Galectin-3 が、COVID-19重症化の優れた予後マーカーになり得る

University of Medicine “Aldo Moro”, Bari, Italyらのグループは、COVID-19の重症化に対して、Galectin-3が優れた予後マーカーになり得ると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8332745/

恐らく、本論文がCOVID-19の急性呼吸器不全(ARDS)における予後マーカーとしてのGalectin-3を報告する初めてのそれでしょう。

血中のGalectin-3濃度が高い患者は、重度のARDSを発症する危険性が高く、予後も良くありません。SARS-CoV-2感染の影響を受けやすい患者では、いわゆるサイトカイン・ストームを引き起こします。例えば、死に至った患者では、各種の血中炎症性マーカーの値が高くなっており、それらはCOVID-19の重症化と良く相関しています。それにも関わらず、著者らの多変量回帰分析モデルでは、IL-5、CRP、そしてGalectin-3のみが統計的に意味のある結果を示しています。IL-6とCRPについては、これは驚くべきことではなく、既に数多くの研究で、IL-6とCRPがCOVID-19重症化の予後マーカーとして報告されています。Galectin-3に対して注意を向けたのは本研究が初めてです。本研究では、COVID-19重症化を予測するROC解析のAUCで、Galectin-3が最も優れた値を示しました。Galectin-3 cut-off値=35.3ng/mLにて、AUC=0.75 (p = 0.001) を得ています。

実際、血中のGalectin-3濃度が35.3 ng/ml を超える患者においては、重度のARDSを発症するだけでなく、ICU入院率や死亡率も上がっていました。なお、本研究のコホートサイズは156名の患者でした。

SARS-CoV-2 Spikeに対する抗体をコートした金のナノ粒子(GNP)は、SARS-CoV-2の感染を100%阻止できる

Jackson State University, USAらのグループは、SARS-CoV-2 Spikeに対する抗体をコンジュゲートした金のナノ粒子(GNP)が、SARS-CoV-2の感染を完全に阻止できることを示しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8323809/

クエン酸がコートされたオリジナルのGNPの大きさは、15 ± 2 nmでしたが、抗スパイク抗体をコンジュゲートすることで大きさは27 ± 6 nm に増加しました。

感染実験において、SARS-CoV-2 疑ウイルス(# C1110G, Montana Molecular, Bozeman, MT) と、HEK293T 細胞が使われました。HEK293Tには、SARS-CoV-2の感染受容体であるACE2が発現していることが知られています。

下図に示すように、抗スパイク抗体がコンジュゲートされたGNPは、HEK293T細胞におけるSARS-CoV-2の感染増殖を完全に阻害できました。感染阻害効率は、100 ng/mLの高Spike抗体がコンジュゲートされたGNPの場合に100%に達し、10ng/mLの場合で60%に達していました。比べて、PEGがコートされたGNPや100 ng/mLの抗スパイク抗体の場合には、感染阻害効率は1%以下という低さでした。

< a href="https://www.emukk.com/WP/wp-content/uploads/2021/08/GNPantibody_SARS-CoV-2.png">

しかしながら、ブログ管理人は、この方法がin vivoでも使えるのどうか?については、不明です。

冬小麦の根圏:菌根菌ヘルパーバクテリアとしてのグラム陽性菌Bacillus amyloliquefaciensがArbuscular菌根菌の共生を助け、小麦の収量を増やした

University of Hertfordshire, Hatfield, UK のグループは、菌根菌ヘルパーバクテリアとしてのBacillus amyloliquefaciensが、arbuscular菌根菌の共生を助け、冬小麦の収量が増加することを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8309287/

土壌細菌と植物との関係は非常に複雑であり、土壌の富栄養化をもたらし、植物の免疫と防御を強化し、植物の収量を改善し、二酸化炭素を固定するといったメリットをもたらします。Arbuscular菌根菌は、地球上の植物の80%もの根圏に存在する真菌のひとつであり、植物と菌根菌は相利共生を超えたお互いに無くてはならない関係を構築しています。菌根菌ヘルパーバクテリアは、そんなArbuscular菌根菌を刺激し、植物と土壌細菌の共生をより強固なものにします。その三者(植物、Arbuscular菌根菌、そして菌根菌ヘルパーバクテリア)の関係において、しかしながら、菌根菌ヘルパーバクテリアとArbuscular菌根菌との関係については良く分かっていないことが多いのです。そこで、本研究においては、菌根菌 R. intraradices (Ri)に加えて、三種のグラム陽性菌を菌根菌ヘルパーバクテリアとして評価しています:B. subtilis(Bs)、B. pumilis(Bp)、B. amyloliquefaciens(Ba)であります。

