Medical University of South Carolina, Charleston, USAらのグループは、血中のスフィンゴシンの減少が、COVID-19の無症状患者とそうでないヒトを早期に見分けるための高感度で特異的なマーカーになり得ると報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-93857-7
抗体が陽性 (n = 134) と陰性 (n = 130)の比較において、スフィンゴシンのレベルが陽性者で少しですが有意に(p < 0.05)上昇していました(陽性者=28.96 vs. 陰性者=23.25 pmol/5 × 10−5 L serum)。 そして更に、COVID-19 患者においては、血中のスフィンゴシンのレベルが無症状者に比較して、15倍ほど減少していました(無症状者=28.96、COVID-19患者=1.88 pmol/5 × 10−5 L serum)。下図においては、Sphingosine (Sph)、dihydro-sphingosine (dhSph)、sphingosine 1-phosphate (Sph-1p)と略されている。
ROC解析の結果は、スフィンゴシンの閾値を 8.2 pmol/5 × 10−5 L と設定した場合に、感度 = 98.47%(95% CI 94.60–99.73%)、特異度 = 98.51%(95% CI 94.72–99.73%)が得られ、SARS-CoV-2抗体は陽性ではあるものの無症状な人とCOVID-19患者を見分けるに高感度で特異度の高いマーカーであることが分かりました。 しかしながら、スフィンゴシンとdihydro-スフィンゴシンは、重症度の見分けはできませんでした。
生化学的なバイオマーカーである lactate dehydrogenase(LDH)のレベルが、COVID-19患者の重症者で上昇しているという事が知られています。ここで発見されたスフィンゴシンのレベルの減少は重症度と相関していませんが、これらを合わせると、スフィンゴシンのレベルが高いとCOVID-19の症状を抑えることが出来、スフィンゴシンのレベルが減少すると炎症が助長される場合があると言えそうです。