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SARS-CoV-2 B.1.1.7変異株とB.1.351変異株は、ACE2に対してより強い結合力を示す

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)において、英国変異株(B.1.1.7)と南アフリカ変異株(B.1.351)が知られており、PfizerやModernaのワクチンの有効性に変化が生じているという報告は既に何報も存在します。本ブログでも、2021年2月6日のブログにおいて、英国変異株はそれほど影響を受けないが、南アフリカ変異株では、有効性がかなり下がりそうだという内容を紹介しています。

Stanford University School of Medicineのグループは、これら変異株は、感染受容体であるACE2に対して、より高い結合力を持っているようだと報告しています。B.1.1.7で約2倍、B.1.351で約5倍結合力が上がっているようです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7924271/

乳癌における特異的な糖鎖発現とマクロファージとの関係性について:SIGLEC-9, SIGLEC-10, SIGLEC-15, MGLらレクチンの働き

乳癌で特異的に発現する糖鎖とマクロファージとの関係性に関するレビューがあったので、その要点を解説してみたいと思います。
https://www.mdpi.com/1422-0067/22/4/1972/htm

乳癌で発生する糖鎖修飾の変化については、次のような事柄が知られています。
Lewisa Lewisxの増加、
Core Fucoseの増加、
多分岐N-型糖鎖の増加、
O-型糖鎖の刈込、
および、N-型糖鎖、O-型糖鎖へのシアル酸修飾の増加であります。

乳癌細胞の周辺には、間質細胞はもちろんですが、浸潤してきた免疫細胞が多数存在します。乳癌細胞とそれら免疫細胞(マクロファージら)との相互作用を理解することが、癌治療の観点からは非常に重要です。
この観点で重要なのが、糖鎖認識レクチンである、SIGLEC-9, SIGLEC-10, SIGLEC-15、およびMGLであります。SIGLEC-9は、Sialyl-T抗原がエンリッチされたMUC1に結合し、MAPK-ERKシグナルパスを活性化し、免疫抑制的に機能するPD-L1の発現やIL-10の分泌を促します。SIGLEC-10は、Sialyl-TやSialyl-Tn抗原に結合し、マクロファージの貪食作用を押さえてしまいます。SIGLEC-15は、Sialyl-Tn抗原に結合しますが、その機能に関しては未知の部分が多く、TGF-βの分泌を促すというよりは、SYK/MAPKシグナルパスを活性化するようです。一方、MGLは、GalNAcに結合し、ERKシグナルパスの活性化と抗炎症性サイトカインIL-10の分泌に関与していると考えられています。これらのポイントが乳癌に対する創薬ターゲットに成り得ると考えられます。

敗血症で細胞外に放出される核内クロマチンタンパク質であるHMGB1の役割とその制御にかかわるpHとZnの関係

UC San Diegoのグループは、核内クロマチンタンパク質であるHigh mobility group box 1(HMGB1)が敗血症で細胞外に放出され、好中球の受容体に結合し炎症を加速する際に、血液のpH、血中のZn濃度、そしてシアル酸修飾を受けた血中タンパク質の存在が大きくかかわっていることを示しました。
https://www.pnas.org/content/118/10/e2018090118

従来より、HMGB1は、正常組織では細胞核内でDNAと結合することによりクロマチン構造を制御して遺伝子発現を調節するシャペロンタンパク質として機能する一方、壊死組織では細胞外に放出されると自然免疫を活性化して好中球らの壊死組織への集積を誘導し、壊死組織除去を促進させることが知られていました。
http://www.med.osaka-u.ac.jp/introduction/research/endowed/therapy