一般的な耕耘(CT) は、土壌細菌の多様性とその存在量に直接的に影響します。耕耘によって菌根菌の菌糸ネットワークが破壊され、植物の根の皮質に侵入した樹枝状体が減少してしまいます。しかし、根圏細菌に対する耕耘の影響というのも十分理解されているわけではありません。そこで、上記の一連の実験は耕耘あり(CT)、無し(ZT)で評価されました。

結論としては、グラム陽性菌であるB. amyloliquefaciens が、Arbuscular菌根菌の共生を助け、冬小麦の収量を増やすという事が分かりました。

高齢者や肥満で減少している4つのmiRNAがSARS-CoV-2の増殖を有意に阻害した

School of Life Sciences, Nanjing University, Nanjing, Chinaらのグループは、高齢者や肥満で特異的に減少している4つのmiRNA(miR-7-5p、miR-24-3p、miR-145-5p、miR-223-3p)がSARS-CoV-2の増殖を有意に阻害することを示しました。
https://www.nature.com/articles/s41392-021-00716-y

高齢者と若者の間で、血液中のmiRNAに如何なる差異があるのかを包括的に調査する為に、NCBI Gene Expression Omnibus databaseから、年齢に関連したnon-coding RNAの発現プロファイル(13サンプル)をダウンロードしました。内訳は、3名の30歳以下の若者、10名の60歳以上の高齢者となります。これを用いてmiRNAの比較発現解析を行いました。

非常に興味深いことに、4つのmiRNAs(miR-7-5p、miR-24-3p、miR-145-5p、miR-223-3p)が高齢者や肥満で有意に減少していることが分かりました。

次に、これらのmiRNAが、エクソソームの形であっても、フリーの単体であっても、SARS-CoV-2の増殖を有意に阻害することが示されました。下図は、エクソソームの場合です。

樹状細胞のHLA-IIに抗原提示されているSARS-CoV-2のペプチドで糖鎖修飾はどうなっているのか?

University of Oxford, UKらのグループは、樹状細胞のHLA-class IIに抗原提示されるSARS-CoV-2の糖ペプチドのマッピングについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8116342/

ブログ管理人にとっては、樹状細胞のHLA-IIに抗原提示されるペプチドが、SARS-CoV-2が樹状細胞に貪食される前に持っていた糖鎖修飾情報をそのまま維持しているのか否かについて非常に興味があります。

SARS-CoV-2のトータル22個箇所の糖鎖修飾の中で、HLA-IIに抗原提示された糖ペプチドは、14か所の糖鎖修飾サイトを含んでいるものが見つかりました。HLA-IIに抗原提示された糖ペプチドは、主に短鎖のパウチマンノース型のN-型糖鎖構造を持っており、オリジナルのSARS-CoV-2が持つオリゴマンノース、GlcNAc終端の複合型N-型糖鎖構造とは異なっていました。このパウチマンノース型のN-型糖鎖は、Fucose修飾の情報は持っていました。この事は、樹状細胞内の抗原提示のプロセスにおいて、糖鎖が刈り込まれていることを示すものです。


上図におけるヒートマップカラーは各々の糖鎖構造の相対的な頻度を示し、質量分析スペクトルにマッチしたペプチド数(青色バー)も示されています。

COVID-19における単球とマクロファージ:単球においてはHLA-DRの発現が低下し、マクロファージはSARS-CoV-2のトロイの木馬になっている

このブログ記事は、University of Bonn, GermanyらのCOVID-19における単球とマクロファージに関するレビュー論文から、そのエッセンスの紹介をしています。COVID-19においては、マクロファージはSARS-CoV-2を運ぶトロイの木馬と化し、単球はHLA-DRが減少し免疫抑制的に変貌して、末期癌や敗血症で見られる状態になっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8335157/

日々、肺は菌類、バクテリア、ウイルスら病原菌を多量に含んだ空気を数千リッターも吸い込んでいます。それらの感染や組織に発生する合併症を阻止する為には、免疫システムが厳格に制御されている必要があります。肺においては、恒常的な状態ではマクロファージが最も大量に存在する免疫細胞であります。マクロファージはその存在部位において、少なくとも二種の異なった集団が存在します。ひとつは、間質内マクロファージであり、もうひとつは肺胞マクロファージです。それらは、卵黄嚢に起源を持ち、誕生後初期から肺に存在します。肺胞マクロファージは増殖能力を持っており、骨髄からの供給を受けなくても、独立に自己再生によって生涯にわたって存在量を維持することができます。

