考程度と考えておくのが妥当かも知れませんね。

新型コロナウイルス(COVID-19)においては、IL-10とIgGが逆相関している

Univ. of Virginia Health Systemのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)における、IgG, IgA, IgMの発現について、興味深い報告をしています。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.12.05.20244541v1

IgG, IgM, IgAは、重症化するほど高発現する。
IL-10とIgGが逆相関する
という結果を得ています。

 

 

 

 

 

IL-10というサイトカインは、通常抗炎症性サイトカインであると考えられており、
IL-10とIgGが逆相関する、
しかもIgGは重症化するほど高発現しているということは、
IL-10が炎症性サイトカインとして働いていることを示唆してはいないでしょうか?

ムール貝から抽出したR型レクチン”Sevil”は、asialo-GM1に強く結合する

リシンB鎖に由来するレクチンをR型レクチンと総称します。
植物毒素であるリシンはガラクトース特異的ですが、リシン様構造は生物分布が極めて広く、ガラクトース以外にもシアル酸、マンノース、キシロースなど多様な特異性をもちます。
ムール貝から抽出されたR型レクチン”Sevil”と命名は、asialo-GM1構造に特に強く結合するとのことです。
横浜市立大のグループより
https://www.nature.com/articles/s41598-020-78926-7