HMGB1の好中球への結合は、血液のpH、および血中のZn濃度によって、大きく阻害されることが新たに示されるとともに、HMGB1が、シアル酸認識レクチンとして、血中のシアロ糖タンパク質と結合することで、好中球への結合が阻害されることが示されました。
血液のpHは、健常時には、7.35~7.45に厳密に制御されています。しかし、敗血症になるとpHが、7.3以下に下がります。また、血中のZn濃度も数µMにまで低下します。健常な状態では、HMGB1は、細胞外に放出されても血中のシアロ糖タンパク質に結合することで好中球への結合が阻害され炎症反応を誘発しません。しかし、血中のpHとZn濃度が下がると、シアロ糖タンパク質が阻害剤として機能しなくなり、好中球に結合して炎症を加速します。とすると、COVID-19で多臓器不全を起こしている状態において、pHと血中Zn濃度に着目し、HMGB1を阻害する治療法も有効なのかも知れません。

Core2 GnT (O型糖鎖 Core2 GlcNAc転移酵素)の阻害が絨毛癌の治療に有効

名大医学部のグループは、C2GnT (O型糖鎖 Core2 GlcNAc転移酵素)の阻害剤が絨毛癌の治療に有効であることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7895715/

絨毛癌は、女性特有の病気にて、妊娠時の胎盤をつくる絨毛細胞(トロホブラスト)に発生する悪性腫瘍です。

NK細胞の表面にはNKG2Dという受容体があり、腫瘍にしばしば存在するクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)と結合することで、NK細胞の細胞障害活性が引き出されると従来より考えられてきました。

下図に示すように、LELレクチンでIPしたMICAは、C2GnTをKOすることで明らかに減少することから、MICAはpoly lactosamine構造を持つCore2 O型糖鎖修飾を受けていることが分かります。C2GnTをKOすることで、当然ながらpoly lactosaminの伸長は起こらなくなります。JarとBeWoは絨毛癌細胞株であり、NK細胞毒性に対して、C2GnTをKOした細胞とcontrolを比較した結果は、明らかにC2GnTのKOでNK細胞障害活性が上昇することを示しています。また、エンド‐β‐ガラクトシダーゼの処理は、poly lactosamineの構造を切断してしまいますので、C2GnT KOと同じようにNK細胞障害活性を促します。
つまり、これらの結果は、MICAのpoly lactosamine修飾がNK細胞毒性を押さえていることを示しており、C2GnTが高発現するほど、絨毛癌が免疫を回避してしまうことを示しています。すなわち、この阻害が絨毛癌の治療法に結び付く可能性があります。

IgG Fcのコアフコース脱修飾が新型コロナウイルス(COVID-19)の重症度と相関している

2021年3月1日のブログ記事において、HIVに感染した患者で、HIVのエンベロープタンパク質であるgp120に特異的なIgGのcore fucose修飾が減少しているケースがあることについて述べています。

University of Amsterdamらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した場合にも、SARS-CoV-2のS-proteinに特異的なIgGにcore fucoseの修飾が減少している場合があることを指摘しています。
https://science.sciencemag.org/content/371/6532/eabc8378.long

IgGのcore fucose修飾が減少すると、effector効果(ADCCやADCP)が増強されることが知られており、これが良い方向に働けば、ウイルスの排除を加速することができます。HIVの場合は、正にこのケースが当てはまっています。しかし、免疫は諸刃の刀であり、新型コロナウイルスの場合には、IgGのcore fucoseの減少がサイトカインストームの引き金を引き、組織ダメージを与えてしまう場合があると推測されます。

下図において、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を発症してしまった場合には、IgG全体のcore fucose修飾には変化が無いのですが、S-protein特異的なIgGのcore fucose修飾が減少していることが示されています。即ち、これによってeffector機能が増強されていると考えられます。一方、core fucoseの修飾が減少すると、炎症性サイトカインIL-6の産生が加速され、炎症性マーカーであるCRPも高くなることも示されています。


新型コロナウイルス患者(COVID-19)の中和抗体について、その有効期間は?