ウイルス感染においては、肺胞マクロファージは初期の病原体認識、炎症の開始と制御、そして組織ダメージの修復に係わっています。肺胞マクロファージは、IL-1β、CCL3、CCL7、CCL2、MCP1らの細胞間伝達物質を多量に産生し、CCRを発現する骨髄由来の単球を急速に肺へと呼び寄せます。これは、必要な防御反応であり、ウイルスの攻撃によって、肺胞マクロファージやその派生種が大幅に減少することを補う必要があるからです。更に、肺胞マクロファージは、抗ウイルス反応を開始させる type I IFNを分泌する主役でもあります。

COVID-19 は、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-7、TNF、type I IFN、type II IFNらのサイトカイン、CCL2、CCL3、CXCL10らの炎症性ケモカインらの全体的な増加によって特徴付けられます。全体的なサイトカイン応答の増加というのはCOVID-19において議論の余地はないのですが、COVID-19の病理で使われるサイトカイン・ストームという言い方には、議論の余地があります、というのもTNF、IL-6、IL-8らのCOVID-19における濃度は、敗血症、COVID-19とは無関係な急性呼吸器不全症候群、重い外傷、心停止、そしてサイトカイン放出症候群(CRS)らと比べて高くないからなのです。重度のCOVID-19の患者で見られる全体的なサイトカインのプロファイルは、マクロファージ活性化症候群(MAS)と似ており、この事は、単核貪食細胞系(単球やマクロファージ)の異常がCOVID-19の過炎症に関係しているのではないかということを強く示唆します。

肺に存在する単核貪食細胞群へのSARS-CoV-2 感染というのは、肺胞上皮細胞の貪食後にリソソームから逃れたウイルスが感染、或いはまた直接的に感染していると考えられます。COVID-19における単核貪食細胞群からのサイトカインの産生は、パターン認識受容体(PRRs)によるSARS-CoV-2に感染した肺胞上皮細胞から放出される細胞損傷関連分子パターン(DAMPs)の認識、或いはまた、Toll様受容体を介した病原体関連分子パターン (PAMPs)の直接的な認識によって開始されます。更には、DC-SIGN、L-SIGNらのC-型レクチン、或いはTweety family member 2らがSARS-CoV-2 Spikeタンパク質と相互作用し、炎症性反応を誘起します。どうも、肺胞マクロファージがSARS-CoV-2を運ぶトロイの木馬のように作用しているようなのです。つまり、ウイルスに感染したマクロファージが近くの肺組織へウイルスを感染させ、それによってゆっくりとSARS-CoV-2の感染が広がり、肺全体に過炎症を引き起こすのです。

全ての研究事例を通じて最も特徴的なことは、COVID-19の重症患者では、単球のHLA-DRの発現が減少しているということなのです。このHLA-DRの減少というのは、COVID-19の重症度と強く相関しています。HLA-DRの減少というのは、単球系骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)においてみられる特徴であり、これは末期の癌や敗血症において見られるものであり、免疫抑制的な機能を持っています。COVID-19において、そのようなHLA-DRlo 単球が炎症性ケモカインによって肺へ呼び寄せられ、過剰に活性化された単核貪食細胞群が更に炎症性サイトカインやケモカインを分泌し、この連鎖的な反応が連続的に起こることで炎症を重くし、肺組織にダメージを与えていると考えられます。

SARS-CoV-2は、様々な血管内皮中で、冠状動脈内皮細胞にのみ感染したが、ウイルスの増殖は起こらなかった

Goethe University Frankfurt, Germanyらのグループは、ヒトの各種内皮細胞におけるSARS-CoV-2の感染のし易さについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8256413/

SARS-CoV-2 は主に肺胞上皮細胞に感染し、急性呼吸器不全症候群(ARDS)を引き起こします。しかしながら、内皮細胞機能不全や血管イベントがこの病気の主要な合併症であることも良く知られています。実際に、循環器系の炎症、障壁血管による組織浮腫、播種性血管内凝固の活性化および微小血栓が、COVID-19の中症から重症患者で報告されています。しかしながら、内皮細胞機能不全がSARS-CoV-2の内皮細胞への直接的な感染で起きているのか、サイトカインの放出による炎症カスケードの二次的な結果なのか?については、明確ではありません。

