樹状細胞のHLA-IIに抗原提示されているSARS-CoV-2のペプチドで糖鎖修飾はどうなっているのか?

University of Oxford, UKらのグループは、樹状細胞のHLA-class IIに抗原提示されるSARS-CoV-2の糖ペプチドのマッピングについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8116342/

ブログ管理人にとっては、樹状細胞のHLA-IIに抗原提示されるペプチドが、SARS-CoV-2が樹状細胞に貪食される前に持っていた糖鎖修飾情報をそのまま維持しているのか否かについて非常に興味があります。

SARS-CoV-2のトータル22個箇所の糖鎖修飾の中で、HLA-IIに抗原提示された糖ペプチドは、14か所の糖鎖修飾サイトを含んでいるものが見つかりました。HLA-IIに抗原提示された糖ペプチドは、主に短鎖のパウチマンノース型のN-型糖鎖構造を持っており、オリジナルのSARS-CoV-2が持つオリゴマンノース、GlcNAc終端の複合型N-型糖鎖構造とは異なっていました。このパウチマンノース型のN-型糖鎖は、Fucose修飾の情報は持っていました。この事は、樹状細胞内の抗原提示のプロセスにおいて、糖鎖が刈り込まれていることを示すものです。


上図におけるヒートマップカラーは各々の糖鎖構造の相対的な頻度を示し、質量分析スペクトルにマッチしたペプチド数(青色バー)も示されています。