東大医学部らのグループは、2020年1月から4月の日本の新型コロナウイルス患者から、その中和抗体の力価の変動の様子を報告しています。
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(21)00014-6/fulltext

感染後も数か月間は、中和抗体の力価はそこそこ保たれるようです。下図で、グレーは95%CIの範囲を示します。赤線は中央値です。心配される抗体依存性感染増強(ADE)については、世界中で数多くの研究が行われているが、ADEが増強されたという報告はまだ見受けられず、SARS-CoV-2の場合は、ADEの可能性は低いのではないか?と言及しています。

ラクトフェリンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染予防にはとても良い

本ブログでも、2021年2月12日の記事にて、ラクトフェリンの抗ウイルス効果について記載しています。SARS-CoV-2の場合には、ACE2を感染受容体としてヘパラン硫酸がその共受容体として機能しています。ラクトフェリンの抗ウイルス機能は、ラクトフェリンがSARS-CoV-2に結合することによって、ヘパラン硫酸への結合を阻害することにあると考えられています。

女子栄養大学のグループは、モンゴルが世界一新型コロナウイルスの感染抑止に成功している背景として、モンゴル人が、世界のどの民族よりも多くラクトフェリンを摂取していることを指摘しています。女子栄養大学は、処方箋無しで購入できる腸溶性ラクトフェリン(1カプセル250 mg)を2カプセル(500 mg)摂取することを推奨します。Amazonからでも手軽に購入できるようです。
https://www.eiyo.ac.jp/ions/?p=4407

HIVに感染しても無症状な子供達のIgGには、その糖鎖修飾に特徴が存在する

University of Oxfordらのグループは、HIVに感染した子供達における興味深い免疫反応について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7763548/

HIVに感染して、ART(antiretroviral therapy)治療を受けてもおらず、高い割合でウイルス複製が進行中であるにもかかわらず、正常なCD4カウントを維持する無症状な子供達(PNP)がいます。子供達においては、広域中和抗体(bnAb)の存在も特徴であります。更に、PNPでは、IgGのFcを介したeffector作用(ADCC, ADCP)が強いということも特徴です。

IgGの糖鎖修飾の違いに着目すると、HIVに感染した大人は一般的にagalacto型の糖鎖構造を持つのですが、無症状の子供の糖鎖は健常者と大きな違いがなく、むしろSia修飾が若干高めであり、FcのCore Fucoseの修飾が少ないという特徴があります。

bnAbは、ヘルパーT細胞(Tfh)およびgp120特異的なIgGのSia修飾と相関していました。
IgGのFcを介したeffector効果については、core fucoseの修飾が低くなるほど、強くなることが抗体医薬で良く知られています。

してみるとPNPというのは、基本免疫反応は弱めではあるが、それを補うbnAbが存在し、IgGのeffector作用も強いということなのかも知れません。

N343に存在するN型複合糖鎖がSARS-CoV-2のRBDのopen, closeの構造変化を制御している

UC San Diegoらのグループは、SARS-CoV-2のAVE2に対するRBDの配位(open or close)をN343の位置に存在する複合型N型糖鎖が制御していることを分子動力学的シュミレーションを用いて示しました。下図を見てもらえれば一目瞭然かと思います。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.02.15.431212v1

世界各地で発生しているSARS-CoV-2の変異に対するPfizer, Modernaワクチンの有効性:B.1.351やP.1変異株は危ない

Massachusetts General Hospitalらのグループは、世界各地で発生しているSRAS-CoV-2の代表的な変異に対するBNT162b2 (Pfizer)、mRNA-1273 (Moderna)という代表的なワクチンの有効性について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7899476/

世界各地で発生しているSRAS-CoV-2の代表的変異(9種類)の分布

各変異に対するPfizer, Modernaワクチンの有効性をNeutralizationで示す。B.1.1.7に対してはほとんど問題はないようですが、B.1.351 v2やP.1ではかなり有効性が下がっているように思われます。K417N, E484K この二つの変異がB.1.351とP.1に共通に存在し、B.1.1.7には存在しないようです。

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