そこで、異なった血管床から得られた幾つかのヒトの内皮細胞をSARS-CoV-2と共培養し、それら内皮細胞への感染のし易さについて評価が行われました。評価された内皮細胞は次の通りです、
ヒト臍帯内皮細胞 (HUVEC)、
ヒト冠状動脈内皮細胞 (HCAEC)、
ヒト心臓微小血管内皮細胞 (HCMVEC)、
ヒト肺微小血管内皮細胞 (HLMVEC)。

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質は、ウイルス感染実験後、 ヒト冠状動脈内皮細胞から検出され、その他の内皮細胞からは検出されませんでした。この結果というのは、ウイルスの感染に必要とされるACE2を発現しているのは、ヒト冠状動脈内皮細胞のみであるという事実と相関しています。

ヒト大腸腫瘍細胞(CaCo2)がSARS-CoV-2感染のポジコンとして使用されています。

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質は、ヒト冠状動脈内皮細胞から検出されましたが、このことは必ずしも内皮細胞に感染したということを意味するものではありません。それ故、RNA増幅の証拠となる二重らせんRNA、およびウイルス増殖の証拠となり得る細胞培養上清中のウイルスの存在が評価されました。しかしながら、SARS-CoV-2感染後5日間が過ぎても、ヒト冠状動脈内皮血管からは二重らせんRNAは検出されず、培養上清からもウイルスは検出されませんでした。このことは、ヒト冠状動脈内皮細胞にウイルスは取り込まれたが、その後全くウイルスは細胞内で増殖していないということを示すものです。

結果として、COVID-19で苦しむ患者に見られる多くの内皮細胞機能不全や微小血管内血栓らの合併症は、サイトカイン放出によって介在される炎症カスケードの結果として現れているものであり、内皮細胞への直接感染が原因ではないことが明らかになりました。

SARS-CoV-2 RBDをブロックできるキトサンは、COVID-19の治療薬として期待できる

Birla Institute of Technology and Sciences (BITS), Rajasthan, Indiaらのグループは、キトサン派生物がSARS-CoV-2の野生株及びその変異株の感染に対して、新規の阻害剤になり得ると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8313795/

キトサン派生物のライブラリーを、SARS-CoV-2の野生株のRBD、及び変異株(アルファおよびガンマ)のRBDに対して、分子動力学的ドッキング・シュミレーションを用いてスクリーニングを行いました。得られた結果は非常に興味深く、Imino-キトサンとN-benzyl-O-acetyl-キトサンが、SARS-CoV-2 Spike RBDに対して強い結合アフィニティーを示しました(-6.4 ~ -6.7 kcal/mol)。

両化合物のRBDの静電気的表面上における配位モデルを下記に示します、

シトクロムP450 (CYP450)として知られるミクロソーム酵素のファミリーは生体の異物代謝に関わっています。CYP3A4、CYP3A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6 はすべてCY450ファミリーのメンバーであり、さまざまな薬物の代謝に関与しています。薬物の理想的なシナリオとは、これらの酵素を阻害しないことであります。この点において、Imino-キトサン と N-benzyl-o-acetyl-キトサン は、両方ともまともな薬物になり得ることを示しています。

Imino-キトサン と N-benzyl-o-acetyl-キトサンの毒性プロファイルは、ラットおよびマウスでの発がん性試験、およびHERG阻害結果を使用して、変異原性および発がん性に基づいて決定されました。毒性プロファイルのすべての結果は良好であり、リガンドが潜在的な薬物である可能性があることを示しています。

小麦の根圏:ヒトの亜鉛不足を救う小麦根圏の亜鉛(Zn)可溶化バクテリア

Chinese Academy of Agricultural Sciences, Shenzhen, Chinaらのグループは、亜鉛を沢山含む小麦品種というのは、その根圏に亜鉛を可溶化するより多くのバクテリアを呼び込んでいるのだと主張しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8261137/

世界人口の約20%が、亜鉛(Zn)の接種不足に悩まされています。そして、この状況は大気中の二酸化炭素の増加とともに更に悪化するだろうと予測されています。この亜鉛不足の問題を解決する効果的な方法の一つが、小麦のような主要作物の穀類中の亜鉛濃度を上げてやることなのです、即ち亜鉛の生物学的栄養強化です。小麦の亜鉛栄養強化のターゲットというのは、現在の穀物亜鉛濃度である20 ~ 30 mg/kg を 40 mg/kg に増加させることであり、それが実現できれば人類には十分なのです。

