膵管腺癌のオルガノイドを用いたバイオマーカー探索について

Harvard Medical Schoolのグループは、膵管腺癌のバイオマーカーとして、そのオルガノイドを用いた研究から候補となるバイオマーカーを報告しています。

https://insight.jci.org/articles/view/135544

(1) 糖鎖の観点から:High mannoseおよびLewis Xエピトープ構造が膵管腺癌で増加する。

(2) 細胞外小胞(EV)タンパク質の観点から:ANXA11(アネキシンA11:小胞体の輸送小胞COPIIの出芽領域に動員されるカルシウム依存性リン脂質結合タンパク質)が増加する。

更なる研究の進展を期待しましょう。

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のSタンパク質のD614G変異で感染能が上がっている原因は、RBD(Receptor Binding Domain)のConformationの変化にある

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)において、現在は、Sタンパク質のD614G変異を持つ株が感染の主流となっています。University of Massachusetts Medical Schoolらのグループは、何故、過去のD614よりもD614G変異の方が感染能が高いのかという原因についてその研究成果を報告しています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7492024/

SPRを用いて、D614GとACE2との相互作用を解析した結果は、D614G変異によってACE2へのアフィニティーが高まっていることが原因ではないことを示しており(むしろ、若干アフィニティーが下がっている)、Cryo-EMによるSタンパク質の構造解析からは、RBD(Receptor Binding Domain)のClose とOpenの存在割合が変化しており、D614よりもD614G変異の方がOpen構造の割合が増加していることを示しています。従って、D614Gの感染能が高まっている原因は、Sタンパク質のRBDがより露出したことが原因であると結論されています。

 

Deep Learningによる胸部X線撮影画像の診断で新型コロナウイルス(COVID-19)の診断精度が大きく向上した

新型コロナウイルス(COVID-19)の診断として胸部のレントゲンやCTが常用されます。Univ. of Oklahomaのグループは、胸部のX線撮影画像からCOVID-19由来の肺炎かどうかを判別するに際し、Deep Learningの手法を取り入れることで、その診断精度を上げることに成功しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S138650562030959X?via%3Dihub

Deep Learningは、Convolutional Neural Networkを6層使用し、入力する胸部X線撮影画像を224 x 224 x 3のサイズとし、Convolutionは3 x 3としています。入力画像の x3はR, G, Bの3色であることを示します。X線撮影画像は、白黒のグレーですので、R, G, Bの3色は、下図に示すような画像の前処理で作っています。下図において、(Ip)は横隔膜を除去した画像、 (Ieq)は画像の強度ヒストグラムを用いてコントラストを調整する画像処理方法を加えたもの、そして (Ib)は、更にバイラテラルフィルタを加えたものであり、この3つの (Ip), (Ib), (Ieq) を用いてR, G, B画像をシミュレートしています。

 

 

 

 

 

Deep Learningの結果は、
X線撮影画像をそのまま用いたsimple modelで、精度として88%が得られ、上記した画像の前処理を加えると精度は94.5%に向上したとのことです。

Deep Learningを用いた診断が益々医療の現場で用いられる時代になるのではないでしょうか?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療に対する一提案:NK細胞の役割について

ウイルス感染において、NK細胞は重要な役割を果たしています。University of Ferraraのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染において、NK細胞が如何なる振る舞いをしているかについて研究した結果をもとに、抗-NKG2A抗体を用いた治療法を提案しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32859121/

新型コロナウイルスのSタンパク質(Spike 1 Protein, Spike 2 Proteinそれぞれ)を肺上皮細胞に感染させ、NK細胞と共培養することによって、GATA3(転写因子)、HLA-E(ヒト白血球抗原のEクラス)、NKG2A/CD94(NK細胞抑制性受容体)、CD107a(脱顆粒マーカー:細胞障害因子の放出)、そしてIFN-γの発現状態を調べました。その結果、下記のような発現変動が起こっていることが分かりました。

  1. GATA3の昂進
  2. HLA-Eの昂進
  3. NKG2A/CD94の昂進
  4. CD107aの減少
  5. IFN-γの減少

 

 

 

 

 

これらの変化は、Sタンパク質のSP1(Spike 1 Protein)によって引き起こされています。SP1の感染によって、転写因子であるGATA3が活性化され、SP1ペプチド(8mer)がHLA-Eによって細胞表面に提示されます。HLA-EとNKG2A/CD94が結合することにより、NK細胞に抑制性の信号が入ります。同時に細胞障害因子の放出も抑制され、IFN-γの放出も抑制され、ウイルス排除の免疫機能が弱まっていることが示されています。

従って、結論として、感染初期において、抗-NKG2A抗体(monalizumab)を投与することが免疫活性を増強する手段として有効ではないか?としています。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染能に糖鎖はどう絡むのか?