土壌の中の亜鉛の可動性は高くなく、植物の根からの亜鉛の吸収はその根圏において起こりますが、根とバクテリアの活性度を高めることによって利用できる亜鉛の量を少しは高めることができます。世界中に分布している石灰質の土壌では、アルカリ性の環境や炭酸塩の高い濃度の為に亜鉛の利用性が下がっています。各種の植物の根は、カルボン酸、アミノ酸、低分子のペプチドなどを分泌しており、根圏を酸性化することによってミネラルの中に固定化されている亜鉛を可溶化できます。更には、根からの分泌物の上で共生しているバクテリアも有機酸、鉄キレート、細胞外多糖類を分泌しており、それによって土壌根圏中の各種の栄養物を可溶化することができます。

高亜鉛と低亜鉛の小麦品種の間でその根圏内に集まっているバクテリアの量を比較解析すると、高亜鉛の小麦では、低亜鉛の小麦より1.5倍以上、30種のバクテリアが増加しており、2種のバクテリアが低亜鉛の小麦で高亜鉛の小麦に比べて二倍以上増加していました。この32種のバクテリアの内、既報の土壌の亜鉛可溶化バクテリア(38種)の中の一つであるシュードモナスに属する3種が特に増加していました。既報の亜鉛可溶化バクテリアのほとんど半分が小麦の根圏で増加しているものの、そのほとんどは高亜鉛と低亜鉛小麦の間では顕著な違いは示していませんでした。
異なるのは、32種の高亜鉛、2種の低亜鉛のバクテリアは、小麦の根圏でエンリッチされており、高亜鉛と低亜鉛の小麦の間でそれが大きく違うという事です、特にシュードモナスやマッシリアが高亜鉛の小麦で顕著に増えています。更に、32種の遺伝子解析からは、28種の高亜鉛バクテリアや2種の低亜鉛バクテリアには、土壌の亜鉛可溶化に関する遺伝子が含まれていることが分かりました。それ故、既報の亜鉛可溶化バクテリアはすべての小麦品種に対して亜鉛の吸収を助けるものであり、ここで同定された20種の高亜鉛及び2種の低亜鉛バクテリアは、小麦品種間での亜鉛吸収の差異に関係しているものなのかも知れません。

このような事から、高亜鉛の小麦品種というのは、土壌亜鉛可溶化に関係したバクテリアを呼び寄せており、高亜鉛と低亜鉛小麦品種の違いはその根圏の亜鉛可溶化バクテリアの存在量に依存しているのだ、と言っても良いのかも知れません。しかしながら、高亜鉛小麦品種がどのようにしてバクテリアを呼び寄せているのかは謎のままです。

COVID-19に対するmRNAワクチンを接種後に産生される中和抗体の発現とそれを裏付ける血液中のサイトカイン/ケモカイン・マーカー

National Cancer Institute, Frederick, USAらのグループは、COVID-19に対するmRNAワクチン(Pfizer)を接種後に産生される中和抗体の発現と、それと高い相関性を示す血液中のサイトカイン/ケモカイン・マーカーについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8299183/

PfizerのCOVID-19に対するRNAワクチンを接種した63名に対する中和抗体の産生に関するコホート研究からです。このコホートには、二種類の受検者が存在し、58名のグループは、ワクチン接種前にはCOVID-192感染していない人達であり、6名のグループは、ワクチン接種前に既にCOVID-19に感染した人達です。58名の受検者については、ワクチン接種後3週間で免疫応答が立ち上がり(22日)、その後2回目のワクチン接種後に急激に免疫が強化されています(36日)。比較して、COVID-19の発症経験を持つ5名の受検者の場合は、ワクチン接種のその日に既に免疫応答を示し、急速に免疫が強化されました(8日)。その後は特に免疫の上昇は見られず、2回目のワクチン接種でも変わらず、しかし、非常に高い免疫応答を示しています。COVID-19を過去に発症した人は、1回のワクチン接種で十分なブーストが掛かるということです。

この研究のハイライトは、mRNAワクチンによって誘起された幾つかの免疫制御分子がワクチンによる免疫応答と良く相関しているということを示していることであり、特に、初期のサイトカインとケモカイン(IL-15、IFN-γ、そしてIP-10/CXCL10)の発現と動きが、mRNAワクチン戦略の有効性を最適化する上に置いて、非常に有効なマーカーになるということです。