新型コロナウイルスの第二波が襲ってきています。昨日は東京の新規感染者数は472人に達したとのこと。大阪=195人、愛知=181人、福岡=121人、大都市は何処も100人越えです。

新型コロナウイルスに関する研究進展の速さと出版される論文の急増には驚くばかりです。Pubmedにて、COVID-19をキーワードとして検索しますと、今日現在で37,700件を超える論文が既に出版されています。新型コロナウイルス(SRAS-CoV-2)がヒトに感染する場合に、その感染開始のきっかけとなる細胞の受容体はACE2(Angiotensin Converting Enzyme 2)である、という事が定説になっています。例えば、下記の論文が参考になります。因みに、SARS-CoVもACE2が感染受容体であり、MERS-CoVでは、DPP4;CD26が感染受容体と考えられています。

 

しかし、ACE2以外に、ANPEP(Alanyl Aminopeptidase), DPP4(Dipeptidyl Peptidase-4)も感染受容体になりうるという報告があります。

 

膜タンパク質が糖鎖修飾を受けていることにはほとんど例外がなく、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)も、感染受容体となるACE2らも糖鎖修飾を強く受けています。
例えば、下記の論文では、Sタンパク質について、Oligomannoseから、Hybrid型、Complex型まで多様なN型糖鎖構造が発現しており、O型糖鎖についても、Core1, Core2タイプの糖鎖が発現していることが報告されています。

 

一方、ACE2についても、その糖鎖修飾の概要が下記の論文に記載されており、Sタンパク質の糖鎖修飾同様に、非常に多様な糖鎖が同様に発現していることが分かります。

 

このようにして、Sタンパク質にも感染受容体側にも多様な糖鎖が発現している以上、糖鎖を介在した感染開始も必ずやあるはずです。下記の論文では、Sタンパク質が、受容体のCタイプレクチンであるDC-SIGNやMGLと強く相互作用し、シアル酸認識レクチンであるSiglec-3, -9, -10とも強く相互作用することが報告されています。

 

従って、新型コロナウイルスの感染は、ACE2一辺倒ではなく、ペプチダーゼである(ANPEP, DPP4)と、Cタイプレクチンである(DC-SIGN, MGL)、それにSiglecも関係して複雑な感染経路が存在している可能性があるということです。しかも、これらの受容体は、免疫細胞も含め、体内の組織に広く発現しています。

 

更に興味深いのは、新型コロナウイルスの重症化にABO血液型が関係しているという報告です。
この論文は、A型のヒトはO型のヒトに比べて、2.2倍ほど重症化しやすいということを述べています。ということは、抗A型抗体が、SARS-CoV-2の感染抑制に多少とも関係しているという可能性を示唆します。抗A型抗体は、下記のA型抗原(GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ1-4GlcNAc)に対する抗体ですので、この種の糖鎖構造が何らかの形で感染に関わっていることは間違いが無いと考えられます。
ABO.pngのサムネイル画像

 

更に不思議なのが、ファクターXの存在です。なぜ、アジアオセアニアでは、死亡率が欧米よりけた違いに小さいのか?

本日、検索エンジンに”emukk.com”がインデックスされたようです

7月19日のエムックのHomepageをアップしたのですが、本日、emukk.comやエムックで検索結果が出るようになりました。検索エンジンにインデックスされたようです。10日間でインデックスされたようで、割と早かったですね。

これからは、コンテンツを充実させながら、キーワードの検索順位のアップを行います。

検索エンジンに認識されるまでには時間がかかる

7月19日にこのHomepageを立ち上げて以来、未だにemukk.comでは検索されません。Google Search Consoleへは、Websiteを登録できましたので、気長に待つしかなさそうです。検索エンジンにインデックスされるには、一か月はかかるという情報があるので、まだまだかと思いますが、何日かかるか?この際ですから確認してみましょう。